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2009年7月28日 (火)

「幻夜」 東野圭吾

幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7)) 幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))

著者:東野 圭吾
販売元:集英社
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700ページあったのですが、5時間半位で読み終わりました。
速いのか遅いのか分かりませんが、とても面白かった。
長編では近年稀に見ぬ充実感。さすが700ページを、
涼しげな顔で書くわけです。東野さんやっぱり好きだなぁ。

不況に頭が回らなくなった親父は、天井から首を吊って死んでいた。
葬儀の日、人が帰り片付けをする雅也に、叔父がそっと近づいて言った。
お前の親父に400万円を貸した。自殺によって出た生命保険で、
それをまかなってはくれはしないかと言う。下手に出ているものの、
顔にはひげた笑みが張り付いていた。よろしく頼むよ、と肩を叩かれ、
雅也は俯いた。一人酒を飲みちらしていると、突然揺れを感じた――地震……?
見る見る間に家と工場は崩壊し、雅也もすんでのところで逃げ出した。
家を振り返ると、屋根の下敷きになり瀕死になった叔父の姿があった。
近づくと、叔父は少し体を動かした。生きている――そう思った瞬間、
雅也は手元の石で叔父の頭を叩き割っていた。自分のした行動に動揺し、
後ろを振り返ると、そこには一人の女が立っていた――。

例えばラストがどんなに詰まらないものであったとしても。笑
いや、本当に楽しくて、ほとんどノンストップだった。
『白夜行』を読んだときもそうだったのかもしれないが、
もう3年くらい前なので記憶が乏しい。それでも美冬の正体が分かった時、
駆け抜けた鳥肌は、『白夜行』あってのものだった。
すっかり忘れていたんですけどね、話が微妙に繋がってるなんて。
しかし「一体お前は誰なんだ?」となったとき、思い浮かんだのは
紛れもない彼女だった。東野さんは、心理描写がとても上手い。
人間模様とでも言うのだろうか。会話一つとっても、
どこにでもありそうな、どこででも交わされていそうな会話で、
すらすら読むことが出来るし、口調や相手の態度で、
お互いの仲が今どうなっているのか、とても上手く伝わってくる。
一番それを感じたのは、隆治の「夫」と「弟」の書き分けだった。
隆治は美冬の前では「夫」であり、頼江の前では「弟」であるが、
「夫」としての威厳を匂わせることや、「弟」の少し姉に媚びる感じが、
とても上手く表現されていて、凄いわと思った。
『白夜行』ではどろどろした感じではあったが、
こちらの方は美冬の働きによってかなりスマートな話になっている気がする。
まぁそれにしても美冬が超人的すぎて、非現実的ではあるけど。
事件がこれの半分だったとしたら、おおいに納得できたかもしれない。
で、それにしても、なラストなんですが。
これはこれで仕方がないんだろうかと思いつつ、
最後ハッピーエンドで終わられても困るからなぁ。
でも最後に美冬に制裁が下される事を願っていた身としては、
自滅する雅也にがっかりした、といっても過言ではない。
だって美冬の目的がよく分からないから。彼女は何を目指したかったのか?
宝石店の社長婦人としてキラキラしていれば問題ないのか?
はたまた、また新たな犠牲者と共に新境地があるのか?
よく分からない状況で振り回される男たちが憐れで仕方ない話だと。
しかし、この吸引力は、他の著者では味わえないと思う。
あぁ、こういう本読んでしまうから、ぶつぶつ文句言いながら、
結局東野さん読んじゃうのでしょうね、とかなんとか。面白かった。

★★★★☆*90

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コメント

うわぁ~。感じた事を表現するの、お上手で、伝わってきます^^
これは面白い!どんどん進みますよね。私もこれは・・・印象深いですねぇ~。

投稿: *のん* | 2009年12月29日 (火) 15:48

>のんさん

ありがとうございます^^*
そう言っていただけると、読んでる甲斐があるっていうか、
感想を書いてる甲斐がありますね。
面白い本は、たくさんの人に読んでほしいので、がんばってます。
これねぇ、面白かったですね。ぐいぐい読まされました。
さすが、東野圭吾、な本、の一冊です。続刊出るのかしら?
ちょっと楽しみかも。それにしても700Pってすごいよなー。
だから京極さんいつもそれだけで尊敬に値します。とか(笑)

投稿: るい | 2010年1月 4日 (月) 21:03

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