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2010年1月31日 (日)

「白い巨塔 2」 山崎豊子

白い巨塔〈第2巻〉 (新潮文庫) 白い巨塔〈第2巻〉 (新潮文庫)

著者:山崎 豊子
販売元:新潮社
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最後まで楽しいんだろうな、というゆるぎない安心感。すごいな。
人間はいままで信じていたものが摩り替わる時、いいようのない怒りと、
動揺を覚える。自分は一体何を信じるべきなのかと。しかし、きっと
そのようなものはないに違いない。この白い巨塔の中にいる限り。

数々の裏工作の末、ついに開かれた教授選は予想以上に困難を極めた。
笑顔を作りながら、権力の駆け引きと、裏切りが繰り返される。
再選の末ぎりぎりの票差で教授の座を手にした財前五郎は、ようやく
安堵感を得た。着任早々に招かれたドイツでの研究会に出席することに
なった財前は、しかししだいに鷹揚な態度を取るようになっていく。
財前がもっとも嫌悪していた東の姿にまるでそっくりなのであった。
そんなとき里見が病理診断で胃癌と診断をした患者を、財前に託す
ことになった。相変わらず完璧な財前は、手術を無事成功させたが、
術後の経過が思わしくない。他の部位に癌が転移しているかもしれない
と里見は再び診察を依頼するが、財前は面倒ごとがら逃げようと
里見を突き放すのだが……。

わたしは一体今まで何を応援してきたのだろうか、と激しい虚無感を
味わった本だった。もちろん、この本はそれが狙いである。
鷹揚な教授・東に虐げられ、教授選において、直属の部下でありながら
推薦してもらえない財前五郎。教授選に向けての裏工作を見ている間、
心のどこかで、財前頑張れ、と思っていたような気がする。何としても
あの教授には負けなくない。そういう心が、文字を追うにつれ、
生まれていたような気がするのだった。しかし、教授の座についた
財前と言えば、東にも勝るほどの鷹揚な態度を取り始めるのである。
部下を虐げ、自分の力を誇張する。まさか、今度は部下を思いやる
ような教授になってくれるのではあるまいか、と夢想していただけに、
その落胆は激しいものだった。わたしも財前を見る眼がなかったのだ、
と脱力に似た感情を得た。いつしか爽快だったはずの財前の素晴らしい
手術も、哀れみと悲しみが混じるようになり、そんな手術を見て
神のように崇める部下たちを、呆然と眺めることしか出来なかった。
すべてはこの「白い巨塔」という、黒く汚れた世界にいる限り、
例えどんな人間がその椅子に就いたとしても、きっと同じような末路と
同じような人生が繰り返されるのだろうと思った。美しく清潔に
立て替えられた、新しい病棟。しかし、その中に蝕むのは、薄汚れた
人の悪意である。この本はとても素晴らしい本だと改めて思う。
この1冊の中に込められた一人の人間の生涯を、完璧な物語として
描いている。きっと作者の中には財前五郎という人間が実在しているに
違いない。まるで見た来たかのように。まるでそこにいるかのように、
彼らを感じることの出来る本である。才能って凄いな。

★★★★★*95

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