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2009年11月16日 (月)

「催眠」 松岡圭祐

催眠―Hypnosis (小学館文庫) 催眠―Hypnosis (小学館文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:小学館
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若干くどくどしい文章ではあるけど、後を引く読み易い作家だった。
たしかだいぶ前に千里眼シリーズ読んだことあったはずなんだけど、
その時は好きになれなかった記憶がある。最近読みやすいと思える
作家の範囲が広がってきたようで、嬉しい限りである。

ある日ニセ催眠術師・実相寺則之の店に入江由香という一人の女が
やってきた。大人しそうな雰囲気とは裏腹に、突然甲高い声で叫びだし、
自分は宇宙人である、と言い始めた。おまけに予知能力があるらしい。
実相寺の繰り出すジャンケンに全て勝ち、コインを隠した手を、
何十回も言い当てた。これはこの女は商品になるかもしれない……。
自分の店をたたみ、由香の店を開店させた。由香の店は忽ち繁盛し、
原宿の一番人気の店となった。実相寺は顔を出さない約束で、
由香をテレビ出演させるようになる。そんな時テレビを見ていた、
カウンセリング心理センターに勤める嵯峨は、彼女が多重人格障害
ではないか、と疑問を持ち、由香を救おうと店を訪れた。
大人しい由香から現れる、宇宙人や、勝気な女性の人格。
彼女の心の中では一体何が起きているのか。

文章がくどいのは、すべてを説明しているからである。
催眠術は、マジシャンが行うようなショー的なものではなく、
実際は病理を和らげるための治療方法である、ということを、
約全体の七割ぐらい裂いて熱弁している。本当に何も知らない人
に1から10まで教えようとするかのように、丁寧に丁寧に書かれていた。
とてもくどい。しかし裏を返せばとても親切設定である。
まったく催眠やカウンセリングを知らなくても、
この本を読めばなるほどね、と思うことが出来る。
と、言った文章のため、途中何回か他の本に浮気したが、
(まぁ私は常に浮気本が多数ある人間ですが……)読みとめると、
続きを読みたくなって、またすぐ手にとってしまう不思議な魅力が
あった。扱っている内容が「カウンセリング」ということで、
人の心理について優しく書かれているのも良かったのかもしれない。
最後の方で、由香の年齢を遡り、記憶を探っているあたりでは、
とても涙を誘われた。宇宙人のような人格が現れて、見世物にされて
いた、という実感はいまいち持てないのだが、こんなどこでも
起こりうる愛情の欠落で、精神が歪んでしまうんだ、という
描き方がとてもよかったように思う。その由香の苦悩について、
まったく感じとることが出来なかった、善意の両親。それが一番
タチが悪く、しかし実際にそんなケースが多いのではないか、
と思え、考えさせられた本だった。この本の表紙とかすごい怖い感じで、
一瞬、ホラーとかサスペンスか? と勘違いしそうだが、
まったくそんなものは出てこない。人も死なないし、ミステリィでも
ない気がする。医療とエンタメを上手く融合させたよい本である。

★★★★☆*87

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