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2009年10月31日 (土)

【映画】ジャーマン+雨

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いい意味でも悪い意味でも衝撃的である。わざと駄作を作っている感
があるが、駄作の中では良質なる工夫がされおり、観終わった後に、
ほんの少し、とっかかりが残る、そんな映画。何かを残したい、
というのは分かるのだが、まだ形成されていない粘土のようで残念。

よし子は、バカで、ゴリラ顔で、傲慢、奔放、そして天涯孤独。
高校には行かず、なぜか植木職人として働いてる。不細工でありながら、
アイドルになってCDデビューすることを目指しているよし子は、
近所の小学生のガキどもを集めて、縦笛教室を始めることにした。
人の「トラウマ」を聞きまわり、変てこな歌詞をつけ、
テキトーなメロディを合わせる。小学生とピーピー吹き遊び、
また同じ一日繰り返す。そんな時、よし子の元に、一通のハガキ
が届いた。父がいた老人ホームからの手紙である。そこには
父の危篤が記されていたのだが、よし子はそれを握りつぶし、下水に捨てた。

とにかくインパクトはでかい。なんじゃこの映画……と、
半ば呆気にとられて観ることになる。近代的でないボロボロの家に
住み、親に恵まれず、極限の貧乏であるよし子。才能のないよし子。
絶対叶わない夢を追いかけるよし子。ゴリラ顔のよし子。
よし子は人の不幸をすべて持っている。貧乏で、不美人、才能がなく、
夢も明らかに叶わないのだ。けれども、彼女の周りには人が溢れている。
勿論嫌な奴はいるが、彼女の周りにはいつも人がいるのである。
小学生がたむろし、何だかんだ言いながら世話を焼く美人な同級生おり、
ドイツ人の同僚がいる。よくわからないメンバーだが、みなよし子の
何かに惹かれ、そして集まってくるのだ。最初は衝撃を受けた
笛だったが、なかなかいい面白みを加えていたように思う。
父を殺したく思うよし子も、自ら命知らずな行動を起こすのも、
可笑しさの後ろにひた隠す本当の思いを、なーんちゃって、と
誤魔化しているだけだと、ふと思うことが出来た。
それについては、主人公役の野嵜さんがよかったんだろう。
階段でいきなり歌いだすシーンは、何だか鳥肌が立った。
歌は下手くそだ。だけど、何かあるって、訴えているようだった。
しかし、映画全体としてみれば、観終わってさて何が残ったか、
と言われると、特に「何が」とは残っていないのである。
残っているには残っているのだが、まだもやもやと形成されていない
未完成の感情だけが浮遊し、とても惜しい感じであった。
これがもし小さな穴に糸を通すよう、するりと通るものになったとしたら、
この監督は化けるんじゃないかと、そう思う。まだお若いね。期待。

★★★☆☆*80

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