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2009年8月20日 (木)

「きっと君は泣く」 山本文緒

きっと君は泣く (角川文庫) きっと君は泣く (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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期待していたんだけど、肩透かし。非現実的な設定のせいか。
でもまぁ、山本さんの長編は、非現実的なものが多いんだけど。
なんと言うか、創造されちゃってる部分が多いんですよね。
そう思えてしまうのは、きっと人物に生活感がないからかな。

私の「椿」という名前は、祖母がつけた。
美しく、けれど変わり者として親戚から犬猿されていた祖母。
そんな彼女が私は大好きだった。祖母は私のことを見ては、
「昔の自分にそっくりだ」と言った。もしも年老いたとしても、
祖母のようになれるのなら、ちっとも怖くはないと思えたほどだ。
しかし、とある事故から祖母は壊れていった。
入院のせいで体力は衰え、だんだんとボケが進み始める。
もう私のことを見ても、自分の孫だとは分からなくなったようだ。
祖母を見ながら、私は早く死んでしまえばいいのに、と思う。
そんな私に、あなたが代わりに死ねばいいと人は言う。

山本さんの本は、感情は本物でも、ストーリーは偽物だ。
それが小説じゃないか、と言われてしまえば返す言葉がないが、
長編になると、その足りない部分が浮き彫りになる。
一つ一つ描かれる感情や葛藤は、「そう、そうなの」と、
頷いてしまうくらい的確である。だから短編集はかなりいい。
でも、長編になると、その感情にいたるまでの、
必要だと思われる心理変化が、あまり書かれていないのだ。
この本にいたっては、行き当たりばったりの人生の女、
を描いているのだが、感情に纏まりがなく、その心理変化が皆無。
最後には深く考える女になるのだろうか?と期待していたが、
改善されるでもなく、バッドエンドに終わる。
確かに、店を飛び出しても追いかけてこないあの男は、
選ぶべきではない判断になるのかもしれないが、
それにしても、「好きじゃないわ」と言った男について、
「待ってるって言っちゃったから」と、一人ごちるまでの、
心理変化を、ぜひ文章で味わいたいものだった。
感情をあまり書かない東野さんの方が、余程描いているように
さえ思えてしまった。うーん、私はちょっとパスな本。
また違うときに読んだらいいのかもしれない。

★★☆☆☆*70

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