« 「99%の誘拐」 岡嶋二人 | トップページ | 「門」 夏目漱石 »

2008年10月 6日 (月)

「扉は閉ざされたまま」 石持浅海

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル) 扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

著者:石持 浅海
販売元:祥伝社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


この本も気になっていたので読んでみました。
と言うか、本当に最近ミステリしか読んでいないような……。
まぁいいや、面白かったので。予想ですが、たぶんこの物語は、
後ろから考えられたのだろうと思った。みんなそう思うのでは?

伏見亮輔は新山和弘を殺し、完璧な密室を作り上げた。
まずバッグから新山の着替えを取り出し、眼鏡と時計を外す。
それから睡眠薬で眠っている新山を担ぎ、顔をお湯を張った風呂に沈め、
心臓の音を止めてやった。あとは服を脱がして裸にし、
湯船につからせる。これで「薬を飲んだ後入浴しようとして、
そのまま湯船で眠って溺れた男」が完成した。
伏見はドアにロックが掛かるよう工夫して廊下に出た。
伏見の行動は完璧だと思われた。
しかし、それは「彼女」が語り始めるまでのことだった。

この本の魅力はスタイリッシュでありながら、
実は恐ろしいほどに緻密に練られた会話によって事件が扇動されている
というところだろう。事件はなんてことはない。ページを捲ると
同時に主人公が殺人を犯すシーンが出てくるので、犯人はばればれ。
その代わりに、主人公が「犯行を隠す技」を楽しむことが出来るのだ。
雰囲気的に言うと、「古畑任三郎」系の小説と言っていい。
一つ違うのは、その騙し合いが、死体が発見されてから行われるの
ではなく、このタイトルにもあるように「扉は閉ざされたまま」
会話の中だけで、推理が進んでいくところだ。それだけを考えると
「花の下にて春死なむ」なんかもこれに近いかもしれない。が、
それはさておき、舌を巻くのはやはり会話と行動の穴である。
この話で一番好感を持てるのは、殺し方がとても原始的である、
という点である。一番怪しまれずに、頑張れば事故死を装える。
それと同時に人間の行動も至って「普通に」行われているように
見せかけながら、実は漏れがある、例えば目が悪い新山は、
風呂に入るとき眼鏡を枕元には置かない、とか、ふと「普通の」人間が
見落としてしまいがちな事を、正しく描いているので、
よりスリリングな推理合戦を楽しむことが出来るのだ。
唯一つ残念だったのは、「もしかして中で倒れてるんじゃない?」
となった時、みんながいきなり窓を壊そうと言い始めたところ。
今までぐずぐずしていたのに、ひらりと翻り、おや?と思った。
それと、殺人の動機も、ちょっとイマイチだったようにも。
しかし、優佳のような人間がいたら、殺人をしようなんて、
私だったら思えませんけどねぇ、とか。笑 だって怖すぎますよ。
まぁ、楽しかったです、総合的に。上に裁かれず優佳に裁かれる
ラストも個人的に好きでした。むしろ彼女は神なのか、とか。推理のね。

★★★★☆*88

|

« 「99%の誘拐」 岡嶋二人 | トップページ | 「門」 夏目漱石 »

コメント

初めまして。
ミステリー処【love knot】の翠香と申します。
私もこの本、気になっていたので、読んでみました。
なんかもう、優佳が凄過ぎましたね(色んな意味で)。
伏見がウィスキーを出しっぱなしにしているのには気になっていたのですが、
しっかり優佳に指摘されてましたね(^^;)

小説と映画のレビュー、たくさん書かれているのですね。
色々参考にさせていただきますね♪
よろしくお願いします。

投稿: 翠香 | 2009年5月 6日 (水) 00:36

>翠香さん

ずいぶんコメントが遅れてしまい申し訳ありませんでした;
後ほど遊びにうかがいますね。

私も石持さん好きですが、
超人的な優佳の登場には笑うばかりですね。
面白いんですが、全てが優佳に支配されているようで、
ちょっと残念な要素にもなりかねない感じで。
たしかWOWOWのドラマになってましたね。
他の本も読んでみようかなぁ。

ミステリーはいいですよね、
最近は森さんや西澤さんに注目中です!
私も参考にさせて頂きますね。

投稿: るい | 2009年9月17日 (木) 18:11

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/24329182

この記事へのトラックバック一覧です: 「扉は閉ざされたまま」 石持浅海:

» 『扉は閉ざされたまま』 石持浅海 [【徒然なるままに・・・】]
こういったタイプのミステリーを「倒叙ミステリー」と呼ぶんだそうです。 先ず殺人ありき。 読者には最初に、犯人が誰で、どうやって殺したのかがわかっています。 後は犯行を隠匿しようとした犯人と、それを見破ろうとする探偵との知恵比べ、がメインとなります。 物語は大学時代のサークル仲間が集まって、同窓会が開かれるところから始まります。 メンバーは伏見亮輔、伏見と動機の安東章吾、一学年先輩の上田五月、一学年後輩の新山和宏と大倉礼子、二学年後輩の石丸孝平、そして同窓生ではないものの、当時から付き合... [続きを読む]

受信: 2008年10月10日 (金) 22:00

« 「99%の誘拐」 岡嶋二人 | トップページ | 「門」 夏目漱石 »