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2009年8月

2009年8月30日 (日)

「そろそろくる」 中島たい子

そろそろくる そろそろくる

著者:中島 たい子
販売元:集英社
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中島さんって嫌いじゃないんだけど、読みづらいんだよなー…とか。
まだ山崎さんの方が読みやすい。なんていうか、接続詞とか、
単語の位置がさ、私がいつも使っている文章と微妙に違うんだ。
前だったり、後ろだったり。だから気を使うんだよね。

私は剥きかけのゆで卵を流し台に叩きつけた。あぁイライラする!
仕事場に戻り先ほどまで描いていたイラストを眺めてみたら、
どうにも気に入らず書き直すことにした。自分はこの仕事に
向いてないんじゃないだろうか。その証拠にこんな変なイラスト
しか書くことができない。そんな事を友人に話したら、
それはPMSなんじゃないの、と言われた。PMS?
女性が生理前にホルモンを調節するためおこるという症状。
その中には苛立ちや、不安感、暴食、睡魔など、色々あった。
まさにそれは私ではないか! そうと分かれば、
周りの理解が必要だろうと、私は話して回ることにした。

ちょっと無理やり感漂う感じ。うーん、まぁ仕方がないか。
普通の小説で、「私、PMSだからイライラするのよ」なんて
会話は絶対に出てこない。むしろ、普段の生活の中でさえも、
相当親しい人との間でしかそんな話しないだろう。
だけど、その症状で困っている人はなかなか多いはずで、
この本を読んだ女性の8割くらいは、そうそう、
と頷くんじゃないだろうか。それをね、堅苦しい参考書ではなく、
小説で楽しく伝えちゃいましょう、って言うのがこの本。
だから、伝えたいのは、PMS、ただそれだけ。
最後の方、上手くいきそうな恋模様で、男の人も、
イライラすることはあるからお互い様だ~みたいな感じで終わっているが、
なんだかいいオチがないので、上手く丸められた感が漂う。
しかし、まぁどんなに重いPMSであっても、
みんな生きていかねばならないわけで、子どもも
必要とあらば生まないといけないわけで、そんなことを考えていたら、
こうした無難なラストが丁度いいのかもしれないと思った。
そうかぁ、生活改善すれば、よくなるもんなんだ、とか。
私も頑張って改善しようかな。そうだね、まずは東京マラソン。笑

★★★☆☆*78

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2009年8月29日 (土)

「告白」 湊かなえ

告白 告白

著者:湊 かなえ
販売元:双葉社
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待ってました、待ってました~と張り切って読んだら、
かなり早々読み終わってしまった。読みやすかったかな。
湊さん自体初めてでした。しかしまぁ、内容はちょっといただけないな
とか思いました。感想で長く述べます。

私は教師という職を辞める事にしました。転勤や転校ではありません、
辞職し、教師を辞めるのです。やめるのはあの事件と関係があるのか、
ですか? そうですね、まったくないといは言えません。
あの事件で、私は一人娘を失いました。何度か学校につれてきたこと
がありましたので、愛美を知っている人も多いでしょう。
仲良く遊んでくれたみなさん、本当にありがとう。
でも愛美はもういません。そして愛美は事故で死んだのではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです。

ネタバレします。最初の章で、牛乳を飲むシーンが出てくる、
かなり、末恐ろしさが漂う描写になっている。「学校」という中の、
ここだけは安全、という絶対領域を平気な顔で犯しているのだから。
牛乳の中にはエイズ感染者の血液が入っているという。
飲んだら感染し、5~10年後に発病するだろうと。
その恐怖から殺人をした安易な気持ちを悔い改めろというのだ。
例えばだけど、この「私」が先生ではなく生徒だったら。
許せると思う。だけどこの本では「先生」である。だから許せない。
絶対領域を、一番気をつけなくてはいけない教師が、
ぬけぬけと破っているのだから。生徒は教師に逆らうことは出来ない。
最高に大人気ない行動だろう。それでいて、この「私」は最後まで
勝ち誇ったような感じでいる。後味が悪いのはそのせいだ。
猟奇的とはいえ、子どもが行った殺人事件に、
「大人」というレッテルを振りかざして、包み込むようにして、
まだ未発達の子どもたちを蝕む、そんな小説である。
賞賛すべきは、子どもたちの心理描写。とてもリアルだと思う。
危険な部品を作って褒められたい少年も、
見栄っ張りだけど何も出来ない少年も、ウェルテルが、
子どもの心をちっとも理解してない、はた迷惑な教師であることも。
願わくば、「私」がそんな力を使わずに、生徒を懲らしめる
よい方法があったら、人物が生きただろうに、と。残念。

★★★☆☆*80

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8/29一色徳保@下北沢GARDEN『slow night』

8/29一色徳保@下北沢GARDEN『slow night』

 悲しみの中からはじめよう
 雨音
 タイムマシーン
 a stupid soug
 夢
 光~hikari~

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2009年8月28日 (金)

■雑談:観たい映画

こんにちわ、ご無沙汰しております

コメント返せておらずすみません…
しっかり読ませていただいてます、ありがとうございます
過去の方から順に返してゆきますので、
もう少しお待ち頂ければと思います

***

最近観たい映画がないんですが、
とりあえずこれを観てみたいです
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』
http://black-genkai.asmik-ace.co.jp/

タイトルからしてカオスですが、きっと面白い
なぜなら『キサラギ』の監督だから

ちょっと期待です


本は『変身』東野圭吾著読み終わり、
『告白』湊かなえ著です

『告白』は随分待ったので楽しみ楽しみ
今日図書館にとりに行きます

ではまた

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2009年8月27日 (木)

「変身」 東野圭吾

変身 (講談社文庫) 変身 (講談社文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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ミステリィなのか、なんなのか、ちょっと境界線不明の本。
2重人格本だったらなかなかミステリィ感は出てかもしれないが、
この状態だとその表現はムリだろう。しかしながら、東野さんの、
人間らしさを頑張って書こうとしているのが伝わる本だった。

目が覚めるとそこは病院だった。全ての病室から隔離されており、
僕は前代未聞の大きな手術を受けたのだ、と知らされた。
そう言えば僅かに残った記憶には、自分の頭が拳銃で撃ちぬかれる
シーンがはっきりと残っている。本当に奇跡的な成功例なのだ、
と担当医・堂元はいった。受けた手術というのは、脳を移植するという、
世界初の手術だった。世間は皆僕に注目している。早く回復をして、
元の生活に戻る必要があった。しかし、僕は体に異変を感じ始めた。
見た目では分からないのだが、内側から湧き上がるような不吉な思いがした。
それに、以前は好きでも何でもなかった缶コーヒーが今無性に飲みたいのだ。

頭の中が段々他人の意思に支配されてゆく様子、がなかなか上手く
描かれている。被害者である主人公は、加害者である犯人の脳を
移植され、段々凶暴な人間へと変わってゆく。それはまるで
「変身」するがごとくで、優しかった僕が消えてゆく過程でもあった。
最後の方までドナーが隠されているのだが、読んでいれば嫌でも分かる。
なので、ミステリィ要素というよりは、その変わっていってしまう
様子を楽しむべき本だと思う。そう言った精神が蝕まれていって
しまうというものを文章にするのはやはり大変だと思う。
いままで一番良かったのは荻原さんの『明日の記憶』だけれど、これも
そんなことに重いきを置いた小説であった。むしろミステリィ要素
を完全に排除してしまったら、もう少し良かったのかもしれないな、とか。
しかし弱々しいイメージだった僕が、猟奇的な俺、になる描き方は、
さすが東野さんって感じだ。まぁあまり好きではなかったのだが…。
同じ脳手術ものの『宿命』よりはこちらの方が断然よし。

★★★☆☆*87

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2009年8月25日 (火)

8/25つばき@豊橋ell.KNOT『ノートリー vol.1』

8/25つばき@豊橋ell.KNOT『ノートリー vol.1』

■セットリスト

 青
 めまい
 街風
 光~hikari~
 夕暮れ
 バタフライ
 覚めた生活

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2009年8月24日 (月)

8/24つばき@名古屋ell.FITS ALL『Wild Sheep Chase』

8/24つばき@名古屋ell.FITS ALL『Wild Sheep Chase』

■セットリスト

 スタイル
 ブラウンシュガーヘア
 光~hikari~
 夕暮れ
 片道キップ
 瞬き

END

 今日も明日も

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2009年8月20日 (木)

8/20つばき@周南LIVE rise『夏の真撃-其の弐』

8/20つばき@周南LIVE rise『夏の真撃-其の弐』

■セットリスト

 ブラウンシュガーヘア
 昨日の風
 サヨナラ
 光~hikari~
 白い街の灯
 スタイル
 覚めた生活
 今日も明日も

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「きっと君は泣く」 山本文緒

きっと君は泣く (角川文庫) きっと君は泣く (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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期待していたんだけど、肩透かし。非現実的な設定のせいか。
でもまぁ、山本さんの長編は、非現実的なものが多いんだけど。
なんと言うか、創造されちゃってる部分が多いんですよね。
そう思えてしまうのは、きっと人物に生活感がないからかな。

私の「椿」という名前は、祖母がつけた。
美しく、けれど変わり者として親戚から犬猿されていた祖母。
そんな彼女が私は大好きだった。祖母は私のことを見ては、
「昔の自分にそっくりだ」と言った。もしも年老いたとしても、
祖母のようになれるのなら、ちっとも怖くはないと思えたほどだ。
しかし、とある事故から祖母は壊れていった。
入院のせいで体力は衰え、だんだんとボケが進み始める。
もう私のことを見ても、自分の孫だとは分からなくなったようだ。
祖母を見ながら、私は早く死んでしまえばいいのに、と思う。
そんな私に、あなたが代わりに死ねばいいと人は言う。

山本さんの本は、感情は本物でも、ストーリーは偽物だ。
それが小説じゃないか、と言われてしまえば返す言葉がないが、
長編になると、その足りない部分が浮き彫りになる。
一つ一つ描かれる感情や葛藤は、「そう、そうなの」と、
頷いてしまうくらい的確である。だから短編集はかなりいい。
でも、長編になると、その感情にいたるまでの、
必要だと思われる心理変化が、あまり書かれていないのだ。
この本にいたっては、行き当たりばったりの人生の女、
を描いているのだが、感情に纏まりがなく、その心理変化が皆無。
最後には深く考える女になるのだろうか?と期待していたが、
改善されるでもなく、バッドエンドに終わる。
確かに、店を飛び出しても追いかけてこないあの男は、
選ぶべきではない判断になるのかもしれないが、
それにしても、「好きじゃないわ」と言った男について、
「待ってるって言っちゃったから」と、一人ごちるまでの、
心理変化を、ぜひ文章で味わいたいものだった。
感情をあまり書かない東野さんの方が、余程描いているように
さえ思えてしまった。うーん、私はちょっとパスな本。
また違うときに読んだらいいのかもしれない。

★★☆☆☆*70

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2009年8月19日 (水)

「キノの旅 Ⅰ」 時雨沢恵一

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461)) キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

著者:時雨沢 恵一,黒星 紅白
販売元:メディアワークス
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キノの旅、封印してあったけど、封印を解いてみた。笑
昔よく読んだんですよ。楽しくてねぇ中毒性が高いもんだから。
あと黒星さんの絵も大好きで。昔よくサモンナイトで遊びましたよ。
中学生だったな、恐ろしいほどゲームはまってました。オタクだな。

「多数決の国」
森の中に、一本の道があった。
そこを一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)
が走っていた。運転手はシャツの上に黒いベストを着て、
襟を大きく開けている。黒髪の上に鍔つきの帽子をかぶり、
ゴーグルをはめていた。その下の表情は若い。右腿の位置で、
ハンド・パースエイダー(注・パースエイダーが銃器。
この場合は拳銃)がホルスターに収まっている。
キノ、と呼ばれたその運転手は、城壁で囲まれた国に到着すると、
入国手続きをしようと人影を探した。しかし見つからず、
仕方なく無断で入国することにした。3日間と決めている
滞在期限が迫り、国を出ようと言うとき、一人の男を見つけた。
この国のたった一人の住人だった。彼はこの国の経緯を語り始め……。

サモンナイトの話をしたら、ゲームをしたくなってしまった。笑
しかし、今はゲームをやる時間などない。と理由をつけ、
やらないことにする。この本の面白さは、やはりキャラクター。
旅人・キノと、モトラド・エルメスのやり取りが面白い。
何せモトラドが当然のごとくしゃべるのだが、みんな黙認。
そんなパラレル性がありながらも、語られている物語は、
最高にグロテスクで、尚且つ現実的である。とりわけ、
この「多数決の国」なんかは、まさに今の世界を語っているようで、
その皮肉さと滑稽さに、エルメスと一緒に笑うのが心地いい。
王様の絶対王政から逃れ、これからは市民平等、多数決で決めよう
と決めた国民だったが、何かの政策につけ、必ず生まれる
反対意見を消滅させるため、少数派はどんどん殺されてゆく。
国民が半分になり、さらに半分になり、最後の3人になり、
最後は男一人になった。男はこの国の多数決が、人間が
生きてゆく上で最大の要素だと信じて疑わない。けれど、
よそから来たキノに、「それは間違っている」と一言
言われるだけで、一瞬にしてその世界が絶望に変わることを
知るのだ。滑稽、そして、それが現在の世である。
人が残酷にどんどん死に、けれど、それが現実である。
残酷だから、美しく、その殺ぎ落とされた文章は、
やっぱりいいなと思う。そして中毒性があるのだ。
気づけば結構な巻数出てるみたい。時代は流れるね。

★★★★★*95

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8/19つばき@松山サロンキティ『SALON KITTY 15th ANNIVERSARY』

8/19つばき@松山サロンキティ『SALON KITTY 15th ANNIVERSARY』

■セットリスト

 スタイル
 青
 悲しみの中からはじめよう
 めまい
 八月
 覚めた生活
 光~hikari~

END

 夕暮れ

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2009年8月17日 (月)

「仔羊たちの聖夜」 西澤保彦

仔羊たちの聖夜 (カドカワ・エンタテインメント) 仔羊たちの聖夜 (カドカワ・エンタテインメント)

著者:西澤 保彦
販売元:角川書店
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何とも押し付けがましい小説。まぁ詳しくは感想で書きますが。
西澤さん楽しいんだけど、この本は「ん?」と疑問符が浮かんだ。
まぁ、好みなど、結局は好き嫌いなんだろう、と思いながらも、
気の合う合わないは、小説を1冊読めば分かると思う。

一年前のクリスマス――今ではお馴染みのメンバーと出会う
きっかけとなったその日、五人はとある事件に遭遇していた。
タック、タカチ、ボアン先輩、ウサコ、ヤマト……
居酒屋を出てぞろぞろコンビニエンスストアに寄り、
帰ろうという時、一人の女性が十二階建てのマンションから、
飛び降りたのだった。彼女は自殺したのだろうか? はたまた、
何か事件に巻き込まれたのだろうか? 真相は分からなかったが、
十二階の踊り場に、彼女のコートと靴が置かれていたことから、
事件は自殺として処理されていた。しかしタカチは、
彼女の傍に残されていたクリスマスプレゼントの包みを疑問に思い、
プレゼントの貰い主を探し始める。

何とも押し付けがましい小説だった。何せ内容が、押し付けがましい
父親や祖母といった人間のせいで、一人の人間が自殺する、
という話なのだから。けれども、それだけなら、「ありえそう」
と納得するところなのだが、西澤さん残念ながら話がくどい。
なぜ、押し付けがましいのか、から始まり、押し付けがましい度合い、
押し付けがましい親の醜さ、押し付けがましい親の成れの果て、
などなど、事件そっちのけで押し付けがましさを物語の7割説明。
最近はそんな親が増えていると嘆いている。読者はそのくどさに
嘆きたいところだ。西澤さんのくどさは好きな方なんだけど、
今回に限っては、「押し付けがましさ」という、なんというか、
個人的価値観みたいなものを強烈に醸し出した内容だったので、
それが無理やり、「だからそういう人って嫌よね」と、
同意を求められているような感じになっており、閉口した。
「押し付けがましい」という度合いは、やはり個人的な価値観であり、
西澤さん自身と、読者との間でも、価値観の差は生まれるものである。
しかし、西澤さんが好きな理由が思い当たった。
社会派小説だから。そう、思い返せば、宮部さんも横山さんも、
好きな作家は社会派ではないか、と思い当たり。
で、そう結局は好き嫌い、という話ですが、やっぱり好きなのです。

★★★☆☆*78

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2009年8月16日 (日)

【映画】HACHI 約束の犬

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一つ後悔したことは、なぜ字幕を選ばなかったのか、という点。
いや、字幕があったら字幕を観たはずなんですが、夏休みの
親子向けって感じで、行く映画館は全部吹き替えつきだったのです。
それが最大の後悔。字幕だったら、良さ2割増だったと思う。

音楽科講師であるパーカー・ウィルソンは、駅で犬を拾った。
冬の寒い日に、小さな子犬がホームを歩いていたのだ。
初めは駅に預けるつもりだったウィルソンだが、
1日迎えが来なければ、保健所に連れて行かれてしまう事を知り、
家につれて帰ることにした。妻の反対にあいながらも、
成長した犬「八(ハチ)」は、ウィルソンを送りに駅にやってくる
ようになった。そして夕方になると、また迎えに来る。
そんな献身的なハチは、いつしか駅を利用する人びとの中で
人気者となっていた。しかし、ある日ウィルソンは死んだ。
学校に行ったきり、帰らぬ人となり、ハチは駅でウィルソンを待ち続ける。

あらすじを全て知りながらも、なかなかいいなと思えるのは、
犬の演技がよいからかもしれない。子ども時代、
青年時代、晩年、と3匹の犬がハチ役をするのだが、
それが何とも良い感じだった。犬好きにはたまらないだろう。
私は猫好きですが、犬が飼いたいかも知れないと思った。
今や犬はペットとなり、しかも家族として扱われるようになったけど、
犬は喋らないから、人間をどう思っているかは分からない。
だから、こうして直向な、献身的な姿を見ると、
人間はより涙を流すんじゃないだろうか。そうか、ありがとうと。
それにしても、リチャード・ギアの吹き替えが北大路欣也だったので、
合わないことこの上なしだった。いや、北大路欣也も嫌いじゃない
んだけど、なんかこの映画のイメージじゃなかったのだ。とても。
そもそも、この映画がわざと和製映画として作っている映画を、
それまた日本語で観るって言うのが、やっぱりおかしいんだろうと思った。
断然、字幕で観るべき。せっかくリチャード・ギアが頑張ってるからね。
私的には、根本を辿って、むしろ「ハチ」じゃなくてもよかった
のではないか、とさえ思う。英語圏版、「忠犬ハチ公」を、
もっとアメリカに受け入れられる感じで作ればよかったのに、と。
これは日本のために作ってくれた、優しい映画だと思う。
まぁ、それはお節介かどうかは別にして。安い感じはあまりしない。

★★★☆☆*85

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2009年8月15日 (土)

「ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ」 上遠野浩平

ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 (電撃文庫 (0306)) ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」 (電撃文庫 (0306))

著者:上遠野 浩平,緒方 剛志
販売元:メディアワークス
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上遠野さんて昔エッセイだか何だかを読んで、自意識過剰な人だなぁ、
とか思った記憶があり、けれども、やっぱり凄いんですよ。
読めば分かるんですけどね、これ発売1998年だからさ。
全てのアニメの根源はここから、と言っても過言ではない気がしてくる。

未来を予知することの出来る香純は、ひょんなことから
同じような能力を持つ5人の少年少女たちと出合った。
みなそれぞれ、未来の言葉が聞こえたり、人の顔を見れたり、
匂いを嗅ぐことが出来る。6人は集まり、一つの未来を知ろうと、
力を合わせた。そうしたら、何かが出来るんじゃないか、と。
そしてそこは、行き場のない力を隠す必要のなく過ごせる場所でもあった。
ある日6人が予知を始めると、一人の少女の姿が浮かび上がった。
6人が未来会うだろう少女だ。そしてもう一人は街の死神、ブギーポップ。
危険な匂いを察知しながらも、これらは自分たちの使命であると信じ、
彼らは闇に立ち向かってゆく。

再読。久しぶりに読んだけど、やっぱり面白かった。ライトノベルの、
ライトノベルたる感じが出ていて、「これぞライトノベル」って感じだ。
今では「ライトノベル」という言葉が確立されているけど、
当時はそんな言葉なかったよね。ただの「ファンタジー」とか、暗喩で
「電撃」と言われていただけだった。今はたくさん出てる
ライトノベルだけど、ブギーポップを読むと、安心する。
今の軽すぎるライトノベルたちとは比較にならない感情を、
この一冊で感じることが出来るから。
ライトノベルの最大の武器は、非現実的な世界にあると思う。
人造人間や、モンスター、はたまた超ど級の飛び道具、云々。何でもあり。
だけど、忘れてはいけないのは、その主人公には感情があると言うことだ。
強いキャラクターが現れれば、その分死者は増え、そして
死んだキャラクターの分だけ悲しみは増える。そう、ライトノベルは、
現実よりも格段に悲しみをより増長し、読者に訴えることが出来る。
だけどただ死ぬだけのレプリカな感情ではダメなのだ。
最近はそういう本が多すぎる。ブギーポップの最大の利点は、
成りきれない進化にあると思う。主人公も敵も味方も不安定なところ。
敵がちょっと頑張れば主人公は死んでしまうだろうし、
主人公がボロボロになって頑張らなければ、敵を倒すことは出来ない。
それは生身の人間であっても、人造人間であっても、そう。
そしてそれらの敵は、みな人間の憎しみから生まれた闇の塊なのだ。
それを理解し、彼らは戦うのだ。ブギーポップシリーズは、
殆どの場合ブギーポップが主人公ではない。ブギーポップは
いわば制裁人という位置づけで、だから、悪と戦うのは、
あくまで主人公でなければならない。たとえ死んだとしても。
是非シリーズで読んでいただきたい。ハルヒとか、比べ物にならない。

★★★★☆*86

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2009年8月14日 (金)

「禁断のパンダ」 拓未司

禁断のパンダ 禁断のパンダ

著者:拓未 司
販売元:宝島社
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うっわ…気持ち悪っ……。いや、うん、読めば分かります。
しかし想像力が豊富な方や、グロ系がダメな方は読まない方がよしです。
それにしてもこれはミステリィなのか?いや、違うと思う。
というのが私の意見。しかしこれ「このミス」大賞なんですよね。

キュイジーヌ・ド・デュウというフランス料理店は、
評判の格付け雑誌で三ツ星を飾る有名店である。
「今まで食べてきたものがゴミのように思える」と言われるほどだ。
自分の腕に自信を失いそうだった幸太だが、仕入れの途中、
昔の料理人仲間・淳一に偶然遭遇し、気合を取り戻した。
淳一は今キュイジーヌ・ド・デュウの料理人なのだという。
淳一を自分の店に招待し、料理を振舞っていたところ、
話に割り込んできた警察・青山から、キュイジーヌ・ド・デュウで
殺人が起き、また淳一は重要参考人なのだと知らされる。

あらすじをどう書こうか迷うほど、複雑な構成をしている本である。
そしてこれはミステリィではないと思う。この本の賞賛すべきは、
やはり料理の描写。元料理評論家であるという作者だけあって、
料理はまるで目の前にあるかのように、雰囲気を味わうことが出来る。
美味しく感じるだろう表現も的確で、凄いなと思った。
それと、こてこての関西弁がとてもいい。会話は関西弁小説の中では
かなりよく、関東人である私でも面白く読むことが出来た。
タイトルである「禁断のパンダ」も読み終わると、まさか自分も
そうなるのか?!と鳥肌が立つほど、よい引っ掛け具合だった。
しかし、ミステリィではない。その理由として、この話では
読書に「誰が犯人だと思う?」という暗黙の問いかけが、ない。から。
話は登場する2人の警察官がさくさくと進めてゆくのだが、
前の方のページで、読者に明示されているヒントが一向に使われない。
例えば、淳一が木下と接触していることや、結婚式の協会で、
幸太が神父と木下がしゃべっているのをみていることをだ。
明らかに怪しげだという風に書かれているのに、ここからは何も
発展せず、2人の警察官が独自に捜査を開始する。そして、
結局このヒントが使われるのは、最後の数ページである。
どうなの、これ、ミステリィじゃないでしょ、って感じである。
誰が主人公なのかよくわからないから、むしろ幸太が探偵のように
動き回ったとしたら良かったのかも知れない、とか思ったり。
あと、そう、これは好みなのかも知れないが、文章に味がない。
とても文章は上手いし、的確だ。でも、何だか整いすぎている、
と私は感じてしまった。何かこう、教科書や資料集の説明文を
読んでいるように思えてきて、せっかくいいキャラクターに、
「味」がなかったように思う。何だろう、比喩に独創性がないからかな。
それにしても気持ち悪かった。料理食べた後に読まない方がいいです。
いや、前半は料理を食べたくなるとてもいい感じなんですが。

★★★☆☆*83

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2009年8月13日 (木)

「みんないってしまう」 山本文緒

みんないってしまう (角川文庫) みんないってしまう (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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この本の全てを凝縮したら、山本さんになるのではないか、と思う。
色々な人間が書かれているのに、どこか遠くでは繋がっているような。
それをあらわすのが「みんないってしまう」という言葉だろう。
是非あとがきまで読んで欲しい。むしろ先に読んでもいいくらいだ。

「裸にネルのシャツ」
その日マンションに帰ると、部屋の中には何もなかった。
そもそもを辿れば、些細な喧嘩だったはずだ。私は彼を怒り、
「そんなに嫌いならこの部屋を出て行け」と言ったら、
彼は本当に出て行った。その日の事を私はまだ思い出す。
あの頃、仕事が波に乗り有頂天になっていた私は、世間を甘く見ていた。
私の絵はみるみるうちに売れなくなり、金がなくなった。
金はなくなったが、彼が一緒だから頑張れると思っていた。
しかし、彼は少しの喧嘩で私を捨て、去っていった。
一番支えて欲しい人を失った私は、今までの自分をやめようと、
持っていたもの全てを売った。けれど、彼の残していった、
一枚のネルのシャツだけが売れ残った。記念にと手元に残した。
けれど今、ふり返りなどせず捨ててしまえばよかったのだと、強く思う。

短編集。一番最初に読んだからか、「裸にネルのシャツ」が一番
印象深かった。寄りかかろうとしたら、去ってしまった彼。
しかし数年たち、彼は助けを求めてくる。自分は助けるべきなのか、
良くわからないまま立ち尽くすしかない。
最後に「私は今、暗い大きな穴の底から、黙ってこちらを見上げて
いる彼をじっと見下ろしていた。」という文があるのだが、
そんな「私」の気持ちを最も的確に表す比喩で、感嘆ものだった。
そもそも、少しの期待を持って手元においておいた、
想い出のネルのシャツさえ、あの時捨てていたら、
いっそ潔く、彼を見捨てて去っていけたかもしれないのに。
その気持ちが、まるで自分のことのように感じることが出来て、
「そうそれが言いたかったの」と清々しく思えるような、
言い当てられて胸が空くような、不思議な感覚を味わえる。
この本は「みんないってしまう」、その時に、主人公は何を思うのか。
というメッセージを込めて書かれている。
人間なんて、いつだって一人なのだ。ただ害のない人間を選び、
近くにいるだけだ。けれど、いざそれが離れてしまうと、
人は狼狽するんだろう。それはきっと、その人が大切だから。
そんな当たり前なことを、だけど的確に、優しく、山本さんは教えてくれる。

★★★★☆*88

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2009年8月12日 (水)

「蛇行する川のほとり 3」 恩田陸

蛇行する川のほとり (中公文庫) 蛇行する川のほとり (中公文庫)

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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やっぱり1冊で文庫本で読んでも良かったな。むしろそっちの方が
よかったかな……。なんだかいいのか悪いのか、感想が抱きづらい
本だった。まぁ恩田さんの本はそういう本がむしろ多いよな、
とか思いつつ。そう言えば「かしらん」ないな、この本。

香澄の家は蛇行する川のほとりにある。洋風で古風な趣は、
香澄の雰囲気ととても似合っている。その家は以前、
違う家族が住んでいたのだが、ある事件がきっかけで
空き家になっていたところに、彼女と義母が越してきたのだった。
ある事件――それはそこに住んでいた母親が死んだことと、
その近くにある野外音楽堂で、一人の少女が死んだことである。
自分がその犯人ではないかと、考えているだろう鞠子は、
可愛そうに酷い表情をしている。わたしたちは、過去を忘れようと、
いや、忘れることができずに、今その事件を語り始める。

澄み切った川の水が、良く見たら濁っていたように、いや、
濁ってしまったように、純粋だった少女たちは濁ってゆく。
キラキラと笑っていた少女たちは、その闇を忘れようと、
しかし忘れることが出来ず、事件の真相を語り始める。
真っ直ぐだったものが、ぐにゃりと歪んでアンニュイな空気が流れ込む。
香澄はあの日死のうと思っていたのだろうか。文面からはよく分からない。
すべてが語られずにいたら、何も起きなかったであろう水面は、
投げ入れられた石によって、波紋を作りまた新たな犠牲者を
出したんだろう。そう思う。だから、香澄は死ぬつもりだったのだ。
きっとそれはいつでも良かったんだろう。死ぬと言う覚悟を、
もうしてしまったのだから。この本は何が伝えたかったのか。
私にはよく分からない。筆を洗ったコップに沈殿していた
不穏な色の絵の具を、混ぜてはいけないと思いながら、
混ぜてしまう期待と後悔。また時間が経てば、色は沈み、
平穏が訪れるんだろう。きっとこの話はそのための儀式。
それを逃げては、本当の平穏は訪れないと、みんな知っているのだ。
怖い、だけど、それを乗り越えなければ。
そう彼女たちは小さな決心を心に抱くんだろう。

★★★☆☆*86

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2009年8月11日 (火)

「蛇行する川のほとり 2」 恩田陸

蛇行する川のほとり (中公文庫) 蛇行する川のほとり (中公文庫)

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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2巻目。予想に反して少し中だるみ。期待しすぎたかしら。
まぁ大抵評判いい本って私の趣味と合わなかったりするからなぁ。
恩田さんのね。難しい。恩田さんの文章は、嫌いではないけれど、
読みにくい文章だと思う。つっかえが、少しあるんだよね。

香澄の家は蛇行する川のほとりにある。洋風で古風な趣は、
香澄の雰囲気ととても似合っている。その家は以前、
違う家族が住んでいたのだが、ある事件がきっかけで
空き家になっていたところに、彼女と義母が越してきたのだった。
ある事件――それはそこに住んでいた母親が死んだことと、
その近くにある野外音楽堂で、一人の少女が死んだことである。
自分がその犯人ではないかと、考えているだろう鞠子は、
可愛そうに酷い表情をしている。わたしたちは、過去を忘れようと、
いや、忘れることができずに、今その事件を語り始める。

なんだかひっそりと流れる蛇行する川が、そこにあるようで、
でもそこにないようで。なんだか物足りない原因は、
背景描写が少ないからだろう。恩田さんはとても人物描写が上手い。
特に強い人間に対し、弱い人間が怯えていたり、
憧れていたりする描写がとても上手い。そして、少女から、
大人になりかけている女の子の描き方がぴか一だ。
突いたら壊れてしまいそうな少女たち。けれども、その周りにある
風景についてはあまり描いてくれない。例えば鬱蒼と茂った雑草を見て、
ハルジオンを見て、彼女たちは何を思うのか、感じるのか。
葉脈が骨のようだ、とか核になる言葉は出てくるのだけれど、
そうではなくて、感じ取る雰囲気が描かれない。怖いとか、寂しいとか、
嬉しいとか、そういうちょっとした感情が、書かれていない。
「わたし」と語られながらも、文章が非常に硬い。
だから、蛇行する川がすぐ傍で流れているようで、いや、
もしやもっと遠いんじゃないかと思えたり、何だか不安定な舞台に
思えてくるのだ。それが狙いなんだろうか?そうだったら仕方がない。
あの事件の犯人は誰なのか。容疑者は香澄の両親と、
今ここに集まっているメンバーだけである。子どもが殺したのか?
秋臣が忠告したのにもかかわらず、進んでいく不穏な空気。
もっと香澄が猟奇的だったら良かったのか?
よく分からないけど、いや、分からないから、不完全燃焼。

★★★☆☆*86

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2009年8月10日 (月)

「封印再度」 森博嗣

封印再度 (講談社ノベルス) 封印再度 (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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うわーこれ一番良かった。SMシリーズで。世間ではどうやら
『笑わない数学者』が一番ミステリィ最高峰とされているようですが、
私はこの本が一番好きだな。面白かったし。トリックも、
微妙に非現実的でありながら、もしかしたらありえそうっていうのがさ。

岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。
鍵の掛かった箱「無我の厘」と、その鍵の入った「天地の瓢」である。
「天地の瓢」は口のすぼんだ壷のような形をしているため、
その半径よりも大きい鍵は取り出すことが出来ない。何十年も
昔から伝わるそれらの家宝には、さらに家主が奇妙な死を遂げる、
という言い伝えがあった。何せ密室なのである。
そこに目を輝かせた萌絵は、自らその謎を解明すべく資料を集め始めた。
いくら調べても分からない難解な謎……。
そんなとき、香山家では事件が起こった。
何と現在の家主が蔵の中で殺されていたのである。

この本はとても面白い。ある一つを除いては。
そう、いつものあれです。「誰でも殺せそう」です。
動機がね、イマイチ決定打にならないという、森さんの欠点。
そのため、この本の犯人については特に興味が湧かない。
そして、凶器隠匿ってどうなのよ、って感じだけど。
と、文句はこれまでにし、良い点を。この本は今までの本の中で、
一番犀川と萌絵が人間らしいのである。もちろん死体を見て
嬉々としてしゃべる登場人物は変わらないけれども、
犀川と萌絵の仲が発展する重要な巻である。
今まで教授と生徒?いや…、博士とお嬢様? 何だかよくわらない
関係で、お互いに身の置き場に困っていた2人が、
なんと婚姻届を書いてしまうのだから。一人でむふむふしてしまった。
何となく諏訪野の電話で嘘っぽいって思ったのだけど、
へぇ、犀川も人間なんだーと確認できるとてもいい話だ。
あと、トリックもね、とても好きな感じだった。
「ない」けど、実は「ある」って、そういうとこがね。
願わくば、もう少し金属のこととか詳しく書いてほしかったんだけどな、
融解度数が何度で、とかさ。あの空気圧を細かく計算するみたいに。
それに蔵とか古い建物とか、とても雰囲気が出ていていい。
まぁ森さんは洋館とかのが好きなんだろうな、と思いつつ。
次も読みたくなっちゃった、と借りようとしたら、
図書館に次の巻がない……ないってどうゆうこと……寄贈でもするか。

★★★★☆*90

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2009年8月 9日 (日)

「蛇行する川のほとり 1」 恩田陸

蛇行する川のほとり (中公文庫) 蛇行する川のほとり (中公文庫)

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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恩田さん、お久しぶり。いつもいつもお久しぶりとか言って
読んでいる気がして毎度申し訳ない。読むたびに、あぁいい、
って思うんだけどね何となく次に手が伸びなかったりして。
嫌いじゃないんだけどなぁ、嫌いじゃ。

野外音楽堂で行われる演劇の舞台背景を描くため、鞠子は
夏合宿に参加することになった。それも憧れである美術部の
先輩の家にお呼ばれされるのである。鞠子は何度とないその機会に
はしゃいでいた。素敵な先輩を独り占めできるチャンスである。
しかし、合宿を前にし、鞠子の周りでは不可解なことが起こった。
先輩である香澄に近づくな、と見ず知らずの少年・暁臣に脅されたり、
自宅の庭で仮面を被った不審な人物を見かけた。
結局合宿は香澄、芳野に暁臣、月彦という男子生徒も加わり、始まった。
絵を描き始め、清々しい気分の鞠子だったが、またも暁臣は今すぐにでも
家に帰るべきだ、と言い始める。彼が警告する理由とは……。

これ確か3巻が1冊になって文庫になっているはずなんだけど、
図書館になかったので仕方なく1冊ずつ読んでいる。けれども、
1冊目を読み終わった今、1冊ずつで良かったと思っている。
何と言ってもこの1巻目のラストのぞくぞくする感じを、
きっと文庫だと感じることが出来なかったろうから。
キャラクターは恩田さんお決まりの、長髪で美人な透明感ある少女と、
ふわふわしてちょっと抜け気味の少女がとてもいい空気を作っている。
読んでいるとまるで少女漫画のようで、ほんわかした気分になれる。
だけど、その下に隠れているミステリーは、相変わらず、
これでもかと不穏な空気を含んでいた。何だろうね、うーん、そうだな、
グリム童話みたいな、そんな底の方に真っ黒なものがゆらゆらしている
んだよね。表面では可愛い女の子たちがきゃはきゃは言って、
笑っているのに。その描き方が凄く恩田さんは上手いのだ。
この本も最初は「なんだ、いつもの通りの学園ものか」と、
落胆していたんだけど、最後の数ページで鳥肌が立った。
さすが、恩田さん。このラストを読んで次を読まない人いないと思う。
それくらいぞわぞわと、蠢いて、引き寄せる何かを感じた。
そう、これを「怖いもの見たさ」という。だからやめられないのよね、
と思い、今日2巻目を借りた。たまに読みたくなるだよな、
このほの暗い底から、足を引っ張られるようなこのおぞましい感覚をさ。

★★★★☆*86

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2009年8月 8日 (土)

「彼女が死んだ夜」 西澤保彦

彼女が死んだ夜 (角川文庫) 彼女が死んだ夜 (角川文庫)

著者:西澤 保彦
販売元:角川書店
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私が借りてる図書館に西澤さんの本がほとんどなくて、
この図書館何考えてるんだろうと思う。こんな上質なミステリを
推さないなんて!と憤慨である。この本も面白かった。
納得してしまう奇妙さを描くのが上手い。密室じゃないけど。笑

大学生でありながら門限が午後6時、という奇特な両親を持つ浜口美緒は、
その箱入り娘具合から、ハコちゃんというあだ名をつけられている。
そんなハコちゃんが明日から念願のアメリカ旅行を決行する事になり、
僕たちは前途を祝して飲み会を開く事になった。いつもは飲み会すら
参加できないハコちゃんだが、今日は運良く両親は法事でいない。
いつものサークル仲間で飲みつぶし、それぞれ分かれた面々だったが、
数時間後、メンバーはハコちゃんの家に呼び出されることになった。
理由も分からず着いてみると、そこには見知らぬ女の死体が横たわっていた。
事を荒立てると自らのアメリカ旅行がパーになってしまうといい、
死体をどうにかするよう僕らに救いを求めてくるのだが……。

この本も面白かった。一つ残念だったのは、あだ名多し。覚えられない。
まぁ、学生ものってこの本に限らずそう言う傾向あるけど、
なかなか注意して読んでいないと忘れてしまいそうだった。
西澤さんのミステリィ長所は、ありえそうな奇怪行動だと思う。
奇妙な事件が起きるのだが、元を辿り、理由が分かると、「なるほど」と
思えるものだ。今回はストッキングの中に大量の髪の毛が詰められて、
死体の傍に置かれている、というもの。原因が分からず、
その光景を見た人間が思うことは一つ、気持ち悪いだ。
奇妙すぎる、する理由がまったくない奇怪行動である。
けれども謎が溶けてゆき、なんとその髪は被害者が自分で切ったものであり、
三角関係のもう一人の女を怯えさせるための行動、と読んでゆくと、
なるほどとても有効な怖がらせ方ではないか、と思えてくる。
まぁそれでも気持ち悪いのは気持ち悪いけど、その気持ち悪いと思う
ことによって、女が離れてゆくなら、してやったりなのだから。
それと、ヒントの置石の上手さ。分かりそうで、分からない謎。
実はこうでした、と披露された瞬間「なるほど!」と膝を打ってしまう
快感と、こいつが犯人だったのか、という鳥肌がとても心地よい。
この本は犯人が二転し、かなりびっくりな展開。まさか、と思いつつ、
ヒントを組み合わせると、犯人はこの人でしかありえないと納得できる。
もう一つの良い点は、キャラクター性。まさかハコちゃん死んでると
思わず、知った瞬間鳥肌。悪役だと思って「嫌な女」なレッテルだった
登場人物が、一転被害者だった時の衝撃の大きさが、とても堪えた。
やられた、って感じ。とても上手いミステリィを書く人だと、
2冊目だけど素直に思った。まぁ他の本は知らんけど。もっと読んでみよう。

★★★★☆*86

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2009年8月 7日 (金)

「未来のおもいで」 梶尾真治

未来(あした)のおもいで (光文社文庫) 未来(あした)のおもいで (光文社文庫)

著者:梶尾 真治
販売元:光文社
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梶尾さん、初本。友人から借りました。何となく北村薫のやや男っぽい感じ。
この本だけかもしれないけど。前回の『七回死んだ男』と言い、
タイムスリップもので、何だか不思議な感じがした。こちらはまぁ、
話があんまり素直に進むので、なんとなく物足りない気も。

イラストレーターである滝水は趣味の山登りの最中、
不思議なことを体験した。土砂降りの雨を凌ごうと洞に逃げ込む際、
同じように立ち往生していた美しい女性に出会った。
豪雨の中、交わされた少しの会話。女性に興味などなかった滝水だったが、
その女性・沙穂流には深く心惹かれたのだった。
雨が止み、彼女が立ち去ると、どうしてもまた会ってみたくなった。
何か手がかりはないものか……ふと洞に落ちていた彼女の手帳に気づいた。
最後のページに書かれていた住所を頼りに、その場所を尋ねてゆくのだが、
その家に沙穂流という女性は住んでいなかった。

かなり軽い感じで、簡単に読めた。感想は純愛だな、の一言。
雰囲気などは嫌いではないのだが、捻りがなくて残念。なんとなく
予想できる結末にも残念。一つよかったのは、恋焦がれている様子が、
手紙、と言う古めかしい方法でやり取りされること、そしてそれが、
時空を越えても伝えられる、ということの表現方法。
特に、イラストね、彼女の絵を書くって言うそれね。
良かったと思う。しかし、この本の中にも書いてあるんだけど、
未来にタイムスリップしちゃう話ってあんまりないと思うんだよね、
俄然過去の方が多い。この本だって、未来に行きます、と言うところで
終っているんだから、未来に行った話ではない。ので、ちょっと残念。
感想少ないんだけど、それは内容も薄いから。純愛だからね。
いい話なんだけど、少し物足りないかな。
あ、そうそう、コーヒーがない、って出てくるけどちょっとリアルで
よかった。数年前までは当たり前でも、今はもうないもの、って
結構あるんだろうな、とか思った。現在を生きていると気にならないけど。

★★★☆☆*81

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2009年8月 5日 (水)

「七回死んだ男」 西澤保彦

七回死んだ男 (講談社文庫) 七回死んだ男 (講談社文庫)

著者:西澤 保彦
販売元:講談社
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いやーこれ、最高に面白かった。森さん、石持さんに続くかなりの
ミステリィヒットでした。七回死ぬ原理を最初の方で知ることに
なりますが、そんな馬鹿みたいな話と知りながら、なるほど
こんな風に出来たら、実際の事件もいいだろうにねぇ、と関心。

正月に親戚一同が会したのは、他でもない相続争いである。
僕の祖父である渕上零治郎は、今年の正月書く遺言状に、
親戚の誰に経営会社と膨大な財産を継がせるかを書き、
それを正式な書類にすると言い出した。それを聞いた母と
はるな叔母さんは、何が何でも我が子どもをと競い始めたのである。
僕の兄弟は男三人、はるな叔母さんのところには姉妹二人。
それぞれの思惑を巡らしながら着いた新年の席では、火に油を注ぐような
激しい騒動になった。果たしで祖父が選ぶのは誰なのか……
みな目をぎょろつかせ、敵対心を露にしている。
ようやく宴会が済み、次の日になると、ある騒動が起きた。
なんと母屋の屋根裏で祖父が何者かに殺されていたのだった。

最高に面白いトレースミステリィ。確かにこういう発想は前から
あったかもしれないが、この本はこれ以上ない!ってくらい
上手く利用し作られている。七回死ぬ男。タイトルにびっくりだが、
なんてことはない、主人公が特異体質のため、
一日を9回やり直すことが出来るだけのことなのだ。
安易なパラレルに白けるところだが、この本は楽しい。
1回目に死んでしまった祖父をどうやって殺さずにおくか、
という実験を7日分、すなわち7回行うのだ。人に話しかける
タイミングや、会話を変えてしまうことで、微妙に変わってくる未来。
1回目犯人かと思われた人物を隔離していたはずなのに、
2回目、何故か祖父は死ぬ。おいおいおい、どういうことだ?
とミステリィの始まりである。特に6回目?全員を集めておけば
大丈夫だろう的な安易な考えで、宴会場に終結した親戚一同の
惨劇には笑った。あははは、そうなると思ったよ、と。
そんなお決まりから、予想だにしない出来事まで、7回分、
同じ人間が殺されるまでの物語が読めるのだ。
どこかで味わったことがあると思ったら、推理のシュミレーション
ゲームのそれである。何回か推理をやり直せる、という面白さ。
ねぇいいとこついてるよね、絶対面白いに決まってるじゃないか。
そして、何より語り口「僕」が面白い。地の文もかなり面白おかしく
書かれているが、かなりボケセンスがよくて笑えた。
最後の冷やりとするオチも拍手もの。最近ここまで褒めた本ないね。
西澤さんまた読もう~。

★★★★★*93

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2009年8月 4日 (火)

「絶対泣かない」 山本文緒

絶対泣かない (角川文庫) 絶対泣かない (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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こちらも久しぶりに山本さん。凄く良かった、さすが山本さん。
これも短編集だけど、山本さんは長編よりも短編の方が上手い。
何と言うか、味があるのだ。なぜこんなに短い文章で、
読者を引き込み、最後に何らかの感情を与えることが出来るのかと。

「今年はじめての半袖」
私は死のうと思った。理由は失恋したから。
同じ会社内で付き合っていた彼は、私を振り、
私よりも甘え上手な社内の女と付き合い始めたのだった。
何ともステレオタイプな話だが、私はどうしても立ち直れるとは
思えなかった。あんなに楽しみにしていたアフター5も、
今では辛い時間でしかなかった。私は会社を辞め、百貨店に就職した。
時間を忘れるため、遮二無二働いた。残業もした。
いつも彼の事を考えていた。それから2年が経ち、
場に馴染み始めた頃、あの時の彼が百貨店に現れた。
もう一度付き合わないかと言うのだが、その時私は……。

とてもいい短編集である。なぜこんなにも短い話で涙を誘えるのか。
さり気なく書く山本さんの文章の中に込められた凄さを、
この短編集では味わうことが出来る。特に好きだった、
この『今年はじめての半袖』のラストでは、
「生きていて良かった」と物語が締めくくられている。
死のうにも、自分の葬式を両親に出してもらうわけにもいかず、
人間はどんなに悩んでいたとしても、生きなければならない。
地を這うように落ち込んでも、それは同じことで、
けれど落ち込んだことがあったからこそ、
あのとき死ななくて良かったと、生きていて良かったと、
そう思えるんだろう、と。私はそう思ったことはあるだろうか。
大げさではなく、ささやかに響くのその思いを。
そんな事を考えながら読むことが出来た。
あと、いつも彼の事を考えていたのに、いつしか愛ではなく、
違う何かに変わっていたのだという事実も確認することが出来る。
その他『ものすごく見栄っぱり』や『真面目であればあるほど』
もとても好きだった。一度に読んでしまうのがもったいないほどだった。
毎晩1話読んで寝る、とかいいかもね。私は気になって次が読みたくて、
そんなことは無理なんだけど(笑)この本ではちょっと明るい
山本さんが読めます。暗い卑屈な山本さんも久しぶりに読みたいなぁ。

★★★★☆*93

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2009年8月 3日 (月)

「誰か」 宮部みゆき

誰か Somebody (カッパノベルス) 誰か Somebody (カッパノベルス)

著者:宮部 みゆき
販売元:光文社
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宮部さんにしては詰まらなかったなぁ。うーん。実はこれの2巻目である、
『名もなき毒』を先に読んでしまったのだが、そちらの方が面白かった。
今回の本は、「で、何したかったんだっけ?」という微妙な終わりなので、
どんなにキャラクターがよくても映えない残念な感じだった。

今多コンツェルン会長―わたしの義父のお抱え運転士だった梶田が、
隣町で自転車で引かれ亡くなった。65歳……長女の結婚式を控え、
これから晴れやか、とまでは行かずとも、穏やかな老後を考えていた
矢先である。残された二人の娘は、いくつかの疑問を抱いていた。
父は何故隣町へ行ったのか。父が片をつけなくてはいけない、
と言っていたのは何なのか。そして見つからない犯人のゆくえは?
広報室長のわたしの元には、義父からのじきじきの依頼が来ていた。
二人をよろしく―かくして私は事件の全容を調べるため、調べ始めた。

詰まらない原因は、7割がよくわからない過去について、
うじうじ悩んでいるだけだから。もちろんうじうじ悩むのは必要だけれど、
両親が人を殺しの隠蔽をしたかも知れないと分かるのは、後ろから50Pくらいだ、
というのは、結論、それはあまり重要だととられていないからだろう。
とすると、何がこの話の中で重要なのか? それがよくわからないのである。
ひき逃げ事故は結局中学生が犯人であるし、掘り返した過去は
なかったことにするし、仲の悪かった姉妹は、彼氏を奪い合い最悪の結末。
えっと、で、何したかったんだっけ? の領域である。
宮部さんにしては大変珍しいのだが、あんまり面白くなかった。
ただ一人の印象の良い運転士の暗い過去を根掘り葉掘り曝け出し、
残された娘すらも修羅場を向かえ、不仲になる。なんなんだろう。
主人公をはじめ、奥さんや義父、娘、その他の登場人物はとてもいい。
何となく高級な生活と、素朴な生活が分けられて書かれているから、
庶民から観た、ちょっとしたセレブへの憧れ、みたいな願望と、
実際セレブになった庶民の肩身の狭さ、みたいなのがとても上手く書かれている。
ので、内容が微妙なのが大変悔やまれる作品だと思う。
『名もなき毒』の方が、数段面白かった。あっちは描写が軽すぎて、
気になったけど、こっちはちょっとくどいぐらいだな。
まぁ、それが宮部さんだけど。私は宮部さんが書く30~40代女性が好き。
男性は、そうでもないんだけど、とか言って、この主人公は男性です。

★★★☆☆*80

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2009年8月 2日 (日)

「ベロニカは死ぬことにした」 パウロコエーリョ

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫) ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

著者:パウロ コエーリョ
販売元:角川書店
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(訳:江口研一)
この本、本屋で買おうと思っていたのですが、買わなくて良かったです。
大変読み終わるのに苦労しまして、えぇ、これが終る前に、
3,4冊読み終えてしまいましたからね……うーん、タイトルにも惹かれるし、
内容も悪くないはずなのに、怖ろしく詰まらない理由は……。

ベロニカは死ぬことにした。特に何があったわけでもないのだが、
毎日がだらだらと続くだけの自分の人生に嫌気が差したのだ。
睡眠薬を多めに飲み、さぁ、これで最後なのだと目を瞑った。
しかし、数日後ベロニカは目を覚ました。目が覚める……そう、
死ぬ事ができず、生きながらえてしまったのだった。
横になったそこは、狂人ばかりが収容される施設。
周りにいる人たちは、意味不明な言葉を話し、誰もベロニカを
理解しようとはしてくれない。おまけに、寿命があとわずかだと言う。
最後を宣告され、それが差し迫ることにより、怒りと不安をベロニカは……。

大変つまらない理由は、翻訳がいけないからだろう。
あなた日本人ですか?、と真剣に質問したくなるほど、
よくわからない日本語訳が多々ある。英語のあまり得意でない私でさえ、
「え?この文章本当はWhichとかWhoで繋がってるでしょ」ってわかる文が、
わざわざ切り離されていて、意味がごちゃごちゃになっていたり、
1ページに複数者に対する「彼女」と言う訳が出てきて、これでもか
というほど不親切な状態だった。まったく原作が可哀想だ。
と、訳についてはその辺にしておくとして。
物語は、死ぬことにした、という原因があまり上手く描けていなかった。
もっと、「ベロニカは真面目すぎるほどだった」とか、
そういうエピソードを入れたら、ぐっと引き立っただろうに。
よく分からないけどイライラした、とか、他の患者の様子などが、
やけに多く書かれていてどうも視点がずれているようにも感じた。
最後、もう死ぬかも知れない、死ぬかも知れない、
と思いながら、毎日を貴重に感じて過ごせるのはとても幸せだろうと、
考える事が出来た。で、このよいラストを引き立てるため、
翻訳はじめ、その他、ベロニカの生涯をもっと丁寧に書いて欲しかった。
この翻訳さんの本はもう読まないと思う、という意味の★で。
原文で読んでみたいものです。絶対原文の方がいい。

★☆☆☆☆*--

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2009年8月 1日 (土)

「Φは壊れたね」 森博嗣

Φは壊れたね (講談社ノベルス) Φは壊れたね (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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密室トリックももはや底を尽きたか? な空気が漂う森さんでした。
あんなに読んでいた森さんも、気がつけば久しぶり、の領域。
楽しかった。会話は昔の作品より格段に面白いんですけどね。
あと、シリーズ的にも、保呂草シリーズより面白いです。

山吹はマンションの管理錠を使い、一つ上の階・601の部屋を開けた。
本当はそうしてよかったのかは分からなかったが、
601の住人に会いに来た2人の女子学生が困っていたので、
開けてやったのだった。しかしそれは悲劇を呼ぶことになった。
中では美術科専攻の町田という男子学生が、宙吊り状態で死亡していた。
両手はYの字状に挙げられ、胸にはナイフが刺さっていたため、
他殺であることは明らかであった。その上、部屋の中は、
美術的な装飾が施されており、とても異様な光景である。
そして何より、その部屋は密室なのだ。果たして犯人は誰なのか……。

そう言えばビール券をくれた探偵の意味がよく分からなかったけど。笑
全体的に、登場人物の会話が面白い。むしろそのために読んでいる、
といっても過言ではないくらいだ。キャラクターも立って来ていて、
ちょい役で出てくる人物も、なかなか存在感があっていい。(萌絵とか)
しかし、ミステリィは、というと、ネタ切れですか?と。
ですよねーそうですよねぇ、もう密室は辛いですよ、って感じである。
森さん=密室ということで、色々読んできたけど、この結末は、
かなり許せない内容だ。実は全員グルでしたラスト。
ちょっと待ってくれ、それじゃ密室も何もないじゃないか、である。
それに、山吹がたまたま501にいたからいいが、
外出していて管理錠で開けられなかったらどうするつもりだったのか?
合鍵を持っているからって、それで開けてしまったら元も子もない。
その上、死んでいない宙吊りの町田はどうなるのか?
この話は、全ての成り行きが、全て上手くいった場合に出来上がる、
大変危険なものになっており、そんなもので密室なんてあまりに
無謀すぎるだろう、というのが感想だった。それと、『Φは壊れたね』
の意味するところも、とてももったいない。なんかありそうなのに、
具体的に意味するものは何もなかった、と言う感じだ。
まぁ、芸術は、爆発だ、ってとこなんでしょうか。
そこんとこ押し出したら、もっと面白かったかも、とか思ったり。
しかし、森さん読みやすいんで、すらすら読んでしまった。
読んでいない本が減っていくのが寂しいとすら思うね。

★★★☆☆*83

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