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2009年2月 4日 (水)

「OUT 上」 桐野夏生

OUT 上  講談社文庫 き 32-3 OUT 上 講談社文庫 き 32-3

著者:桐野 夏生
販売元:講談社
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上巻を読んだ感想だと、「柔らかな頬」の方が私は好きだと思った。
しかしこの血なまぐささ、冷静にすらすら書かれた文章だから成せる業。
気持ち悪くなって何度も手を止めた。だって、まるで私もこの4人の
中に参加してしまいそうだったから。抜け出したい、思いで人は殺せる。

弁当工場での深夜夜勤を勤める主婦たちは、様々な鬱屈を抱えていた。
家族とのすれ違い、老人介護、借金、家庭内暴力。
昼と夜が逆転した生活では、常に睡魔が彼女とたちを付き纏い、
また、家庭の「主婦」としての時間が待っている。
頑張っているのに、報われない周りの環境に、疲弊するばかりだった。
そんな時、雅子のもとに夜勤仲間である弥生が、電話をかけてきた。
家庭内暴力を振るっていた夫を、殺した、と言う。
悩まされ続けた夫のせいで、今の生活が壊れるのは嫌だった。
2人は仲間を誘い、夫の死体を分解し、捨てることにした。

たぶん、下巻を読んだらもっと面白いのだと思う。
桐野さんの文章は、冷たい。私はそう思う。酷いことを書いてある、
と言う意味ではなく、ありのままを冷静に書いてあるから。
何の装飾もされずに書かれるその文章は、冷たい。
それは、読んでいるうち現実がそうなのだと、気づかされる。
夜勤で疲れきった主婦たちの間に漂うのは、そんな冷たい空気だった。
仲間、である。けれど、仲良くはない。彼女たちは、
自分たちの誰をも信じることが出来ずに、苦しんでいるのだから。
気がついたら、わけも分からず、仲間の夫を分解していた。
自分でも何故それをしたのか分からない。けれど時間が経てば立つほど
それは報われない生活に終止符を打つためだったと、確信に変わるのだ。
この本には、愛かを失った人がたくさん出てくる。
家族愛、夫婦愛、情愛、恋愛。失った時は悲しくても、
その時間が長くなれば長くなるほど、麻痺し何も感じなくなる。
自分でも気づけなくなった「喪失感」が、
バラバラ殺人と言う猟奇的な事件を生み出したのだろう。
悲しくなんてない、怖くなんてない、可哀想なんて思わない、
だってもう失うものはないのだから、可哀想なのは自分だから。
彼女たちの無言の嘆きが文章から滲み出ている。

★★★★☆*86

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