« 「みんないってしまう」 山本文緒 | トップページ | 「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ」 上遠野浩平 »

2009年8月14日 (金)

「禁断のパンダ」 拓未司

禁断のパンダ 禁断のパンダ

著者:拓未 司
販売元:宝島社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


うっわ…気持ち悪っ……。いや、うん、読めば分かります。
しかし想像力が豊富な方や、グロ系がダメな方は読まない方がよしです。
それにしてもこれはミステリィなのか?いや、違うと思う。
というのが私の意見。しかしこれ「このミス」大賞なんですよね。

キュイジーヌ・ド・デュウというフランス料理店は、
評判の格付け雑誌で三ツ星を飾る有名店である。
「今まで食べてきたものがゴミのように思える」と言われるほどだ。
自分の腕に自信を失いそうだった幸太だが、仕入れの途中、
昔の料理人仲間・淳一に偶然遭遇し、気合を取り戻した。
淳一は今キュイジーヌ・ド・デュウの料理人なのだという。
淳一を自分の店に招待し、料理を振舞っていたところ、
話に割り込んできた警察・青山から、キュイジーヌ・ド・デュウで
殺人が起き、また淳一は重要参考人なのだと知らされる。

あらすじをどう書こうか迷うほど、複雑な構成をしている本である。
そしてこれはミステリィではないと思う。この本の賞賛すべきは、
やはり料理の描写。元料理評論家であるという作者だけあって、
料理はまるで目の前にあるかのように、雰囲気を味わうことが出来る。
美味しく感じるだろう表現も的確で、凄いなと思った。
それと、こてこての関西弁がとてもいい。会話は関西弁小説の中では
かなりよく、関東人である私でも面白く読むことが出来た。
タイトルである「禁断のパンダ」も読み終わると、まさか自分も
そうなるのか?!と鳥肌が立つほど、よい引っ掛け具合だった。
しかし、ミステリィではない。その理由として、この話では
読書に「誰が犯人だと思う?」という暗黙の問いかけが、ない。から。
話は登場する2人の警察官がさくさくと進めてゆくのだが、
前の方のページで、読者に明示されているヒントが一向に使われない。
例えば、淳一が木下と接触していることや、結婚式の協会で、
幸太が神父と木下がしゃべっているのをみていることをだ。
明らかに怪しげだという風に書かれているのに、ここからは何も
発展せず、2人の警察官が独自に捜査を開始する。そして、
結局このヒントが使われるのは、最後の数ページである。
どうなの、これ、ミステリィじゃないでしょ、って感じである。
誰が主人公なのかよくわからないから、むしろ幸太が探偵のように
動き回ったとしたら良かったのかも知れない、とか思ったり。
あと、そう、これは好みなのかも知れないが、文章に味がない。
とても文章は上手いし、的確だ。でも、何だか整いすぎている、
と私は感じてしまった。何かこう、教科書や資料集の説明文を
読んでいるように思えてきて、せっかくいいキャラクターに、
「味」がなかったように思う。何だろう、比喩に独創性がないからかな。
それにしても気持ち悪かった。料理食べた後に読まない方がいいです。
いや、前半は料理を食べたくなるとてもいい感じなんですが。

★★★☆☆*83

|

« 「みんないってしまう」 山本文緒 | トップページ | 「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ」 上遠野浩平 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/30956020

この記事へのトラックバック一覧です: 「禁断のパンダ」 拓未司:

» [読書]禁断のパンダ [鵜の目鷹の目]
第6回「このミステリーが凄い!」大賞受賞作という肩書にふさわしい面白さだった。 序盤は料理の描写に引き込まれる。「口にした瞬間今まで食べてきた料理がゴミのように思えてしまう」とまで評される料理の描写が文章でできるのか、と驚いてしまった。 ミステリ自体はわり... [続きを読む]

受信: 2009年9月 9日 (水) 21:16

« 「みんないってしまう」 山本文緒 | トップページ | 「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ」 上遠野浩平 »