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2009年8月 4日 (火)

「絶対泣かない」 山本文緒

絶対泣かない (角川文庫) 絶対泣かない (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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こちらも久しぶりに山本さん。凄く良かった、さすが山本さん。
これも短編集だけど、山本さんは長編よりも短編の方が上手い。
何と言うか、味があるのだ。なぜこんなに短い文章で、
読者を引き込み、最後に何らかの感情を与えることが出来るのかと。

「今年はじめての半袖」
私は死のうと思った。理由は失恋したから。
同じ会社内で付き合っていた彼は、私を振り、
私よりも甘え上手な社内の女と付き合い始めたのだった。
何ともステレオタイプな話だが、私はどうしても立ち直れるとは
思えなかった。あんなに楽しみにしていたアフター5も、
今では辛い時間でしかなかった。私は会社を辞め、百貨店に就職した。
時間を忘れるため、遮二無二働いた。残業もした。
いつも彼の事を考えていた。それから2年が経ち、
場に馴染み始めた頃、あの時の彼が百貨店に現れた。
もう一度付き合わないかと言うのだが、その時私は……。

とてもいい短編集である。なぜこんなにも短い話で涙を誘えるのか。
さり気なく書く山本さんの文章の中に込められた凄さを、
この短編集では味わうことが出来る。特に好きだった、
この『今年はじめての半袖』のラストでは、
「生きていて良かった」と物語が締めくくられている。
死のうにも、自分の葬式を両親に出してもらうわけにもいかず、
人間はどんなに悩んでいたとしても、生きなければならない。
地を這うように落ち込んでも、それは同じことで、
けれど落ち込んだことがあったからこそ、
あのとき死ななくて良かったと、生きていて良かったと、
そう思えるんだろう、と。私はそう思ったことはあるだろうか。
大げさではなく、ささやかに響くのその思いを。
そんな事を考えながら読むことが出来た。
あと、いつも彼の事を考えていたのに、いつしか愛ではなく、
違う何かに変わっていたのだという事実も確認することが出来る。
その他『ものすごく見栄っぱり』や『真面目であればあるほど』
もとても好きだった。一度に読んでしまうのがもったいないほどだった。
毎晩1話読んで寝る、とかいいかもね。私は気になって次が読みたくて、
そんなことは無理なんだけど(笑)この本ではちょっと明るい
山本さんが読めます。暗い卑屈な山本さんも久しぶりに読みたいなぁ。

★★★★☆*93

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