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2009年12月22日 (火)

「何もかも憂鬱な夜に」 中村文則

何もかも憂鬱な夜に 何もかも憂鬱な夜に

著者:中村 文則
販売元:集英社
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昨日図書館に借りに行ったら、予約した覚えのない本が一冊。
この本である。むむむ? わたし予約したっけ? しかもこの作家さん
一冊も読んだことがない。まぁ、せっかくだし読んでおくか、
というわけで、薄かったのでさっくり読了。うーん、ちょっとダメかも。

孤児院で育った僕は、刑務官として働くようになった。
罪を犯した人間が収容される刑務所。そこの管理をしているわけだが、
僕はできるだけ問題ごとに巻き込まれないようにと足早に館内を
歩くのだった。刑務官の失態は世間に大きく取り上げられ、
問題視される。そんな無様な様子を見てか、独房からはいつも
僕を笑う声が響いてくるのだった。僕は山井の独房に立ち寄り、
いつまでも眠りにつかない山井を叱った。山井は、家に侵入し、
妻を暴行し殺害、その後に来た夫をも刺し殺した重犯罪者である。
しかし、山井は今二十歳――事件当時は十七歳であった。
僕は山井を見るたびに、昔自殺して亡くなった孤児院の友人を
思い出す。山井は事件について控訴をしないと言う。死ぬ気なのか?
死にたければ、死ねばいい、だけど本当のことを話し死んだらいい。

うーん微妙。法律というか、このような刑法の問題について、
法学部ではない一般の人間は本当に無知だと思う。この本を書いた、
中村さんも、きっと法学部ではないだろう。何だか、論点がずれてる。
まずそこに引っかかってしまい、楽しむことが出来なかった。
ちなみにこの本のような論戦が繰り広げられる法学部の科目は、
「刑事訴訟法」もしくは「少年法」といわれる分野である。
まだ確立されて間もないため、非常にあやふや、はっきりした
根拠のない偉い人たちの意見の言い合いが続いている科目である。
そのため授業のテストや提出物は、ほぼ論文である。まぁ法学部
なんてほぼ論文なのだが、「用語を覚える」だとか「メリットの研究」
とか、そのようなものは一切ないのである。わたしがちょうどこの
科目を受講している時、とても目立っていた事件がある。
光市母子殺害事件だ。「刑事訴訟法」の筆頭事件といっても過言でない。
この本もこの事件を取り扱っているのだと思われるのだが、
この事件でもっとも重要視された問題は、「少年」という枠組みを
どこまでとするか、というところだった。と言うのも、少年法が
適応されるのは、18歳未満の子どもだからだ。この事件の犯人は、
18歳と3日だったか、4日だったか、とりあえず18歳になりたての男
だった。弁護団は、3日くらいいいじゃないか、と言い始める。
外見の年齢的には確かに18歳だが、中身はもっと幼いのだ、と。
そうこうしているうちに、実は犯行当時、少年は精神こう弱状態だった、
と言い始め、あの「ドラえもん発言」に繋がってゆくのである。
少年の親は、少年が幼い時に自殺している。しかし、
「押入れを開けたのは、ドラえもんに助けてもらいたかったから」
とは飽きれてものも言えないほどだ。そして、対抗する被害者の方も、
やたらとマスコミに顔を売るようになる。「私たち可愛そうでしょ」
と国民に訴えかけ、最後には「どっちが可愛そうでしょうか」対決に
なり、国民の感情を揺さぶった方が勝ち、みたいな論戦になっている
のである。少年側は、罪を軽くしたいから。被害者側は、少年を死刑に
したいから。突き詰めれば、ただそれだけの核心だというのに。
この本は、「本当の事を言って死ね」となっているが、それが出来ない
世の中になっているのだから、奇麗事としか思えない。
少年の本心を聞く(それも重々大切なのだが)よりも、こうなって
しまった世の中の問題性を取り上げた方が今の世に合っていると思う。
初めて読んだ作家さんだったのだか、デビュー本なのかと思ったら、
芥川賞作家だった……。だってバリエーションのない形容詞と比喩、
何度も繰り返されるのにあまり効果のない描写。あぁ、ダメみたい。
中村さんの上辺だけじゃない本を読んでみたら変わるかも、と思う。

★★☆☆☆*65

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