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2008年9月

2008年9月30日 (火)

■雑談:2008年9月に読んだ本

■2008年9月に読んだ本(9冊)

9.14 ★★☆☆☆*68 「感染」 仙川環
9.15 ★★★☆☆*84 「転々」 藤田宜永
9.19 ★★★★☆*88 「深追い」 横山秀夫
9.23 ★★★★☆*89 「ダウン・ツ・ヘヴン」 森博嗣
9.26 ★★★☆☆*84 「風味絶佳」 山田詠美
9.27 ★★★☆☆*85 「神の子どもたちはみな踊る」 村上春樹
9.28 ★★★★☆*90 「容疑者Xの献身」 東野圭吾
9.29 ★★☆☆☆*65 「蹴りたい背中」 綿矢りさ
9.30 ★★★☆☆*86 「すべてがFになる」 森博嗣

■2008年9月に観た映画(1本)

9.20 ★★★☆☆*85 「アキレスと亀」

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「すべてがFになる」 森博嗣

すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫) すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


とりあえず言えるのは、これがデビュー作だなんて凄すぎる。です。
まず何と言うか、森さんには読者を引き込む力があると思う。
それとまぁ今回のトリック範囲が、私の職業と合致していたため、
なるほどなるほど納得しながら面白いこと考えるな、と思いました。

工学部教授である犀川は、ゼミ生と恩師の娘である萌絵をつれて、
孤島に夏休みキャンプを行いにやってきていた。
日照りも強く酷暑だったが、そもそもこの孤島にやってきたのは、
島の所有者である真賀田博士という天才の研究所があるからだった。
あわよくば真賀田博士に会えるかもしれない……。
しかし、仮病を使いようやく研究所に潜り込んだ犀川と萌絵に
待ち受けていたのは、奇怪な密室殺人事件であった。
完全電子プログラミングされ、セキュリティが万全な研究所で
起きた劣悪な事件……果たして二人はその謎を解くことが出来るのか。

この本の一番注目すべきは、何と言ってもこれが十年前に
書かれた本だということである。1998年……windows98が
発売されてから、電子機器、特にパソコンは目覚しい発展を遂げている。
裏を返せば、少し前まで新しいと思っていたことも、
一瞬で過去の産物になってしまうという恐ろしい側面があるのだ。
だから今最先端だと思って書いたとしても、
数年たったら当たり前のことになっているだろうし、
そもそもそんな話むず痒くて読みたくならないだろう。
しかし、この本はその盲点を鋭く突いている。
16進法の65536が限界値だという話についても、
EXCEL2007になるまでは、解消されなかった難問であったし、
今でもそのジレンマに煩わされているシステムはたくさんある
はずなのだ。それを十年も前から見越して書かれたこの小説は、
今もって新鮮な課題として読むことが出来るだろう。
ただし、現在は改良が加えられたシステムになっているから、
強固なシステムになっている場合1分のずれすらも起きないだろうし、
監視カメラなどは、直接衛星から時間を拾うので、
コンマ単位で修正されてしまい、このトリックは成立しないだろう。
でも、面白いのだ。システムがさっぱりの人が読んだら「?」
と言う感じなのかもしれないが、そういう仕事をしている人間から
すると、確かにそんなことも出来てしまうかもしれない、
と舌を巻くのである。キャラクターは犀川のイメージがちょっと
掴みにくい気もしなくもない。けれども、これだけ人数が出てきて
いるのに、読み間違えないのは書き分けが上手いのかもしれない。
そうそう、あと死体を見てもみんなあまり驚かない。ミステリィ。笑
殺人の動機もよくわからない。全ては謎解きための小説である。
ただ一つ気に食わないのは、名前が皆難しい「ミステリィ」にありがち。
そのうちイニシャル殺人とかで使われるのでは……?と
嫌なお節介を焼いてしまい、ちょっと憂鬱である。続きが読みたい。

★★★☆☆*86

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2008年9月29日 (月)

「蹴りたい背中」 綿矢りさ

蹴りたい背中 蹴りたい背中

著者:綿矢 りさ
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


芥川賞ってこんな軽かったのか? ちょっと飾った言葉で
書き連ねれば、取れてしまう賞らしい。この本で取れて、
なぜ島本理生の「ナラタージュ」で取れないのか謎である。
と、書いてしまうほど、面白くない。

わたしはクラスに馴染めていない。
それは自分でも気づいているし、別に撤回する気も起きやしない。
ただ、同じようにハブられている男子、にな川の存在が、
ちょっとばかり気になった。にな川は生物の授業中、
女性向けファッション雑誌を捲っている。オリチャンという、
ファッションモデルの熱狂的な”ファン”であるにな川は、
わたしの見る限り、変人だった。部屋にはオリチャングッズの
詰まった衣装ケースがあり、その中を見たわたしは得体の知れない
興奮を覚えたのだった。にな川はオリチャン以外を見ていない。
そんな狭い世界にしか目を向けないその背中を蹴ってやりたいと思った。

非常に微妙。芥川賞をかなり疑った。
へぇこれで取れちゃうんだ、みたいな。確かに、文章は、
全然書いていない人よりは上手いだろう。でも無理やり編んだような、
比喩の多用で、「これだけ比喩を使ってるんだから、凄いでしょ?」
みたいな、意図が滲み出ているようで、好感を持てなかった。
主人公たちの雰囲気から高校生活を思い浮かべられない。
ストーリもよく分からない。勿論「背中を蹴りたい」という理由は
わかる。狭い世界しか見れなかった自分をにな川に重ねて、
その恥ずかしさを蹴り飛ばしてやりたいのだ。
けれども、ただそれだけを言いたいがために、
こんな回りくどくよく分からない文章しかかけないのか?
と思うと、賞には値しないように個人的には思うのだった。
いや、もしかしたら、私が分かっていないだけで、
本当はもっと言いたい何かがあったのかもしれないが、
これだけのボリュームで、言いたいことを伝えられないのなら、
それはやっぱり表現が下手なのだと、言わざるを得ないのではないか。
と思ってならない。これに比べてしまえば、「夢を与える」の
方が、ちょっとは勉強した感が漂っていて、いいと思う。
まぁしかしあの破滅への一途を辿る物語は、
綿矢さんが書くべきストーリーではないと、いろいろ書かれていますが、
それを差し引いても、この本で賞をとるよりはマシだと、私は思う。

★★☆☆☆*65

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2008年9月28日 (日)

「容疑者Xの献身」 東野圭吾

容疑者Xの献身 容疑者Xの献身

著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する


随分前に読みかけて、放置していました。今回は一気読みして
泣いてしまいました、不覚にも。でも、まぁ映画は観ないと思う。
ドラマもドラマでよかったんだけど、どうも俗っぽくてなぁ、と。
直木賞ですよ、これで。東野さん、してやったりと思っただろうと。

靖子は元夫である富樫の事を絞殺してしまった。
金をせびりに来る恐怖から必死に逃げていたのに、
富樫はまたもや居場所を発見し、靖子の前に現れたのだった。
怯える娘も気がかりであったから、娘が富樫に手を挙げた瞬間、
靖子の恐怖心は殺意に変わった。
今殺さなければ、私たちは一生付きまとわれるに決まっている……。
しかし、動かなくなった富樫の姿を見て、靖子は絶望感を覚えた。
自首をするしかない。娘のことを案じつつそう思い始めたとき、
玄関のチャイムが鳴った。鳴り止まぬ鼓動を抑えつつ、
靖子が出ると、そこには石神という隣人が立っていた。
「僕に出来ることがあったら言ってください」

「予知夢」「ガリレオ」ときて、これが一番いいのは確か。
結末もありきたりと言ったら、ありきたりな感じもしなくもないのだが、
その真実を知ったとき、ほとんどの方が「あぁ」とため息をつくだろう。
真実の、深い愛。そのために起こした殺人事件。
結末を書いてしまうともったいないので、是非最後まで読んでほしい。
ただ一つ残念だったのは、その深い愛が、最後の数行で済まされている
と言う点である。もちろん、その素っ気無さ、さり気なさが、
むしろ深い愛のあらわれなのだ、それでしかあらわせないのだ
と言われそうであるのだが、人を殺したから、愛……とは、
若干なりにくい気がするのだった。
もちろん、結果として愛していたから、人を殺した、
と言うのであれば、その深さを強調できるけれど、
この小説では石神が靖子を愛している様子が書かれていない。
書かれすぎても問題であるが、この小説にはちっとも、
と言っていいくらい書かれていないのだった。
美人で、気になる女性がいる。だから自分の格好を気にし始めた。
それは分かるのだが、そこからいきなり、だから殺した、
となると「?」という感じなのである。ちょっとストーカーまがい
まではいかなくても、彼女を想っている様子が描かれていたら、
最後の部分で、もっとぐっと来ただろうと思う。
しかしよかった。ミステリを読むと、大抵犯人が途中で分かってしまい
うんざりするのであるが、この本は最初の数ページで犯人が分かる。
だからある意味安心して読むことが出来、最後の結末では、
その、いわゆる愛の深さにため息をついた。願わくば、上記に書いた、
少しばかり足りない愛情の表現を求めたいところ。
この本を東野さんは実に楽しそうに書いている。
賞を取った時、それはそれはしてやったり、と思っただろうと、
私は思っているのですが。どうでしょうね。

★★★★☆*90

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2008年9月27日 (土)

「神の子どもたちはみな踊る」 村上春樹

神の子どもたちはみな踊る 神の子どもたちはみな踊る

著者:村上 春樹
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


春樹さんも普通の人間なのだ、と思った短編小説。
随分前に読んであったのですが、再読しました。阪神淡路大震災が
あった後で書かれた小説なので、どこか「頑張って生きてください」感
が漂う小説が多い。ちょっとそれって普通だよね、みたいな。

「蜂蜜パイ」
淳平は沙羅に自分で作った童話を読み聞かせていた。
まさきちという小熊が、蜂蜜を街で売ると言う話。
淳平が作ったその話は即席であったから、至るところでボロが出て、
沙羅のたくさんの質問に根気よく答えなくてはいけなかった。
「どうしてまさきちは蜂蜜を蜂蜜パイにして売らないの」
ある日淳平は沙羅と小夜子と三人で動物園に行った。
動物園にいた熊は、まさきちの友達だと沙羅に説明してやった。
二人は仲良く蜂蜜パイを作って売ったとさ、めでたしめでたし。
そんな風に、淳平は小夜子と高槻との仲が上手くいけばいいと思った。

春樹さんらしくない話が、ある意味多いかもしれない、
と思われるこの短編小説集。全ての物語が地震に関係しているのだが、
地震について書かれていればいいでしょ、くらいのぞんざいな扱いに
思えてならない。きちんと地震を扱っているのは
「かえるくん、東京を救う」くらいじゃないでしょうか。
しかもかなり笑い狙い。しかし、この本を総合的に見て、
地震直後、心に傷を負った人が読んだとしたら、
それはそれは元気が出たのではないかと素直に思う。
だって、あの村上春樹が、災害にあった自分たちを励ますために、
「今を生きろ」とこんな本を書いてくれたのだから。
「UFO釧路に降りる」や「アイロンのある風景」なんかは、
まさにそんな感じだった。起きてしまったことは引き返せないが、
大切なのは今であり、頑張りどころだよ、
と春樹さんが必死に呼びかけているのだ。こんな本他にあるはずない。
だから、過ぎてしまった今、この本を読むと、
なんか春樹さん普通の人だね、とちょっと思ったりしたのだった。
ちょっと変人とまでは行かないけど、普通と違うイメージが、
この本を読むと壊れるように思う。それがいいのか、悪いのかは、
読む人しだいだと思うのだが。私は「蜂蜜パイ」が好きだった。
真っ直ぐに愛を望む淳平の様子が、あまり他では見られない、
春樹さんの表現のような気がしてならなかった。

★★★☆☆*85

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2008年9月26日 (金)

「風味絶佳」 山田詠美

風味絶佳 風味絶佳

著者:山田 詠美
販売元:文藝春秋
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たぶん山田さん初。どうも読んでいて気分が悪くなってしまった。
と言うのも、全部恋愛ものだったので…。決して山田さんが
悪いわけではありません。全てはこの私の体質が…。
しかし、映画にするほどのものなのか?と言うところには疑問が。

「風味絶佳」
志郎はポケットからミルクキャラメルを取り出し、それを舐める。
それを見ている者は、今時珍しいねぇとか、懐かしいと言って、
彼のことを改まって見てくるのだった。
そもそもミルクキャラメルは、志郎の祖母がよく舐める菓子だった。
アメリカかぶれで、自分のことを「グランマ」と呼べ、
と言う祖母は、皆から犬猿されている。けれど幼い頃から傍にいた
志郎は、彼女をどこか嫌いになれないのだった。
失恋した。そんなときに舐めるキャラメルはなぜか祖母を思い出させる。

失恋のミルクキャラメルが、なぜか避けたがっていた祖母の味に思え、
心にしみてくる。その様子は祖母と孫、という関係も味を出して、
とてもいいコンビネーションではないか、と思う。
女の子にふられた志郎は、なぜ自分がふられたのか分からず、
でも祖母はその理由をしっかりと知っている。
けれど、長年生きてきた経験から、失恋したときの切なさや、
虚しさや心細さを知っているから、そんな時志郎に強く当たったりは
しないのだ。まるでミルクキャラメルのようにしっとりと、
優しく包んでくれている。そんな様子がよかった。
しかし、これは確か柳楽くんと沢尻とで、
映画になっていたではありませんか。この本は短編集なのだが、
なんだか、そこまで魅力的に思わなかったかも、と言うのが一つ。
その理由は、祖母と孫の関係を重視するあまり、
その恋についての描写が少なすぎるからだった。
なぜ志郎がその子を好きになったのか分からないし、
好きから恋に発展する微妙なところが描かれていない。
どこか祖母と似てるから、のように進んでいき、
祖母を好きになってくれたから、好き、とかよく分からない理由が
見え隠れしているようで、私は好きになれなかった。
まぁ若者の、好きか嫌いかよく分からない状態で始まる恋、
という表現だと言われれば、そうかもしれないとも思う。
その他全編恋愛もの。コメントは差し控えます。

★★★☆☆*84

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2008年9月25日 (木)

■雑談:無駄に忙しい

近頃、会社のサーバーがダウンしたり、
学校が始まったり、で、なんやかんややってました。

気づいたら今日給料日やん!
嬉しいやら、悲しいやら。

これはもう買いたかった本を買い占めるしかない。
まずは角田さんの『八日目の蝉』かな。
図書館でせっかく順番回ってきたのに(半年待ち)
引越しやなんやのごたごたで借りにも行けず。

まったく。
私の読書生活までもが脅かされている今日この頃です。

あぁ、誰かお薦めの作家さんいましたら、
書き込んでいただけると嬉しいです。
無記名可。

そのうちレビュー増えます。

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2008年9月23日 (火)

「ダウン・ツ・ヘヴン」 森博嗣

ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven ダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heaven

著者:森 博嗣
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


面白かった。読み始めるまでちょっと億劫だったのですが、
主人公がクサナギスイトだと分かったときから、
楽しくて仕方がなかった。段々に、彼女は女の子になっている気がする。
それはわざとなのだろうけれども、その成長を思うと苦しくなる。

そいつは子どもじゃなかった。二対五だった状勢は、
一対一になって、僕は最後の一機を打ち落とした。
弾がどこかに当たったかもしれない。
薄れゆく記憶の中、基地に辿り着くと僕は気を失った。
次に目が覚めたとき、そこは病院で僕は白い空間に包まれていた。
首を怪我している。自分としてはすぐにでも基地へ戻りたかったが、
そう簡単にはいかなかった。仕方なく煙草を吸いに屋上へ行く。
そこで僕は一人の少年に会った。カンナミというその少年は、
なぜか僕の心を惹きつけ、その心中の何かを揺さぶり続ける。

彼女の心は成長していると思った。それは分別を身につけ、
大人になってゆく子どものように、したたかに。
けれども、彼女はキルドレなのだ。子どものままなのに、
次第に気づかされる大人の汚い世界に、草薙は怒りを隠しえない。
大人だったら、我慢しなくてはいけないのか?
そんなことは間違っている。けれども多くの大人は知らん顔をして、
いたいけな子どもをショウに使うのだ。
戦争とは、こんなものだ。怖いだろう。だから抵抗してはいけない。
無言の鎮圧を、キルドレの命と引き換えに世界に知らしめる大人たち。
こんな世界間違っているだろう? 草薙はけれどそこで大人になる。
ティーチャに会うために。その歪んだ愛が、とても苦しかった。
草薙は、傷を負ってから次第に「大人」になってゆく。
いや、大人になる、と言うよりも、キルドレの心を忘れてゆくのだ。
ティーチャを愛してしまったがために。勿論自分では、
愛だとは気づかずにいるけれど、彼女が見る世界は、
とても親しみに満ち始めて、それが愛なのだと読者は気づかされる。
笹倉がいなくて寂しいと思う。そんなことは今までなかったはずだ。
今日か、明日か、明後日か。いつ死んでもおかしくない戦闘に
毎日出かけると言うのに、何かを求めることは虚しいと割り切って
いたからだろう。けれど草薙は求めてしまう。傍にいることを。
そして、一方では、ティーチャに自分を殺して欲しいと願う。
「クレイジィだ」ティーチャが言った言葉に、
何がおかしいか分からない草薙。その二つの心の共存が、
とても痛ましく、残酷であると思った。森さんの書き味は、
さっぱりしていて、だけどほんの少し見せる温かさが、
私を強力に惹き付けているように思う。続きが読みたいな。後ほど。

★★★★☆*89

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2008年9月20日 (土)

【映画】アキレスと亀

200806250
うーん人による……、と言うのも、この映画は「北野武」の考え方が、
好きであるか、普通であるか、嫌いであるか、の差で、
随分感想の違う映画だと思う。なんたって、脚本、監督、編集、主演、
ぜーんぶ北野武なんだから、嫌いだったら好きになれるわけないよと。

裕福な家庭で育てられた真知寿は、画家になることを夢見ていた。
いや、人よりも絵が好きだったばかりに、周りの人間から、
画家になるように夢を持たされたのだった。
しかし、じきに父親の会社が倒産し家族はバラバラになってしまう。
父親は愛人と心中し、周りの人間が次々に死んでいっても、
それでも真知寿は絵を描き続けた。青年になり、結婚しても、
子どもが生まれても、描き続けた。でも、売れなかった。
売れなかったから、何でもした。精神が尋常ではなくなった。
でも、真知寿にそれ以外の道はなかった。芸術とは、そういうものなのだ。

上にも書いたけど、北野武が嫌いな人は見ない方がいい。
この作品はかれの要素がふんだんに惜しげもなく使われている作品
であるからだ。人によったら馬鹿馬鹿しいと思うだろうし、
意味わかんないと思う人もいるだろう。この映画では、
「芸術」というもののあり方を、物凄く極端に描いている。
一つの芸術が生まれるためには、何十人という人の犠牲が必要だし、
本当のそれを生み出すためには精神が狂うという状況が、
必要不可欠なのである。しかし、そんな芸術が本当に認められるのは、
その人が死んだり、すっかり忘れ去れた頃の話だ。
現代の人間が、要求する実用的な芸術は、誰だって作れる、
量産可能な程度のものでしかないのだから。
この映画では、面白いぐらいに、人がゴロゴロ死んでゆく。
倒産に絶望した父を始め、芸術に没頭するあまり死んでゆく友人たち。
人が狂うためには、大切だった何かが失われる、
という精神においての重大な欠損が必要なのである。
恵まれていた多くのものを次々に失ってゆく真知寿は、
その苦痛と引き換えに「芸術」を得てゆくのだが、でも、
それは決して認められることのない才能との葛藤でもあるのだ。
この映画の感動は、妻(樋口加南子)が最後に言う一言に
あると言っていいだろう。「帰ろう」その一言が、真知寿を許し、
失ったものが大きすぎたあまり、大人になれなかった人間に対する、
救いであると言える。もしも、この映画に北野風の滑稽さがなかったら、
どうなのだろうと少し思う。強烈な個性のあるその「笑い」が
なかったら、きっとこの映画は万人受けしたはずだ。
シリアスに、願わくば「誰もしらない」のようだったとしたら。
でも、そしたらこの映画は北野武が作る意味がなくなってしまうのだ。
だから、これは武の「芸術」である。認められるその日は、
もしかしたら彼が死んだ後なのかもしれないと思うのがいいだろう。

★★★☆☆*85

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2008年9月19日 (金)

「深追い」 横山秀夫

深追い (新潮文庫 よ 28-1) 深追い (新潮文庫 よ 28-1)

著者:横山 秀夫
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


本当に久しぶり横山さんを読んだ。このかたっくるしい感じ、大好き。
横山さんが書くと何で全部事件は事件らしく見えるんだろうと、
毎度不思議でなりません。この本は短編集ですが、今までの
短編集の中では一番いいかもしれない。

「人ごと」
ある日とある交番の前で粗末な財布が拾われた。
中には少しの小銭と、フラワーショップの会員証が入っている。
「草花博士」と呼ばれる西脇はそれを見て、
確かそのフラワーショップでは、会員名を記録していることを
思い出したのだった。粗末な財布から、貧乏で哀れな老人を
連想した西脇は興味を持ち店を尋ねてみることにした。
財布の持ち主は多々良という老人。けれども多々良は裕福な男だった。

財布だけで貧乏な老人と判断するのかよく分かりませんでしたが、
この話はラストがとてもよかったです。
こんな老人がなぜ高層マンションに住むことにしたのか、
その理由が、花とかけられて、娘たちを見守るためなのだ、
と知れたとき、それを全然予想していなかったからか、
とても心にしみたのだった。けれども、やっぱり
なぜ多々良は財布を落としてまで警察に自分を知らせたかったのか。
もしくは、もしも花好きな人に拾ってもらえなかったらどうするのか、
等々、微妙にこじ付けがましいところはあるのだが。
それを差し引いても、今回は読んでよかったかもと思った。
その他は、警察内部のバツの悪い話、と言う感じ。
だけどそれが悪いのではなくて、警察内部にいながら、
その「悪」に気づき、これじゃいけない、と決意して、
自ら足を踏み外してみる、という感じ。悪くないです。
個人的には横山さんの本は、長編の方が好きなんですけどね。
私はやっぱりミステリが好きなようです。
最近あんまりいい本に巡り合っていないのだけど、
だれか、どうぞお薦めを…と言いつつ、私に読ませると
ひどいこと書きますからね、すみません。
でもちゃんとしっかり読んでいるんですけども。

★★★★☆*88

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2008年9月16日 (火)

9/16つばき@代官山UNIT『ライド3』

9/16つばき@代官山UNIT『ライド3』

■セットリスト

 覚めた生活
 スタイル
 雨音
 光
 カーテン
 サヨナラ
 真夜中3時の商店街
 バタフライ
 亡霊ダンス
 今日も明日も

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2008年9月15日 (月)

「転々」 藤田宜永

転々 (新潮文庫) 転々 (新潮文庫)

著者:藤田 宜永
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


この本も映画→原作でした。つーか映画、原作と全然違うんですけど。
いいのか?これで。まぁ映画は映画で「時効警察」ファンには、
かなりたまらない感じになってましたが、原作はその雰囲気は皆無。
おまけにストリップショーって…むしろオダギリさんやって欲しかった。笑

大学生活をあと一年残し、僕は借金取りに追われていた。
と、言うのもアルバイト先であるパチンコ屋で出会った美鈴―
ストリップショーの女優に一目惚れしてしまったからだった。
彼女のお店に入り浸るうち、ついにはその店でチケット切りの
バイトを始めた。少しずつ彼女との時間が増え、ホテルを利用する度、
僕の借金は増えに増えていったのだった。そんな時借金取りはやって来た。
「俺の散歩に付き合ったら、100万やる。借金は帳消しだ」
怪しげな取引を持ちかけられ、しかし金のない僕は、
散歩に付き合うしかなかった。東京をぶらぶら、
何の当てもなく歩く東京散歩。果たしてそこの目的は……

ストリップショーって…と、内容に絶句する本です。
いや、楽しいのです。でも最初映画を観てしまっているので、
私の頭の中では「僕」がオダギリジョーだったわけですが、
その主人公は、ストリップショーの女に惚れ込んでしまい、
毎日彼女の裸を見に、店に入り浸るという設定なのです。
うわぁ、オダギリジョーが?みたいな。笑 いや、違うんですが。
そんな感じで読んでいたので、何だか違った面白みもありました。
映画では「時効警察」の監督さんによって、見事に、
「時効警察風転々」になっていたので、それはそれで、
まったりのんびりしてて良かったんですが、転々する理由が、
イマイチよく分からなかったので、それに比べたら、
原作の方がまぁ、良かったのではないかと思います。
一番良かったのが、両親に捨てられ、養夫婦もあまりよろしくない
環境で育ちつつも、それほどすれずに育った青年。
平気な顔をして、恋をして、しかしどこかで寂しさを匂わせるような、
そんな男を描けていたような気がする。ラストは、
実母がべらべらとしゃべり、かなり興ざめな感じなのだが、
どうにか息子を引きとめようとする母を、やんわりとかわして、
去ってゆく姿は、でもきっとまた会いに行くのではないか、
と思わせてくれ、いい雰囲気が出ていた。
願わくば「時効警察」でありつつも、ストリップショーも兼ねて、
くれたら、かなり良かったと思うのですがね。

★★★☆☆*84

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2008年9月14日 (日)

「感染」 仙川環

感染 (小学館文庫) 感染 (小学館文庫)

著者:仙川 環
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する


「ししゃも」?のとき気になっていて、読んでみようかと思っていた
作家さんでした。が、完璧に読む本を間違えました…。
以前にも書いたかと思いますが、ヒット作から読まないと、
その後違う本を読もうと思えないタチなので。

葉月は、ようやく幸せを手に入れたと思っていた。
夫はバツイチではあるが、優秀な医者である啓介と、
結婚できたことによって、これから明るい未来が来るだろう。
しかし、そう思っていたのもつかの間、次第に熱は薄れ、
夫婦の距離は離れてしまっていた。自分ではやはり啓介の妻は務まらない。
そんなある日葉月は、夫と前妻との子どもが誘拐されたことを知った。
身代金の要求をされ、その際に葉月は警察に通報をしてしまい、
その結果子どもは焼死体で発見されることとなった。
責任を感じつつ、理由を探るうち別の事件との関連性を見つけ…。

一つまず始めに思ったのは、葉月に救いがなさ過ぎる。
人間そんなもんよと言われてしまえば、「まぁそうかもしんないけど」
って感じですが、バツイチの男と結婚して、前妻とは不仲。
その上夫とも不仲になりつつあり、前妻との子どもは誘拐され、
挙句の果てには、まるで葉月のせいで死んだかのように言われている。
こんな状況になったとしたら、私はとてもじゃないが、
事件を解決しようとか、そんな気は起きない気がする。
まぁ、小説は、小説ですから、そんな設定でも、話は進むわけで。
ストーリー自体は、たまに特番でやる二時間ドラマと言う感じで。
何だよ、その例え、と言われそうですが、火曜サスペンスほど、
どろどろしてはいないけれども、医療についてや警察についての、
子細がなかなか盛り込まれていて、エンターテイメント、という感じの本。
読んでから気づきましたが、この本デビュー作だそうで、
それにしては、確かに面白かったのかも、と思わなくもない。
出来れば、起承転結の配分が上手くなるともう少しスムーズに、
読めるし、設定をもっと重大事項から緩和してもらえると、
重大事件のほうに目を向けられるのになぁ、と。
他の本も後ほど、読んでみようかな。是非ヒット作を。

★★☆☆☆*68

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2008年9月11日 (木)

■雑談:増えたページ

下記にあります過去の記事をアップしました。
→右バーにありますカテゴリーよりお選び頂き、
お時間のある方はご覧いただければと思います。

ちなみに小説はまだアップすべき記事がありますので、
おいおい、後ほどアップしていきたいと思います。

それと、余談ですが、←左バーの下に、
【写真】を載せるようにしました。
携帯で撮ったものを、気ままに載せようと思いますので、
気がついたときにでも見ていただければと思います。

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*小説+その他
 「パレード」 吉田修一 (再読)
 「ナ・バ・テア」 森博嗣
 「ほんたにちゃん」 本谷有希子
 「スカイ・クロラ」 森博嗣
 「疾走 下」 重松清

*映画・DVD
 【映画】セックス・アンド・ザ・シティ
 【映画】スカイ・クロラ
 【映画】百万円と苦虫女

*つばき
 9/7つばき@『ベリテンライブ』in HEAVEN'S ROCK宇都宮
 8/29つばき@『松健アニキ祭』in神戸STAR CLUB
 8/27つばき@『松健アニキ祭』in大分T.O.P.S
 8/26つばき@『松健アニキ祭』in松山サロンキティ
 8/23つばき@新宿TOWERRECORDS DVD発売記念インストアライブ
 8/8つばき@HEAVEN'S ROCKさいたま新都心
 8/1つばき@新宿レッドクロス The 5th Anniversary
 7/11つばき@柏ZaX TOWERRECORDS柏店PRESENTS
 6/22つばき@高円寺CLUB LINER ワンライブ『3×3』
 6/13つばき@長野LIVE HOUSE J
 5/24つばき@『赤イ彗星』inSHIBUYA-AX
 5/21つばき@高円寺CLUB LINER『弾き語りたい夜もある』 
 4/18つばき@下北沢CLUBQワンマンLIVE
 4/12つばき@渋谷TOWERRECORDS覚醒ワールド発売記念インストア

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2008年9月 7日 (日)

9/7つばき@『ベリテンライブ』in HEAVEN'S ROCK宇都宮

A20080907

9/7つばき@『ベリテンライブ』in HEAVEN'S ROCK宇都宮

■セットリスト

 覚めた生活
 めまい
 光
 タブレット
 亡霊ダンス
 冬の話

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2008年9月 2日 (火)

■雑談:サボりすぎでした

こんにちわ~久しぶりに管理画面を開きました、るいです。

来てくださっている方がいらっしゃいましたら、
大変申し訳ないことをしておりました。
すみません。

いやはやちょっと見ない間に、
カウンタが恐ろしいことになっていました。
夏休みって凄いな。(そこかよ…!)

私も、夏休みを満喫してしまったりして、
結果こんなことになりました。

まぁその間も、ぼちぼち本を読み、
ぼちぼち映画を観ておりましたので、
後ほど追いかけ更新いたします。

古い記事が突然増えているかもしれませんが、
「今更かよ」とつっこみを入れながら、
さらりとご覧いただければと思います。

さて、記事を書きますか~。

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