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2008年11月14日 (金)

「笑わない数学者」 森博嗣

笑わない数学者―MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫) 笑わない数学者―MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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森さんの代表作の一つと言っていい作品です。
今まで数冊森ミステリィを読みましたが、
これが一番見事にミステリィで、森ワールドを感じるように思います。
一つ残念なのはトリックが前半で分かると言う点です。

萌絵と犀川は、数学者である天王寺博士の屋敷にやってきていた。
まるでスペースシャトルのような無機質なその屋敷の中央には、
プラネタリウムがあり、それを見ようと親戚一同が介している。
みな密やかに好奇心を抱いているのは、十二年前のこの場所で、
あるマジックが行われたからだった。豪邸の門前にある
巨大な石像を、天王寺博士が一瞬にして消してみせたのだ。
萌絵はマジックを信用していなかったが、実際に石像がなくなって
しまった庭を見て事実を認めざるを得なかった。
どうやって石像を消したのか…?謎が全員を支配した夜、
二人の人間が殺された。残されたマジックと、殺人の謎。
果たして二人はこのトリックを暴くことが出来るのか。

ネタばれ注意。読みたくない方は、読まないように。
唯一つ本当に残念なのは、前半部分でトリックが分かることです。
もしかしたら分からない人もいるかもしれませんが、
私が幼い頃いったことのあるプラネタリウムは、
天井ではなく、床が動くと言うものでした。
今回のトリックの、まるでそれです。だから、庭に石像がない、
と騒ぎ立てる登場人物たちが、やや滑稽に見えて、残念でした。
犀川とあろうものが、このような仕掛けならすぐ分かるだろう。
床が動いているのだし、犀川は建築の教授ではないか。
と、そこで随分がっかりしたのですが、読み進めてゆくうち、
この本では誰が犯人なのか、というもやもやした感じが、
とても上手かった。話の中で、「誰でも犯人になりえる」という
設定だったからか、入念に動機が練られており、どの人が犯人でも
おかしくないだろう、という見事な仕上がりだった。
いつもの森さんだと、動機が希薄過ぎて「誰も殺さなさそう」という
感じもするのだが(失礼)今回はどの人にも「人間味」があった。
やっぱり情愛と金、相続、というキーがよかったのでしょうかね。
それを考えると、森さんが人間の感情を、入念に書いてくれたら、
それはそれは鳥肌もののミステリィになるでしょうねぇ、とか。
だからスカイ・クロラはファンが多いんだと思いますよね。
無機質だけど感情の表現が美しいから。ま、ミステリィじゃないけど。
と、脱線しましたが、最後全てが解決するとき、その事件とは別に、
「観念」という偏りについて深く考えさせられ、とてもいい本です。
内と外、どちらが中で、どちらが外なのか。決めるのは
自分自身であり、その世界は果てがないのだと知ることが出来る。

★★★★☆*88

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コメント

こんばんは、るいさん。
なかなか面白かったです。
シリーズみたいなので、他のを読みたいと思いました。
床が回転するしかないとは思ったけど、
事件と結びつける事ができず、
犯人を知って驚きました。
犀川先生は博士に会い違和感を覚えていたんですね。
結局、あの屋敷にいたのはどちらなのでしょうか?
二人の性格の話が出ていたけど、もう一度読めば分かるのかな?

投稿: fumika | 2008年12月 7日 (日) 21:37

>fumikaさん

読み終わりましたか~。
そうそう、森さんの小説は、事件とは違ったところで、
衝撃的な事実が判明したりして、最後まで目が離せません。
ストーリー上、死んだはずの人、なんじゃないでしょうかね。
骨と言っても傍にあった免許証で判別してますし、わざとらしい。
けれども細部まで知りたい場合は、最初から読むといいかもですね。

シリーズ的には、
「すべてがFになる」→「冷たい密室と博士たち」→「笑わない数学者」
→「詩的私的ジャック」→「封印再度」→「幻惑の死と使途」
→「夏のレプリカ」→「今はもうない」→「数奇にして模型」
→「有限と微小のパン」 例外短編:「どちらかが魔女」
です。

きゃーいっぱいある、みたいな。笑
私もまだ四作目の「詩的私的ジャック」です。
ゆっくり楽しみましょう♪

投稿: るい | 2008年12月 9日 (火) 16:56

こんばんは、るいさん。
アドヴァイスありがとうございます。
なんだか理系で理解しにくくても、
そういう小説は好きなんです。
図書館で予約する新作の合間に読んで行きたいと思います。タイトルだけるみと「有限と微小のパン」が早く読みたい。
例外短編?あとでチェックしてみますね。

投稿: fumika | 2008年12月 9日 (火) 23:25

>fumikaさん

コメント遅くなってしまい申し訳ないです。涙
いつもありがとうございます。

理系って私も得意じゃないですが、
作者さんが上手く描いてくれていると、「へーなるほど」
と思えて、とても面白く読めますよね。
それと医療関係もしかり。海堂さんの本は、
医療関係の中では、なかなかそう言った面で楽しめます。
(ストーリー的にこれどうなの?って思うのもありますが。苦笑)

「有限と微小のパン」…私も気になって、
図書館で探してみたことがあったんですが、相当分厚いですよ。笑
いや、これもう上下二巻にしようよ、って感じです。
そう言えば森さんの本て、意地でも一巻で纏めてありますね。
ポリシーがあるんだろうか? ちょっと気になります。

私もゆっくり楽しみます。
fumikaさん良いお年をお迎え下さい。

投稿: るい | 2008年12月22日 (月) 15:59

復活してらしたんですね。
どうしたのかな、と思っておりました。

私のほうは、暑くて少し読書も停滞気味。

そんな中、この本は、楽しく読みました。
スカイクロラシリーズで、森さんを知ったので、
すごく意外。

それは素敵な裏切りで、知的で、緻密で
こちらまで真剣になりました。

確かに、トリック自体は前半で気づいてしまいますが、
それも気にならない面白さでした。


投稿: しぐ | 2009年8月22日 (土) 17:44

>しぐさん

めっきり涼しくなりましたね、こんにちわ。
本当にコメントが遅れてしまって申し訳ないです。

読書は再開されましたか?
最近ようやく気持ちに区切りがついて、
読書が満喫できるようになりました。

と、言ってもまだライブで各地を飛び回っておりますが(苦笑)

私もスカイクロラシリーズで知ったので、
ちょっと意外でした。
でも、なんだかスカイクロラを先に読んで得した気分です。
そんな気、少ししませんか?

>それは素敵な裏切りで、知的で、緻密で
>こちらまで真剣になりました。

そんな感じですよね。
まだまだS&Mシリーズは面白いですよ!
お楽しみに。

投稿: るい | 2009年9月25日 (金) 18:06

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