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2008年9月23日 (火)

「ダウン・ツ・ヘヴン」 森博嗣

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven

著者:森 博嗣
販売元:中央公論新社
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面白かった。読み始めるまでちょっと億劫だったのですが、
主人公がクサナギスイトだと分かったときから、
楽しくて仕方がなかった。段々に、彼女は女の子になっている気がする。
それはわざとなのだろうけれども、その成長を思うと苦しくなる。

そいつは子どもじゃなかった。二対五だった状勢は、
一対一になって、僕は最後の一機を打ち落とした。
弾がどこかに当たったかもしれない。
薄れゆく記憶の中、基地に辿り着くと僕は気を失った。
次に目が覚めたとき、そこは病院で僕は白い空間に包まれていた。
首を怪我している。自分としてはすぐにでも基地へ戻りたかったが、
そう簡単にはいかなかった。仕方なく煙草を吸いに屋上へ行く。
そこで僕は一人の少年に会った。カンナミというその少年は、
なぜか僕の心を惹きつけ、その心中の何かを揺さぶり続ける。

彼女の心は成長していると思った。それは分別を身につけ、
大人になってゆく子どものように、したたかに。
けれども、彼女はキルドレなのだ。子どものままなのに、
次第に気づかされる大人の汚い世界に、草薙は怒りを隠しえない。
大人だったら、我慢しなくてはいけないのか?
そんなことは間違っている。けれども多くの大人は知らん顔をして、
いたいけな子どもをショウに使うのだ。
戦争とは、こんなものだ。怖いだろう。だから抵抗してはいけない。
無言の鎮圧を、キルドレの命と引き換えに世界に知らしめる大人たち。
こんな世界間違っているだろう? 草薙はけれどそこで大人になる。
ティーチャに会うために。その歪んだ愛が、とても苦しかった。
草薙は、傷を負ってから次第に「大人」になってゆく。
いや、大人になる、と言うよりも、キルドレの心を忘れてゆくのだ。
ティーチャを愛してしまったがために。勿論自分では、
愛だとは気づかずにいるけれど、彼女が見る世界は、
とても親しみに満ち始めて、それが愛なのだと読者は気づかされる。
笹倉がいなくて寂しいと思う。そんなことは今までなかったはずだ。
今日か、明日か、明後日か。いつ死んでもおかしくない戦闘に
毎日出かけると言うのに、何かを求めることは虚しいと割り切って
いたからだろう。けれど草薙は求めてしまう。傍にいることを。
そして、一方では、ティーチャに自分を殺して欲しいと願う。
「クレイジィだ」ティーチャが言った言葉に、
何がおかしいか分からない草薙。その二つの心の共存が、
とても痛ましく、残酷であると思った。森さんの書き味は、
さっぱりしていて、だけどほんの少し見せる温かさが、
私を強力に惹き付けているように思う。続きが読みたいな。後ほど。

★★★★☆*89

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