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2008年11月16日 (日)

「温かな手」 石持浅海

温かな手 温かな手

著者:石持 浅海
販売元:東京創元社
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この人本当に凄いんだな、と思った本。というか★を5つ付けるのは
何日ぶりだろうか(笑)前回は「269 08.03.11 「SP」 金城一紀」
これは小説じゃないし、小説に遡ると、去年の宮部さんまで、
まったく一つもないのだ。あぁ辛口すぎたかしら、と思いつつ。

「大地を歩む」
――あ、吸われている。
ムーちゃんは手を握って、僕のエネルギーを吸い取ってくれた。
目の前には友人の死体が横たわっていたが、
ムーちゃんが僕に触れたことにより、
パニック状態だった思考が元に戻ってゆくのを感じた。
今日みんなでイチゴ狩りに行くはずだった友人・国元は、
布団の中で冷たくなっている。強盗か?と疑ったメンバーだったが、
彼の部屋には現金五十万円が置かれたままだった。
しかし、そもそも何故五十万円もの大金があるのか?
謎に包まれた部屋の中ムーちゃんは語りだした。

石持さんは絶対的権力を持つ人間を書くのが上手い。
裏を返せば、そんな書き方しかできないのか?とか失礼にも
考えてしまうが、あまりまだ冊数を読んでいないので分からない。
しかし、この本は大変面白かった。何しろ、ミステリでありながら、
とても人間味があるのである。森さんとは正反対的な。
もちろん森さんは森さんで神ですから、面白いんですが。
特に動機、と言う点で、とても納得の行く「怒り」や「憎しみ」が
描かれていて、拍手を送りたい。特に好きだったのはこの、
「大地を歩む」という話だったのだが、ここではひょんなことから
受け取ってしまった大金の使い道を実に上手く描いている。
マイルをコツコツと貯めているような堅実な人間が、
突然大金を手にしてしまったときの、醜い醜態。
それを見たくなかった彼女。何だか物語を少し齧っただけでも、
とても納得してしまうような話なのである。
おまけに、人の死を目撃した人間はうろたえる。
それが知り合いであったり、さっきまで一緒にいた人間であったり
すると、それはそれは酷い衝撃を与えることだろう。
その無駄なエネルギーをギンちゃんやムーちゃんは吸い取ってくれる。
無駄な、と言うのも嫌な言い方だし、地球外生命体、
なんて馬鹿げた登場ではあるが、逆に言えば彼らがいなかれば、
人間の悲しみは満たされたままなのだ。冷静に推理をするため
というのもあるだろうけれど、それよりも私は人間の無情を感じた。
最後の締めくくりを読めばそれがとてもよく分かるだろう。
ミステリと、人間味・感情の融合。人は人が死んで悲しいと思う。
それを理解しながら推理する、考えられた素晴らしい小説でした。
褒めすぎ?褒めすぎかな。最近ミステリに嵌りすぎて。笑
でも、本当に面白かった。石持さん短編の方が好きかも。

★★★★★*93

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