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2008年11月 6日 (木)

「疾風ガール」 誉田哲也

疾風ガール 疾風ガール

著者:誉田 哲也
販売元:新潮社
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知ってる人にはちょっとくどいかも知れないけど、
それを差し引いても面白かった。ただもう少しずれていると
よかったんだけどなぁ、とかぼやいてみたりして。
「ずれている」の意味は下の感想で述べます。誉田さん、初でした。

元バンドマンである祐司は今、小さな芸能プロダクションで働いていた。
業績は芳しくなく、先輩に怒られてばかりだ。
それと言うのも、以前一人の女の子をスカウトしたが全く売れず、
彼女の花の十代を無駄にしてしまった事を、ずっと悔やんでいたから。
祐司は軽い気持ちで、昔よしみのバンドハウスを訪れた。
ちょうど始まると言う「ペルソナ・パラノイア」のリハーサルを聴き、
言い表せぬ衝撃を受けた。一際目を引くギターの少女・夏美。
祐司は夏美を一人スカウトすることを試みるが、上手くはいかなかった。
そんな時、夏美が尊敬するバンドのボーカリストが自殺した。
バラバラになるメンバーと自殺の謎。夏美はどうなるのか…。

バンドの演奏風景の描写が、非常に上手い。最近私もライブハウスに
足しげく通っていると言う理由もあるのだが、
文章から雰囲気が漂ってくる、そんな感じがした。
多分バンドをやっていたのでは、と思うほどの緻密な機械説明。
そこにちょっとくどさを感じたが、知らない人が読むには
ちょうどいいかも知れない。内容はと言うと、
才能溢れる天真爛漫な少女の、立ち向かうべき現実、と言ったところ。
少女・夏美は天才であり、自らキラキラ輝く要素を持ち合わせている。
だから周りで努力をしながら必死になっている人間の苦労に、
気づけないのだ。突如メンバーに加わったと言うのに、
今までの曲にアレンジを加え、より質のよいものに塗り替えてゆく夏美。
けれども、作ったメンバーにしてみれば、それは積み上げてきた過去を、
呆気なく切り捨てられたも同然だったのだ。
夏美が一番尊敬していた人間の死。彼もまた夏美の輝きに惑い、
受け入れることの出来なかった人間の一人だった。
でもその事実を受け入れ、立ち上がらなければいけない。
その感情の描き方が、とても秀逸だった。
ただ、少し気になったのは、「尊敬=好き」という方程式は少し
違うのではないか、というもの。そこに恋愛感情はいらないように思う。
そうすれば、死んだときにもっとショックを受けると思うのだ。
それと、ズレについては、「疾風ガール」というタイトルに対して、
悩んでいる部分が多く前に進んでいないこと。
ページの大半が、死んでしまったカオルの謎に当てられていて、
バンド的向上心とかいうものの描きに欠ける。
もう少しその部分をさっくりとさせて、CDデビューまではいかない
ものの、走り続ける夏美を書いて欲しかったように思う。
楽しかった。誉田さん文章上手いです。好みかも。

★★★★☆*87

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