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2009年10月 6日 (火)

「解体諸因」 西澤保彦

解体諸因 (講談社文庫) 解体諸因 (講談社文庫)

著者:西澤 保彦
販売元:講談社
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この本はぞっとするくらい解体死体しか出てこない。ちょっと心配する
ほどである。けれども、明確な推理の導きと、その理由を知った時、
この本の意味が分かるだろう。西澤さんはそれが書きたくて、仕方ない
ようであるし。読み終わると、解体と言うグロテスクさに違う見方ができる。

「解体迅速」
最初の犠牲者は、松浦康江という三十八歳の女性だった。
死体は死体でも普通の殺され方ではない。裸に剥かれた上に、首、
胴体、そして手足のパーツに解体されていたのである。
直接の殺害方法は絞殺。鈍器で後頭部を強打されて昏倒したところで、
首を絞められたらしい。切断された首には犯行に使われたとおぼしき
ストッキングが絡みついたままになっていた。縛られた両腕は家の柱を
抱えるような格好になっており、異様極まりない光景だった。
さらに一週間後、二十三歳のOLがこれまた同じような状況で、
危機を逃れた。腕を縛られた状態で警察に保護されたのである。
そしてそこには一人の男が死んでいた。犯人の狙いは一体……。

連続短編集である。繋がっていないように見せかけて、
最後にしっかり繋がっているので、どうぞ最後までしっかり読むことを
お勧めする。正直、途中の「解体照応」で挫折しかけたのだが、
耐えて読むべき価値はある。しかし、それにしてもくどいのである。
何も七人も……と言う感じで、あとがきにも書いてあるのだが、
小説にしたとしたら相当な分量になる大変な話である。
それをどうしても入れたかったようで、台本型に変更されたようだ。
うーん読み慣れない人間にしては、ちょっとつらい。
それに地の文がないことをいい事に、会話がいつもより遊んでいる。
ようするに面白くするための余計な文が多いのである。余計、
なんて失礼な話だが、大変骨が折れたのは事実。
しかし、この本の一番の取りえは、「解体」、まさにそこ。
人を殺してしまった、それはわかるかもしれない。
ついカッとなってしまったのかもしれないし、単なる事故だったのかも
しれない。けれども、世の中には切断された死体がある。
わざわざ時間が掛かるし、考えただけで気持ちが悪い。
やりたくもないその作業を、彼、彼女たちはなぜやったのか、
それがこの本のポイントである。そうか、だから切断したのか、
と納得する推理の数々。もちろん非現実的ではあるが、
人の心理的には、とてもありえそうな話ばかりだ。そして、
最後に話されるどんでん返し。あんなに熱心に話していた推理が、
最後の一話であっさり間違いだと否定される。そこにあった、
より現実的で、ちっぽけな事実。まぁやや芝居がかった気もしなくもないが。
台本なんか出てきちゃってるしね。しかし、楽しさのが上である。
むしろ、演劇として、その全てを楽しみたいと思う。
殺人も、殺す動機も、体をバラバラにする合理的な理由も。

★★★★☆*86

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