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2009年12月 4日 (金)

「長い家の殺人」 歌野晶午

長い家の殺人 (講談社文庫) 長い家の殺人 (講談社文庫)

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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これがデビュー作か……うむ、デビュー作って感じ。なんて言うか、
詰め込み感漂う感じ。折角いい題材でも、いれすぎるだけで、あっぷあっぷ
してしまう。人物描写も最近のものに比べ杜撰なので、名前を忘れがち。
しかし、そうかデビュー作か、と思って読むと感慨深いものがある。

大学卒業を間近に控えた五人組ロックバンド、メイプル・リーフは、
卒業を記念したラストライブへ向けて練習に励んでいた。みな就職活動など
に時間をとられ集まることもできなかったので、メンバーとカメラマンの
六人は、思い切ってペンションを借り、集中的に練習を行う事にした。
お互いの弱点を刺激し合い、より完成度の高いステージを目指す。
就寝時間には、お決まりの飲み会へと発展したが、ギタリスト戸越だけは、
眠気を訴えて自室に戻って行った。自室と言っても、相部屋である。
麻雀を誘おうとメンバーが部屋へ行ってみると、そこに戸越の姿はなかった。
変わり者と知られる戸越の事だ、一人散歩にでも出かけたに違いない。
みな注視することなく一晩があけた。朝食の時間になったが、
しかし戸越の姿はなかった。おまけに荷物もない。部屋の中や街中を
探し回り、疲れ果てた頃、ペンションに戻ってきた五人は、戸越の死体を
見つけた。空き巣の犯行なのか? それともこの五人の中に犯人が?

残念なのは、トリックが前半で分かる点。なので、後半ライブハウスでの
殺人事件になり、かなりのくどさを感じた。ついたてがある時点で、
これはもう丸分かりである。気づかないで読めたら、楽しいのかも
知れないが、わたしは分かってしまった……。巻末の島田さんの解説で、
歌野さんがトリックが見抜かれてしまい、泣いた、という文を読んで、
同じく申し訳ない気分になったのだった。きっと島田さんも、
前半でトリックが分かってしまったんだろう。だから、部屋番号を
読みにくい記号にしたりした工夫が生まれたのかもしれない。それに、
ライブハウスでの殺人事件と、最初に書かれた戸越の曲が、
あまりに離れている、という工夫で、その弱点を克服した、つもりなの
かもしれない。想像だけど。けれども、その工夫によって、その
動機というのが、とても微妙な路線になってくると思う。
その、あまりに離れすぎているから。肩透かし、というか。
愛憎劇が、マリファナですか?!な、ちょっと残念さ。そう思えば、
この頃から、歌野さんには「なーんちゃって」の精神が根付いていたのかも
しれない。そう、前に二作読んだんですけど、両方とも、実に、
「なーんちゃって」という言葉が相応しい本だったので。
あと、キャラクターが書き分けられていないので、主人公が徹なのか?
と気づくまでにだいぶ時間が掛かる。話は逸れたけど、これを読んでみて
よかったことは、歌野さんの初期は「本格」と呼ばれる推理小説だった、
ということが分かった事である。うーん東野さんもそうだが、いろいろ
ミステリは変遷を遂げるのね、と思えてくる。かっちかちのミステリも
好きだが、「世界の終わり~」も結構好きである。比較すると、
人間に心理描写がとても豊かになっているからだ。というわけで、
歌野さんの原点を知る事が出来る本。有栖川さんの「月光ゲーム」と、
どっこい。いや、よく「月光ゲーム」を引き合いにだすんだけど、
よく出す、ってことは、よく覚えているって事で。それだけ、衝撃的、
かつ他にない作品なのだよね。と言うわけで、さすがデビュー作。
されど、デビュー作、な一冊である。読んでみれば分かる。

★★★☆☆*83

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