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2009年11月10日 (火)

「キネマの神様」 原田マハ

キネマの神様 キネマの神様

著者:原田 マハ
販売元:文藝春秋
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原田さん初めて読んだけど、読みやすい作家さんだった。長嶋有とか、
そんな感じの文章だった。さばさば書いているけど、どこか愛情のある
感じが、絶妙で心地がいい感じ。そう言えば「カフーを待ちわびて」
を観ようと思っていて観ていないんだけど、原作は原田さんだった。

十七年勤め上げた会社を、辞めた。大掛かりなシネマコンプレックス
建設プロジェクトの纏め役として働いていたが、いつしか業者との
癒着の噂が立ち、一気に冷たい目を向けられるようになったからだ。
無職になり実家に戻ったが、映画とギャンブルに依存し借金まみれの
父親に頼ることも出来ず、途方に暮れた。早く職を探さねばならない。
四十歳女性、未婚、前歴課長。そんな女をなかなか雇ってはくれない。
そんな時、ひょんなことから父がインタネットブログに書き込みした
ことがきっかけで、私はとある有名映画雑誌のライターにならないか、
と誘いを受けることになった。一抹の不安を抱きなら入社したが、
そこに待っていたのは、映画を本当に愛している人たちの仕事だった。
有名雑誌とはいえ、右肩下がり利益を挽回することは出来るのか。

映画が観たくなる小説。海外映画を好む人なら、楽しさ倍増だろう。
わたしも出てきたタイトルの半分くらいは知っていて、嬉しかった。
引き合いに出された映画が自分の好きな映画であると、そうそう、
そうだよね、わたしもそう思った! と賛同したい気分になった。
余談だけど、わたしのうちは良く映画を観る家族だった。映画という
ものがまだ何なのか分からないうちから、よく両親に連れて行かれた。
わたしや弟が反抗期になり、苛立ち気味に喋るわたしや、
朝から一言も口を利かない弟がいても、「映画を観る日」は
必ずやってくる。どんなに機嫌が悪くても、わたしも弟も、
「映画を観る日」を断ることはなかった。やっぱり好きだったのだろう。
わたしが初めて映画館で観た、アニメ以外の映画は「家なき子」である。
年齢から考えるとかなり渋い選択である。ちなみにドラマを全て
観ていたので、オープニング開始数分で号泣してしまった記憶がある。
次が「スター・ウォーズ」だ。その後は――と言う具合に、
つい自分が観てきた映画を思い出し、誰かに話したくなるような、
そんな本であった。この本の中にはとにかく映画への愛で溢れている。
DVDやインターネット配信などの影響で、不況に悩む映画業界。
次々と名画劇場が潰れてゆくのをどうにかして食い止めたい。
わたしたちはこんなに映画が好きなんだから、と熱い思いを感じた。
後半に出てくるゴウVSローズ・バットの対決は、本当に良かった。
映画に対する見方の差異が、上手く表現されていて、この文章を、
同じ人間(作者)が書いたと思うだけでも、唸るようだった。
言い合いの中で、しかし2人に共通していることが1つだけある。
それは映画を愛していると言うことだ。彼らは架空のライバルであり、
現実の友だった。最後の映画館でゴウの隣には、一緒に笑い、泣き、
感動するリチャードの姿が見えたように思った。泣いたなぁ。
ここまで褒めちぎって難だけど、1つの難点は、主人公の仕事ぶり
がよく分からない。折角文章がいいと言われて起用されたのに、
持て囃されるのは父ばかり。最後は老人対決になっていて、
(いや、面白かったけど)主人公それでいいのか?という気もする。
そういや最後に出てくる人生最高の映画はきっとあれですね。
わたしも観たいのです。2年位前に豊洲でリバイバルやってたんだけど、
観にいけなくて悔しい思いをしました。こうなったらDVDで観るか……。
いや、でも映画館で観たいのよ、とそういう話。
最近名画館に行きたい。前よく行ってたけど、また行こうかな。

★★★★☆*92

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コメント

るいさん、こんばんわ!
私もつい先日「キネマの神様」読んだ所なんです。
るいさんと同じく初原田マハさんでした。
(カフーを映画で見て良かったので原作も是非
読みたいなって思ってます。)
本当、映画舘に行きたくなる作品ですよね。
るいさんも自分が初めて見にいった映画やこれまで
見た作品を思い出してみたりされたのですねー。
私も数は少ないけど、何歳の頃に誰と見にいったっけ、
とか、ワクワクしていた記憶まで思い出して
読んでいてとってもあったかい気持ちになれました。
金城さんの作品(るいさんは金城さんの作品も沢山
読まれてますよねー。私も少しづつ読んでいきたい
って思ってるんです)の「映画篇」では章タイトルに
なっていた5~6作品?のうち知ってるものが
ほとんど無かったけど、「キネマの神様」の中で
登場する作品はマイナーすぎずメジャーすぎず、
いいなーって思いました!
私も大好きな作品が何本か出てきて嬉しかったです。

投稿: だいこん | 2009年11月26日 (木) 20:50

>だいこんさん

こんばんわ~遅くなってしまいすみません^^;

マハさん読み易い作家さんでしたよね。
映画「カフーを待ちわびて」も良かったそうで、
わたしも俄然観たくなりました。
観たいと思いつつ観ない映画がたくさんあります(涙)

そう、もう映画への愛情の塊、みたいな本でしたね。
映画は確かに時代遅れともされるのかもしれませんが
(DVDで家で観れるとか、衛星放送とか考えると)
でも大きな画面で観る物語は、
やはり他のテレビや何かが違うと感じますね。
だから、小さい時に何を観たとか、覚えているんだと思いますし。
当たり前だけど、そんなことをしみじみ考えた本でした。

金城さんはだいぶ偏ってますよね。
いや、もちろんとんでもない量の映画を観てると思うのですが、
本の中に出てくる映画には好みがだいぶ反映されているので、
マハさんのような、映画配給をする人間の平等な目、
みたいなものが働いていないように思います。
金城さんと言ったら『燃えよドラゴン』ですし
なんというか、アクション好きなイメージが強いですし。
本人もそうだと、どこかに書いてありました。
最後に勝たない物語は意味はないのですって。
「映画篇」、わたしもほとんど分かりませんでしたよ;
でも金城さんのゾンビーズシリーズは面白いです。
初心者に優しい感じです(笑)是非読んでみてくださいね。

「カフーを待ちわびて」も読んでみようと思います。

投稿: るい | 2009年12月 1日 (火) 14:14

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