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2009年11月30日 (月)

「ヴィヨンの妻」 太宰治

ヴィヨンの妻 (新潮文庫) ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

著者:太宰 治
販売元:新潮社
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あぁ死にたい死にたい。そう思いながら、つい太宰の本を読む。
そうしてやはりその本の中の死の魅力に惹かれてしまう。生活の一部に、
死にたいと言う気持ちが染み付いている、分かる人はどれ位いるのか。
そして、今の自分の人気振りを見たら、太宰は何を思うのだろう。

「おさん」
たましいの、抜けたひとのように、足音もなく玄関から出てゆきます。
娘のマサ子が、「おとうさまは?」と尋ねたので、私は「お寺へ。」
といい加減な事を答えました。夫は寺などへは行ってはおりません。
マサ子は「早く帰ってくるかしら」と凛とすました様子で健気に
大人しくしております。私は胸が締め付けられるようでした。
夫が勤めていた新聞社が罹災し、借金を背負ってからと言うもの、
元々無口でしたが優しかった夫は、暗い表情を隠さなくなりました。
どうやら他の場所に女が出来たようでもあり、けれど何も言わないの
です。じっと黙って哀しそうに笑っている。そうするくらいなら、
いっそ、私たちをも楽しませながら不倫を楽しんでくださればいいのに。

上に書いたけど、もし今太宰治が自分の評価振りを見たとしたら、
もう少し長生きしたのではないか、と思う。矛盾だらけの想像だけど。
でも、それと同時に、きっとやはり自殺して死んだだろう、とも思う。
太宰治は38歳で亡くなっている。38って、でも毎日死にたいと思って
いる人間にとっては、長い時間のようにも思う。この本には、
今映画をやっている『ヴィヨンの妻』が収められている。
けど、期待していたほどでもなかったような……。この明治の妻が、
どのような理想像だったかはよく分からないけれど、
今のそれとは少し違うように思え、「家庭を顧みない夫でも、
たまに優しい一面があり、寄り添っていられればいい」と言うような、
太宰の描く妻は、今の女性はきちんと理解することが出来るのだろうか
と、とても疑問に思った。もちろん、太宰治が問題ではない。
と言うのも、映画の宣伝で、「辛いことでも笑って過ごす。
これがヴィヨンの妻。ヴィヨンの妻はなぜこんなにも強いのか」
みたいな文句があり、わたしはそれに首を傾げたのだった。
ヴィヨンの妻を書いたのは、太宰治なのだから、それを望んでいるのは
太宰治である。奥さんも実際にそういう態度を取っていた人
なのかも知れないが、そこにはやはり足りないものがあるように思う。
女の嫉妬というものである。女は男には嫉妬している姿を見せない。
その包み隠された部分が書かれていないように感じるのだった。
もしも「あぁいう人だから仕方がない」と割り切るのだとしても、
その割り切るまでの過程が書かれていない。太宰治は、
あぁもうしょうがないわねと沢山女が世話を焼く、どうしようもない人
だったんだろう。でも嫉妬が微塵もないのはどうしてだろう。
それを「強い女」と言ってしまうあたりに、疑問を感じるんだよな、
とか思いつつ。この本はとてもいい。一番読みやすい短編集かも。

★★★★☆*88

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コメント

おはようございます。
TBさせていただきました。
自分が何を書いたか、忘れてしまいましたが(苦笑)、この映画の宣伝はやっぱりどうかと思いますね。

投稿: 時折 | 2009年12月 9日 (水) 07:53

>時折さん

こんにちわ~TBありがとうございます^^*
記事読ませていただきました。やはり課題は「太宰の書く妻」
としか形容できない女の存在なんだな、と納得しました。
その通り「太宰の書く妻」を、この本しか読んでいなかったら、
まったくもって理解できないはずなんですよね。

そして、この映画の宣伝は疑問ですよね。
まぁこれに限ったことではないのですが、
最近の映画のCMや予告は、非常に詰まらないし、検討違いが多い。
予告は人をひきつける為に、本編の三倍くらい面白くなくては
いけないと、金城さんあたりが言っていましたが、
まさにその通りだと、しみじみ思った本でもありました。
映画は金曜ロードショー待ちです(笑)

投稿: るい | 2009年12月11日 (金) 10:01

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