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2009年10月 3日 (土)

「横道世之介」 吉田修一

横道世之介 横道世之介

著者:吉田 修一
販売元:毎日新聞社
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あぁ面白い、吉田さんこの本書いてるとき楽しかったんだろうな、
ってそんな感じのする本。吉田修一好きにはたまらない感じです。
だっておかしいんだもの、吉田さんがこんなの書くなんて、あははは、
と笑い声。ちなみに一番作風が近いと思うのは「日曜日たち」です。

世之介と出合ったのは大学の入学式であった。同じ経済学部で
あるというのもあり、次第に仲良くなる。世之介と同じクラス
だという阿久津唯との口論の末、3人はなぜかサンバサークルに
入ることになった。くだらない授業に、もう笑うネタでしかない、
サークル活動。そんな平凡だった大学生活をふと倉持は思い出してた。
今抱えているのは阿久津唯との間に出来た娘のことだった。
中学生の娘は、ガソリンスタンドで働く若い男と結婚をしたいという。
俺はどうしたらいいのだろうか? 悩む倉持の前に、
ふと楽しかった世之介との思い出が蘇る。「なぁ、大学の時、世之介
って奴がいてさ」、と、あのくだらない日々を誰かに話したいと思う。

語り口がナレーション形式になっていて、吉田さんにしては珍しい。
というか初めてだろう。青春もの、と予備知識があったので、
どんなものかと思っていたけど、ふんだんに吉田さんらしくて、
嬉しくなった。一番は海沿いの九州の田舎っ子の描き方がとてもいい。
いつものことだけど、素朴な少年の描き方が本当に心地よい。
あの、海沿いの田舎で育った少し気が弱いけど、ちゃっかり
やることはやっちゃうような、少年。内容は、想い出を探った時、
「あーいたね、そんなヤツ。どうしようもないヤツでさ」と、
つい誰かに話したくなってしまう、友だち・世之介の話。
普段生活している時は、まったく忘れているのだけど、
思い出したら、懐かしくてしょうがない。世の介との記憶は、
どうしようもないほどくだらない日常で、けれど微笑ましく温かい。
ゆるい思い出と、ぴりりとしまった現実の対比が抜群だった。
どこかの吉田さんのコメントで「記憶の中の善意を描いた」みたいな
ものがあって(記憶が定かではありません;)なるほどね、と思った。
そして笑ってしまったのが、ヒロインがお嬢様っていうこと。
「世之介わたくし~ですわ」と「翔子ちゃん勘弁してよ」な会話が、
かなりチグハグで珍妙なコントのようだった。
やるなら、ここまで遊んでしまおう、な心意気を感じ、よかった。
最後、世之介の行く末も、まるで世之介らしく、いいと思う。
願わくば、世之介がどうなったのか、みんなに伝えたいものだと。
あと、今までくどいように使われてきた、私の嫌いなアジア風(笑)は、
だんだん薄らいできて、今回でかなりいい感じの割合になったと思った。
それとそう、この本のサイン会があったので、行ってきた。
わぁお!生、吉田修一。とてもいい方でした。後日また書きます。

★★★★☆*87

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