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2009年10月13日 (火)

「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ) 葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)

著者:歌野 晶午
販売元:文藝春秋
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うーん……。初歌野さんでした。お薦め頂いたので読んでみました。
が、うーん……。でした。楽しめるんですが、様々な理由で、
それが阻害されている感があります。ビックリを知り、
それを心から楽しめる本、ではありません。裏切られた感満載です。

俺は知人から悪徳商法について相談を持ちかけられていた。
自分の父親は保険金を掛けられ、殺されたようである。
義理堅い俺は、保険金殺人の証拠を掴むため、
敵のアジトに乗り込み潜入捜査することにした。
ヤクザにいたこともあるから度胸だけは据わっている。
そんなある日、電車のホームで自殺を図った女がいた。
俺の横を通り過ぎ、一直線に線路に飛び込んだ。
まったく面識のない女だったが、俺は咄嗟に彼女の後を追い、
助けていた。地味な女だったが、だんだん気になる女になってゆく。
捜査を並行し、彼女と付き合ってゆくのだが……。

この本は徹底的に読者を騙そうと仕込まれた本である。
勿論そう言った趣旨の本はたくさんある。(伊坂幸太郎しかり、
乙一しかり)読み終わった後「なんだそうだったのか!」という
驚きを与えることで、爽快に読み終えられる仕組みである。
けれども、この本は読後感が酷く悪い。1つ騙されていた、と思ったら、
「え、これもかよ」「こっちもかよ」「それもかよ」みたいな調子で、
本の内部は仕掛け、というよりも読者を「騙す」細工が満載である。
その上最後の部分で70歳でセックスする人間もいるもんだ、など、
様々な言い訳ちっくな記述があり、驚いて楽しむ、というよりも、
騙していた弁解を聞いているようなクライマックスである。
ので、全然楽しめない。途中までは楽しんでいたし、
すいすい読めていたので、後半部分で大変怒り心頭、いや、
むしろ飽きれ返ってものも言えないような感じだった。
お年寄りの記述にしちゃ、そういう感慨がないというか……、
歌野さん自体もお若いので、うそっぽい感じが否めない。
タイトルの「葉桜の~」という美しいタイトルも、イマイチ生きて
おらず、結局何が言いたかったのかよくわからない本だった。
ミステリィにしたかったのか、生臭いヤクザの決闘にしたかったのか、
悪徳商法を抹殺する正義の味方を書きたかったのか、人間の晩年の
頑張りや恋を書きたかったのか、……要するに詰め込みすぎである。
この本で一番良かったと思うのは、人間が親しくなってゆく感じ、
である。人は急に親しくなったりしない。勿論一瞬で意気投合、
というのもなくはないと思うが、大体の場合は少しの警戒があり、
譲歩があり、嘘がある。その辺が良かったように思う。
ので、そうだな、ヤクザか、悪徳商法か、どっちかだとしたら、
だいぶ楽しめたように思える。ので、少し残念。
歌野さん読みやすいので、他の本も読んでみようと思う。

★★★☆☆*82

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