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2008年10月 7日 (火)

「門」 夏目漱石

門 (新潮文庫) 門 (新潮文庫)

著者:夏目 漱石
販売元:新潮社
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折角だから『三四郎』と『それから』を先に読めばよかった、と後悔。
夏目さんは中学高校と読み続けていたので、大抵の本は読んで
いるはずなのだが、『門』のラストのあたりは、はて、
どんな終わりだったかしら、といつも忘れてしまう。

宗助と御米は横丁の隅でひっそりと暮らしていた。
自ら何をするでもなく、ただ淡々と過ぎてゆく毎日。
しかし、今がここにあり、こうして細君が隣にいるだけで、
宗助は全ての自分の人生が尽きていると思うのだった。
自分たちは罪人である。町を転々として、ようやく落ち着いた東京の
隅であったが、風の噂を聞くなり不安になる。
全ては神経衰弱のせいであろうが、その神経衰弱の原因は、
自らと御米の過ちであった。誰も門は開けてはくれぬ。
入るなら自分で空けろと、人は言うのである。

あぁ、読み終わってから本当に後悔。なんで『三四郎』から
読まなかったんだろう……、まぁ、いいか過ぎたことだ。後で読もう。
この本は、夏目さんのいいところである、過去回想が『こころ』同様、
とてもいい感じに盛り込まれている。もちろん『こころ』の
右に出るものはないと思うのだが、この始めのページと、
それから最後のページを捲るときのページの重みの違いに、
いつも心が震えるのである。序盤、家の中でごろごろするばかりで、
どうにも役に立ちそうにない宗助は、ただのぐうたら人間に見える。
しかし読み進めるにつれ、彼のイメージはは略奪愛という
重苦しい罪悪感に苛まれる惨めな男へと変わってゆく。
さらには、そんな罪を犯す前の、至って紳士な彼の姿を見ると、
あの最初のシーンで縁側に蹲る彼の様子は、とても心苦しい。
気障で洒落た好青年が、神経衰弱のボロボロの男に成長する。
それは成長、と言っては可笑しいのかもしれないが、
その変化をもたらす御米との愛が、果たして本当に良かったのか、
とどうしても疑わずにはいられないのだった。
子どもの生まれない二人に下る天罰は、まだあるのだろうか?
宗教に縋りつつも拭えないその罪悪感は、
きっと死ぬまで二人の心に刻まれ続けるだろう。
二人は逃げに逃げ続けて、けれどふと疲れて立ち止まっては、
また歩き出し、その永遠に続くかと思われる懺悔の日々に
押し潰されて、いつしか自ら死を選ぶような気がしてならない。
この本は、そんな夫婦の姿を克明に描いている。
もしかしたら、この物語に続きはないのかもしれない、と。

★★★★☆*88

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