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2009年10月 2日 (金)

「漢方小説」 中島たい子

漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) 漢方小説 (集英社文庫 な 45-1)

著者:中島 たい子
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あぁ、中島さん、って感じの小説です。いい意味でも悪い意味でも。
嫌いではないんだけど、これは小説か?と聞かれたら、
ちょっと首を傾げたい。いや、もちろん小説ではあるんだけど、
何と言うか、症例A子さんの場合、みたいな、そんな気がするのだ。

以前付き合っていた友人が結婚すると聞き、私はショックを受けた。
三十一歳、独身、女性。それだけでも何か引き摺るものがある。
気にしていないと思っていたのに、体は素直なもので、
私は原因不明の病に悩まされることになった。冷たい水を突然
飲んだりすると、胃の辺りが痙攣を起こし、ロディオボーイよろしく、
体がガクガクと震えてしまうのだ。私は慌てて病院に駆け込んだ。
小さな病院から総合病院まで歩いたが、医師が決まって口にするのは
「最近ストレスを感じていませんか」というものだった。このままでは
精神科を勧められてしまう。疲れ果てた私は、昔お世話になっていた、
漢方の病院に通ってみることにした。

中島さんの本は、主人公に相談されているような不思議な感じがする。
別に語りかけられているわけではないのだが、ねぇ聞いて
こういうことがあったのよ、と話している場の中に
入れてもらえているような作風なのだ。これと似ているのは、
テレビなどでよくある、「症例A子さんの場合」である。
例えば何かの病気にかかった時、A子さんの場合はこうでした、
というアレだ。同じ病気でも、かかってしまうパターンはたくさんある。
あるいは、こんなに普通の生活をしていてもかかるんですよ、
という警告の役目をしていることもあったりする。
この小説もそんな感じなのであった。なので、これは小説なのか?
と聞かれると、うーん……と私は悩んでしまうが、
小説を極限まで読者に近づけた、という、そんな感じはする。
何と言うか、コラム向きなんでしょうね。と、結論。
私の中島さんの一番好きな部分は、恋愛感情である。
とても上手いと思う。中島さんの主人公は三十代で未婚、
とか負け犬な色が濃かったりするのだが、とても恋愛を楽しんで
いるようである。また、友だちが恋人に変わるのではないか、
という微妙で、曖昧な空気の描き方が、とても秀逸である。
コラムはそれほど好きではなく、なのでいつも手に取るのに悩む
のだが、また読んでみようかな、と手に取るのはそのせいかもしれない。

★★★☆☆*83

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