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2009年10月25日 (日)

「魔術はささやく」 宮部みゆき

魔術はささやく (新潮文庫) 魔術はささやく (新潮文庫)

著者:宮部 みゆき
販売元:新潮社
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宮部さん、お久しぶりかも。この本の初版は平成五年だそうで、
もう十六年も前の本なのか……としみじみしてしまった。
そして今も尚ヒットメーカー。すごいね。本を読まない人だって、
宮部みゆき、という名前を知っているだろうし。今後も期待。

守の父親は、守るが幼い時に公金を横領し逃亡した。
世間に責め立てられ、その後母をも亡くし、守は叔母叔父夫婦の
元で世話になる事になった。叔父はタクシーの運転手をしている。
ベテランで優良ドライバーとして表彰されたことがある、
腕のいい運転手だった。ところが、ある日の帰宅途中の深夜、
叔父は若い娘をひき殺してしまった。娘は信号を無視し、
自殺でもするかのように突然飛び出してきたのだが、
目撃証言のない叔父の説明は立証されず、叔父の信号無視が原因の
業務上過失致死とされてしまった。飛び出してきた娘は何者かに
追われているような慌てぶりだった――叔父の証言から、
守は事故について調べ始めるのだが……。

感想一言目は、昭和の香り、である。何がどう、と表現しがたいのだが、
この本の中には昭和の香りが漂っている。例えばちょっとした人間の
考え方であるとか、説明の言い回しだとか、そういうものが。
それは宮部さんが社会派の、とても身近な事件をとり扱っている作家
だから起こりうるもので、だけど今の平成に読むと何だか恥ずかしい
感じがするのだった。時代遅れというか、そういう意味で。
催眠術や、映像の中に広告を挟む、等の事柄を簡単に「魔術」と
言ってしまうのは、人攫いを神隠しだと信じきっているような、
そう言った恥ずかしさがあるように思うのだ。しかし、この本が
書かれた当時は、画期的、かつ衝撃の仕組みだったのだろう、
そう思うと、なるほど仕方ないよな、と思う。こういった恥ずかしさ、
を拭い去るには、もっと時間が経てばいいと思う。平成ではなく、
その後、またその後の時代になったとしたら、それは立派な歴史
になるのではないか、と思う。今明治維新の小説を、面白く思うように
この昭和という時代もまた「面白く」思える日が来るんだろう。
少し残念だったのは、彼女たちがしたこと、があまり明確に
描かれていないため、なぜ殺されなくてはいけなかったのか、
という理由がとても弱い。もちろん彼女たちはいけないことを
していたのだから、制裁されるべきだ、とは思うが、
あまりに魔術の「仕掛け」にページが費やされているため、
物語り全体が陳腐感を感じなくもない。それと守の境遇についても
かなり悲惨な男の子であり、救いがない。父親の横領の時も、
今回の事件についても、他人に冒涜されるだけでうやむやに終わる。
現実がそうなんだ、と言われれはそれまでだけど、ちょっと
悲劇が集まりすぎているようにも思えた。折角社会派でリアルを
描こうとしているのに、作られた感が否めない。むしろそれが目的かも?
しれないけども。といろいろ書いたが、ここにも宮部みゆきあり。
愛して病まない作家である。宮部さん実は、遠い知り合いだったりして。
いつしかお会いしてお話してみたい。

★★★☆☆*85

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