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2009年10月 1日 (木)

「キノの旅 Ⅲ」 時雨沢恵一

キノの旅〈3〉the Beautiful World (電撃文庫) キノの旅〈3〉the Beautiful World (電撃文庫)

著者:時雨沢 恵一
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再読。果たしてキノは何巻まで読んだ事があるんだろうか……。
読んでいると、覚えている物語も、初めて読むように思う物語もあって、
あぁ記憶力ってこんなもんよねぇーとかしみじみ思ったりした。
たぶん7巻まで位だと思うんだけど……だって表紙の絵を見たことないから。

「同じ顔の国」
キノが審査官に、観光と休養で三日間入国させて欲しいと告げる。
すると審査官は条件を一つ出した。「入国前に、キノのさんの
血液を検査させていただきます。これは、今までない病気を国内に
入れないようにするためです」しぶしぶ承諾したキノは、
検査の結果を待って入国した。歓迎し、待ち構えていた人々に
案内され、キノはホテルに向かった。ボーイがエルメスの荷物を
わざわざ持って運んでくれた。大きな部屋に入り、キノは考え事をした。
「今日今まで会った人達は、審査官も、フロント係も、ボーイさんも、
みんな、オーナーの家族……、かな? あまりにそっくりだ」
そう、先ほど顔を見た全ての人が、同じ顔をしていたのである。

時雨沢さんの欠点は、あとがきが一番面白い事だと思う。
いや、本編も文句なしに面白いんだけど、あとがきを読むと、
時雨沢さんがどのような人なのか、説明書付、みたいな感じなのだ。
なので、あとがきから読んだらいいと思う。
大丈夫、ネタバレなど、いっさい書かれていないので。
本編の感想は、と言うとコンスタントに思いつく、この皮肉、
がとても凄いと、毎度思う。それにこの丁度いい長さの短編が、
ちょっとこのへんで止めておこうかな、と思える素晴らしい区切りでも
あって、ちょこちょこ確実に読んでしまう仕組みである。
「同じ顔の国」を書いたけど、一番良かった、というか好きで、
前読んだ時の事を覚えていたのは、「機械人形の話」だった。
キノとエルメスが滑稽に繰り広げてゆく旅だけれど、ふとした瞬間に、
耐え難い寂しさが詰め込まれている時がある。本来旅なんてそんなもの、
なんだろう。入国し3日間いて、楽しかった。そしてまた違う国へ行く。
手を振ってくれる国の人に送られて、出てゆき、あの人はまだ元気
だろうか、なんて考えたりするんだろう。しかし、世界は脆い。
はやり病や天災によって、人はあっけなく死ぬ。
目の前で見る人の死と、その国を離れている間いつの間にか
いなくなっている死とでは、重さが違うのだ。同じ、死なのに。
それを痛感できる物語である。だからじゃあねと言って分かれるとき、
これまでになく感謝をこめて、しかし感傷などもたず、
分かれたらいいんだと思う。それは、本の中でも、この世の中でも。

★★★☆☆*86

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