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2009年1月24日 (土)

「赤い指」 東野圭吾

赤い指 赤い指

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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何だかある一点を除いては、大変いい本だと思うのですが、
その一点のせいで、全体が歪んで微妙な話になっているのが残念。
しかし泣けますからね、その感情になるまでのもっていき方は、
さすが東野さん、って感じです。東野さんに大きな外れはないなぁ。

妻から連絡を受け昭夫が帰宅すると、庭には一体の死体があった。
ピンクのトレーナーを着た小さな女の子。
犯人は最近引き篭もりがちの、中学生の息子だった。
連れ込んだ女の子に、悪戯をしようとしたのだろう。
一刻も早く警察に知らせるべきだったが、妻がそれを引きとめた。
「このままでは直巳は人殺しになってしまう。そんなのダメよ」
昭夫は苦悶の末、死体を近所の公園に捨てることにした。
しかし、捜査が始まれば、きっと自分たちは調べられるだろう。
どうにか容疑を逃れるため、昭夫は妙案を探し出した。
痴呆症の母を真犯人に仕立て上げる、残忍な案を。

東野さんの本は大抵が楽しめる。もう十数冊読んでいるが、
「読むんじゃなかった」と思った本は一冊も無かった。
けれども、読み続けるうち、ある一つの事に気づかされた。
東野さんの本には「絶対的価値観」が埋め込まれていると言うもの。
小説は小説家の作り話なのであって、話に対する作者の優柔不断さ、
と言うものが、必ずどこかにあるものなのだ。勿論いい意味で。
例えをあげるなら、主人公が何か事件に巻き込まれた時どうするか、
と言う点において、東野さんの場合その余地がないのだ。
「こうなったのだから、こうなるに決まっているのだ、こうするのだ」
という、「絶対的価値観」によって話が進む。この価値観は
かなり的を得ているので、納得してしまい、なかなか気づけない。
けれど、東野さんの本で「もうちょっと他にもあるんじゃ…」
と思ったことのある人は、きっとそれに気づきかけているのだと思う。
それと、違う本で違う主人公であっても、いつも主人公の
考えることが画一的で、ある意味個性があまりないという点も。
まぁそれは村上春樹なんかでもとても思うことだけれども……。
それを好きか嫌いかで、東野圭吾の好き嫌いが分かれるんでしょうね。
とか、話が大変脱線してしまった。で、それ以外の部分は、
凄いのだから、私は大抵満足して読み終わるのだけれど。
今回私が「?」と思ったのは、痴呆症のふりをしていた母親が、
なぜ痴呆症のふりをやめなかったのか、と言うもの。
人が一人殺されているのだ。しかも隠蔽するために、死体を捨てた。
その事実を知った後、「自分に容疑を着せないために」と言う理由で、
「赤い指」を使って知らせた、となるととても非人道的である。
普通「隠蔽して死体遺棄しないために」そう言った「愛情」で
知らせるならまだしも、「容疑を着せないために」というのは、
何だか微妙に違うような気がするのである。
しかし、その愛情の示し方には泣けた。呆けた母が幼少期の自分を、
大切に思っている。自分のあげたものを大切にしている。
今まで邪険にしてきた思いを改める気持ちに心が揺れるのだ。

★★★☆☆*85

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コメント

もしかしたら,るいさんとは違うところで感じているのかもしれないけれど,

>違う本で違う主人公であっても、いつも主人公の考えることが画一的で、ある意味個性があまりないという点

これ,よく分かる!と思いました。
「必ずそういう行動をとる」のが前提になってる作品,多いよね~。

投稿: そら | 2009年1月27日 (火) 22:07

>そらさん

>「必ずそういう行動をとる」のが前提になってる作品,多いよね~。

そうそう、東野さんに限ったことじゃないんだけど、
結構こういうのあると思うんですよ!
確かに!どこで感じるかは、人によるかもしれないけど。

私の場合は東野さんのストーリーは、
結構考えられたものが多いと思っていて、
そんなに「いつも同じ」って感じはしないんですけど、
でも「いつも同じ考え方」(しかも微妙に偏っている)で、
事件が処理されているような気が、今回したんですよね。
この本話がシンプルだったから、余計かも知れないですが。

しかし、「容疑者Xの献身」とか、
やっぱり読んでよかったーと思うことが多いので、
もう少し飽きるまでは、東野さんを読もうと思います^^*笑

遅くなりましたが、今年もよろしくお願いしますm(__)m

投稿: るい | 2009年1月28日 (水) 21:03

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赤い指講談社このアイテムの詳細を見る 今回は、東野圭吾『赤い指』を紹介します。本書は、現代の家庭問題、認知症、引きこもり、嫁姑問題、いじめ問題などを扱った社会派ミステリーといえるでしょう。 ある日庭に少女が死体として倒れていたという。これは、息子の仕業と見た父(昭夫)と母(八重子)は、何とかして隠ぺい工作をしようとする。それに立ち向かう刑事である加賀恭一郎が真相を暴く。ヒントは、赤い指なんだろうか。 家族のつながりというものの大事さがこの家族にはわからなかったのであろう。祖母(政恵)をこの家族... [続きを読む]

受信: 2009年2月 3日 (火) 20:06

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