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2009年9月12日 (土)

「中国行きのスロウ・ボート」 村上春樹

中国行きのスロウ・ボート (中公文庫) 中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)

著者:村上 春樹
販売元:中央公論社
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この本買ったの大学2年の時なんで(生協のレシートが挟まっていた)
だいぶ前なんだけど、なんだか何回も読んでいるのに、
感想を一度も書いたことがなかった。春樹さんの短編の中でも、
とても読みやすい短編集の1つ。だいぶ古い本なんだけどね。

「最後の午後の芝生」
僕には当時おないどしの彼女がいたが、彼女はちょっとした事情が
あって、ずっと遠くに住んでいた。彼女と実際に会えるのは、
1年に換算するとだいたい2週間くらいだったろう。しかし、
その年の夏、彼女は手紙で別れを告げてきた。他に男が出来たのだ。
僕はその時芝刈りのバイトをしていたのだが、そのバイトも
辞めてしまおうと思った。この仕事が嫌いになったわけではない。
何せ金が必要ないのだから、こうしてせっせと働いていている理由が
なかったのだ。これが最後だと決めて向かった先は、丘の中腹にあった。
いつも通り芝を刈り、帰ろうと言う時、依頼主の女性に声を掛けられる。

本のタイトルが、「中国行きの~」なんて書いてあるから、
みんなアジアものなのかと勘違いしそうだが(私がそうだった)
他の短編集は全くそんなことはない。あえてあげるなら、
「最後の午後の芝生」が一番良かったように思う。他の方も、
みんなそういう方が多いですが、やっぱり何度読んでもいいな。
いつもながらはっきりと結末が記されているわけでもなく、
だけど、読み終わったときの心地よさが抜群。
春樹さんは短編作家なイメージが強く(いや、私だけか)、
しかも独特の、細切れ章の心地よさが売りだと思うのだが、
(これも私だけか?)この話は特にそれが良かった。
細切れにすることによって生まれる奥行きに気づくと、
本当に物語が違って見える。なにもわざわざ読みづらく分けているわけ
ではなく、区切られることによって、例えば別の日の出来事であった、
とか(書かなくてもそれを感じとれると言う意味合いで)
繋がっているようで、違う事を考えているのだったり、
そういうものを感じることが出来る。「最後の午後の芝生」は、
というと、芝を刈る長いシーンが、その前のシーンと絶妙に
絡んでよい。ただ説明されているだけなのに不思議ね。
最後に尋ねる、なぞの質問もいい。どんな風に感じるか。
知らない女の子の、知らない何かを。そう、みんなそうなんだと。

★★★★☆*86

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