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2009年9月 9日 (水)

「OUT 下」 桐野夏生

OUT 下  講談社文庫 き 32-4 OUT 下 講談社文庫 き 32-4

著者:桐野 夏生
販売元:講談社
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そもそも上巻読んだのいつだよ、位に放置してました。前読んだ時の
感想とまた違うと思う。 この喪失感、いや、喪失感すらも
霞んでしまう擦り切れた感情を、描けるのはやっぱり桐野さんだけだ、
と思う。彼女たちがそれらを取り戻すことは出来るのか。

マサコと師匠は風呂場で死体をばらばらに分解し、
邦子に死体を捨てさせた。入念に血液を洗い流し、これで大丈夫だ、
と一息ついた。人を解剖した。手には肉を切り刻んだり、
骨を切断した時の感触がまだ残っている。けれども罪悪感は
全くと言っていいほどなかった。容疑者として他の男が逮捕された。
弥生の元に保険金が入り、それで上手く終わると思っていたが、
釈放された容疑者・佐竹は彼女たちの犯行を探り始めた。
ばらしてほしくなければ、仕事の手伝いをしろと持ちかけられた。
佐竹が持ち込んだ仕事……それはまたもや死体を解剖する仕事だった。

麻痺した心は、回復しない。いろいろな感情を失った登場人物に、
残っていたのはどんな感情だったのだろうか?坦々と、感情を
移入することなく読み終えてしまうと、それを得ることが出来ない。
お金のためなら、人を解剖することを厭わない女たち。
けれども本当に金が必要なのか、と考えると、それは違うのだ、
と簡単に知ることが出来る。もし有り余るほどの金があったら、
女たちはこんなことをしなかったのだろうか。もちろん、
それも十分な要素だろうが、けれど足りない何かを金として換算して
いるに過ぎない。金があったら夫との関係を修復できるわけでもなく、
母親の介護がなくなるわけでもなく、家庭内暴力がなくなるわけでもない。
彼女たちは逃げ出した日の当たる場所に、もう帰ることはできない。
きっとそれに気づいて、けれど気づかないふりをしているから、
それがどんなにおぞましい事だと分かっていても、
手を染めてしまうんだろう。感情は感嘆に回復などしないのだ。
そんな女の曲がらない芯を、桐野さんだから描けるのだろう。
後半、なぜか物語りは逸れ、雅子と佐竹の「運命」についての
話になる。確かにそういうものもあるだろうが、今まで関わってきた
弥生や師匠や邦子はそっちのけになり、2人の世界に入ってしまうのが、
とても残念である。とてもヒットしましたからね、是非呼んでみては。
この物語をすんなり受け入れられたとしたら、自分にも、
そんな心が潜んでいるのではないか、と疑ってみたらいい。

★★★☆☆*85

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