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2008年9月27日 (土)

「神の子どもたちはみな踊る」 村上春樹

神の子どもたちはみな踊る 神の子どもたちはみな踊る

著者:村上 春樹
販売元:新潮社
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春樹さんも普通の人間なのだ、と思った短編小説。
随分前に読んであったのですが、再読しました。阪神淡路大震災が
あった後で書かれた小説なので、どこか「頑張って生きてください」感
が漂う小説が多い。ちょっとそれって普通だよね、みたいな。

「蜂蜜パイ」
淳平は沙羅に自分で作った童話を読み聞かせていた。
まさきちという小熊が、蜂蜜を街で売ると言う話。
淳平が作ったその話は即席であったから、至るところでボロが出て、
沙羅のたくさんの質問に根気よく答えなくてはいけなかった。
「どうしてまさきちは蜂蜜を蜂蜜パイにして売らないの」
ある日淳平は沙羅と小夜子と三人で動物園に行った。
動物園にいた熊は、まさきちの友達だと沙羅に説明してやった。
二人は仲良く蜂蜜パイを作って売ったとさ、めでたしめでたし。
そんな風に、淳平は小夜子と高槻との仲が上手くいけばいいと思った。

春樹さんらしくない話が、ある意味多いかもしれない、
と思われるこの短編小説集。全ての物語が地震に関係しているのだが、
地震について書かれていればいいでしょ、くらいのぞんざいな扱いに
思えてならない。きちんと地震を扱っているのは
「かえるくん、東京を救う」くらいじゃないでしょうか。
しかもかなり笑い狙い。しかし、この本を総合的に見て、
地震直後、心に傷を負った人が読んだとしたら、
それはそれは元気が出たのではないかと素直に思う。
だって、あの村上春樹が、災害にあった自分たちを励ますために、
「今を生きろ」とこんな本を書いてくれたのだから。
「UFO釧路に降りる」や「アイロンのある風景」なんかは、
まさにそんな感じだった。起きてしまったことは引き返せないが、
大切なのは今であり、頑張りどころだよ、
と春樹さんが必死に呼びかけているのだ。こんな本他にあるはずない。
だから、過ぎてしまった今、この本を読むと、
なんか春樹さん普通の人だね、とちょっと思ったりしたのだった。
ちょっと変人とまでは行かないけど、普通と違うイメージが、
この本を読むと壊れるように思う。それがいいのか、悪いのかは、
読む人しだいだと思うのだが。私は「蜂蜜パイ」が好きだった。
真っ直ぐに愛を望む淳平の様子が、あまり他では見られない、
春樹さんの表現のような気がしてならなかった。

★★★☆☆*85

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◎0636 『神の子どもたちはみな踊る』 >村上春樹  背表紙あらすじ:1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共....... [続きを読む]

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