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2009年4月24日 (金)

「瓶詰の地獄」 夢野久作

瓶詰の地獄 (角川文庫) 瓶詰の地獄 (角川文庫)

著者:夢野 久作
販売元:角川グループパブリッシング
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3月ちょっとお休みしていた読書だったけど、また読もうかなぁ、
と思ったきっかけになったのはこの本だった。さすがだな、夢野さん。
こういう本をもっとたくさん見つけたいと思う。そして、たくさんの
人が読んで、あぁ今日はいい本を読めた、と思って欲しい。

「一足お先に」
右の膝小僧の辺りが痛み出したような気がして、私はビクリと目を覚ました。
何かを突き刺したような、鋭い痛みだったのだ。ハッとして
右足のあるべきあたりを手で探し回ったが、そこに右足はなかった。
私は数日前の手術で、右足の付け根から下を切断した。
そのことをすっかり忘れていたのだった。しかし、今確かに右足が痛んだ。
同じように足を切断した男は、そんなことはよくある話なのだ、と言った。
なにやら右足の神経は背中のあたりに繋がっており、足を切ってもまだ、
神経はそこに足があると思い込んでいるらしい。だから夢の中で、
うっかり足があるつもりの自分を見たとしても、少しもおかしくないのだと。
私は少しの動揺を抱えながらまた眠りに着いた。片足で走り回り、
女を殺す夢だった。そして起きた時、同じ病院内の女が死んでいた。
殺したのは私なのだろうか?

「ドグラマグラ」を先に読んでいるので、短編集と途中で知り、
ちょっと残念に思った。がっつりヘビー級を期待していたので、
なんだーと思ったのだ。しかし、読んでみて大満足。
短編でありながら旨みをぎゅっと凝縮したこの面白さ。
さすが何物にも代えられない魅力があるなと感じた。
特にその「ドグラマグラ」的な面白さがあったのは「一足お先に」だった。
足を切断した過去に闇を抱える主人公が、寝ている間に幻覚に襲われ、
怖ろしい夢を見る。夢の中で、自分は人を殺しているのだ。
そしてハッと我に返り目覚めてみると、先ほど夢だと思っていたものが、
実は現実に起きていたようで、病院内で女性が死んでいる。
病院の医者までもが、お前が犯人だろう?と言ってくるのだが、
しかし自分は夢を見ていただけのはずであり、自分がやった、
という証拠は何一つないのだ。自分が目覚める前に、この医者までもが
グルになり、自分を犯人に仕立て上げたのではないか?
という怖ろしい考えに行き着き、けれどやはり自分が犯人だと、
思い出す様子が、とてもリアルに描かれている。
それはそれは怖ろしいほど細かく書いてくれるので、
その楽しげな「狂気」に怯み、けれど凝視してしまうような、
怖い物みたさをうまく利用した作品であると思う。
そしてこの話に出てくる、一瞬自分を見失った時に、何かが起こっており、
「これはお前がやったんだ」と言われるがピンと来ない、
そして罪を着せられる。そんな真骨頂が「ドグラマグラ」だった。
あれはすごいね、と時間がたった今でも思う。もう一回読もうかなぁ、
時間があったらまた読もうと思う。それとこの本の目玉は、
「死後の恋」という話だとされている。うさんくさい宝石話を語る
男の話なのだが、聞き手はいつしか話にのめり込み、
ただでくれると言うその宝石をいらないと言ってしまう話だ。
どれをとっても面白かった。これもまた読もうと思う。

★★★★☆*90

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