« 「門」 夏目漱石 | トップページ | 「冷たい密室と博士たち」 森博嗣 »

2008年10月 8日 (水)

「ファースト・プライオリティー」 山本文緒

ファースト・プライオリティー (角川文庫) ファースト・プライオリティー (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


31人分の31歳の物語。山本さんは短編の方が好きだな。
SSだったので、ちょこちょこ読んで二ヶ月くらい鞄に入っていた
かもしれない。そう言えば、私は31という数字がとても好きである。
ご覧の通り、このブログも31……理由を誰かに話したことはない。

「旅」
私は週末になると旅に出る。別に目的の場所はないから、
帰り道、金券ショップを覗いては、安くいけそうな場所を
探してそのチケットを買って、一人で旅行するのだ。
今日は鹿児島行きのチケットが安かった。
私は早速それを購入して、「出張のついでに」と言いながら、
宿に向う。値段の割りにいい宿で、一人のんびりするのだった。
31、その微妙な歳に何を思うのか。

一番この話が良かったのだが、いい話は他にもたくさんあった。
「嗜好品」や「空」も私の好みだった。まぁ、「嗜好品」は
麻薬の話であるし「空」どっちつかずな女の話なのだが、
そのSSとして区切られた一瞬の虚しさや想いが、
この話の中には絶妙に詰まっている気がするのだった。
全ての主人公が31歳であると、私は中盤になってようやく気づいた。
未だ到達していないその年齢に、一体どんな意味があるのだろうか、
と未知数な期待が膨らむ。その頃までには、願わくば子どもがいると
いいなぁ、と思うのだが、まぁそれは運というものだろうか。
私は最近31歳の頃の母を思う。また、31歳の頃の祖母を思う。
もちろん父だって祖父だってそうなのだろうが、
子どもを生み育てる彼女たちは、果たして何を思っていたのだろうと、
今頃真剣に考えるのである。私を育てるために犠牲にしたその時間が、
今の私にもゆくゆく訪れるのだろうと思うと、何だか奇妙な気持ちに
なるのだった。と、本の話とずれてしまいましたが、
いろんな意味で31と言う年齢は考えさせられる歳なのだと思う。
30を越え、もう20代には戻れないと言う強かな思いも生まれ、
子孫を残すべきかの選択が待ち受けているのである。
いつしか訪れるその歳までに、私は一体何が出来るだろうと、
本当に、今更考えた本だった。そう思わせる31歳の胸の空く思いが、
詰まった本なのである。もちろん31を越えた人間でも存分に
楽しめる話である。私もその頃にもまた読みたいと思う。

★★★★☆*87

|

« 「門」 夏目漱石 | トップページ | 「冷たい密室と博士たち」 森博嗣 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/24377241

この記事へのトラックバック一覧です: 「ファースト・プライオリティー」 山本文緒:

« 「門」 夏目漱石 | トップページ | 「冷たい密室と博士たち」 森博嗣 »