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2009年7月27日 (月)

「アンボス・ムンドス」 桐野夏生

アンボス・ムンドス アンボス・ムンドス

著者:桐野 夏生
販売元:文藝春秋
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突然ですが、さっきニュースを見たら今年の日本は、
1日平均94人以上が自殺しているらしいです。
1日約100人がいなくなっているのか……そう考えると
なんとも言えない後味の悪いグミでも飲み込んだ気分になりますね。

「アンボス・ムンドス」
私は数年前まで国語の教師をしておりました。
田舎の小さな学校では、一学年に一クラスしかなく人間関係が過密な上、
また小学五年生という微妙な年代の子どもを扱うには、
新任の教師にとってはとても重いことでもありました。
クラスの女の子の間では、陰口が常に交わされ合っていました。
その時、私は教頭の池辺と不倫の関係にありました。
夏休みの少ない私たちは、僅かな休暇を不倫旅行にあて、海外へ飛びました。
夢のような日々でした。けれど、一方で小学校では、
重大な事件が起きていたのです――。

短編集。表題作が一番良かった。一番重いし、好きだった。
この一遍でも読んだ価値があると思う。
「表裏」がテーマになったこの話、それ以外の部分でもとても楽しめる。
いじめの蔓延した学校……けれどそれらは裏に隠れていて、
周りの人間は気づくことが出来ない。本当はいじめが原因で死んだ
サユリのことも、みな気づかず、明るい表面ばかりを求めようとする。
きっとみんな知っているのだろうけどね。
でも気づかないふりをして、「本当」の裏側の事を知ろうとしないのだ。
それは大人に限らずに。本当に怖いのは、それを悪びれることなく
実行する子どもたちなのだ。いじめは恐ろしい。
いじめを起こすその行動よりも、キラキラと笑っている可愛い子が、
顔を歪めて醜く笑い発する、他人を蹴落とそうとするその言葉が怖い。
その瞬間を考えるだけで、ぞっとしてしまう、そう思いませんか。
この話には不倫も絡んでいて、それは桐野さんらしいというか、
いい絡め具合だった。で、その付き合っていた教頭が自殺したので、
上に書いたように、自殺者の数に目がいってしまったのだった。
「よく現実は小説より奇なり」って言うじゃない。
それのように、きっと自殺している人の原因を調べたら、
小説じゃ描けないどろどろがあるんだろうな、とか思った。不謹慎かな。
あと、久しぶりに桐野さんを読んだけど、さすがだなぁ、と思う。
『ルビー』なんかを読んでいる時は、山本文緒のような印象を
受けなら読んで、そうだ桐野さんだった、と読み終わってから思った。
文体を変えず、色々な要素を引き出して違った味わいを出せるのは凄い。
『OUT 下』も読もう、放置しすぎだなぁ。

★★★★☆*89

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