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2008年9月28日 (日)

「容疑者Xの献身」 東野圭吾

容疑者Xの献身 容疑者Xの献身

著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
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随分前に読みかけて、放置していました。今回は一気読みして
泣いてしまいました、不覚にも。でも、まぁ映画は観ないと思う。
ドラマもドラマでよかったんだけど、どうも俗っぽくてなぁ、と。
直木賞ですよ、これで。東野さん、してやったりと思っただろうと。

靖子は元夫である富樫の事を絞殺してしまった。
金をせびりに来る恐怖から必死に逃げていたのに、
富樫はまたもや居場所を発見し、靖子の前に現れたのだった。
怯える娘も気がかりであったから、娘が富樫に手を挙げた瞬間、
靖子の恐怖心は殺意に変わった。
今殺さなければ、私たちは一生付きまとわれるに決まっている……。
しかし、動かなくなった富樫の姿を見て、靖子は絶望感を覚えた。
自首をするしかない。娘のことを案じつつそう思い始めたとき、
玄関のチャイムが鳴った。鳴り止まぬ鼓動を抑えつつ、
靖子が出ると、そこには石神という隣人が立っていた。
「僕に出来ることがあったら言ってください」

「予知夢」「ガリレオ」ときて、これが一番いいのは確か。
結末もありきたりと言ったら、ありきたりな感じもしなくもないのだが、
その真実を知ったとき、ほとんどの方が「あぁ」とため息をつくだろう。
真実の、深い愛。そのために起こした殺人事件。
結末を書いてしまうともったいないので、是非最後まで読んでほしい。
ただ一つ残念だったのは、その深い愛が、最後の数行で済まされている
と言う点である。もちろん、その素っ気無さ、さり気なさが、
むしろ深い愛のあらわれなのだ、それでしかあらわせないのだ
と言われそうであるのだが、人を殺したから、愛……とは、
若干なりにくい気がするのだった。
もちろん、結果として愛していたから、人を殺した、
と言うのであれば、その深さを強調できるけれど、
この小説では石神が靖子を愛している様子が書かれていない。
書かれすぎても問題であるが、この小説にはちっとも、
と言っていいくらい書かれていないのだった。
美人で、気になる女性がいる。だから自分の格好を気にし始めた。
それは分かるのだが、そこからいきなり、だから殺した、
となると「?」という感じなのである。ちょっとストーカーまがい
まではいかなくても、彼女を想っている様子が描かれていたら、
最後の部分で、もっとぐっと来ただろうと思う。
しかしよかった。ミステリを読むと、大抵犯人が途中で分かってしまい
うんざりするのであるが、この本は最初の数ページで犯人が分かる。
だからある意味安心して読むことが出来、最後の結末では、
その、いわゆる愛の深さにため息をついた。願わくば、上記に書いた、
少しばかり足りない愛情の表現を求めたいところ。
この本を東野さんは実に楽しそうに書いている。
賞を取った時、それはそれはしてやったり、と思っただろうと、
私は思っているのですが。どうでしょうね。

★★★★☆*90

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