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2008年9月30日 (火)

「すべてがFになる」 森博嗣

すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫) すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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とりあえず言えるのは、これがデビュー作だなんて凄すぎる。です。
まず何と言うか、森さんには読者を引き込む力があると思う。
それとまぁ今回のトリック範囲が、私の職業と合致していたため、
なるほどなるほど納得しながら面白いこと考えるな、と思いました。

工学部教授である犀川は、ゼミ生と恩師の娘である萌絵をつれて、
孤島に夏休みキャンプを行いにやってきていた。
日照りも強く酷暑だったが、そもそもこの孤島にやってきたのは、
島の所有者である真賀田博士という天才の研究所があるからだった。
あわよくば真賀田博士に会えるかもしれない……。
しかし、仮病を使いようやく研究所に潜り込んだ犀川と萌絵に
待ち受けていたのは、奇怪な密室殺人事件であった。
完全電子プログラミングされ、セキュリティが万全な研究所で
起きた劣悪な事件……果たして二人はその謎を解くことが出来るのか。

この本の一番注目すべきは、何と言ってもこれが十年前に
書かれた本だということである。1998年……windows98が
発売されてから、電子機器、特にパソコンは目覚しい発展を遂げている。
裏を返せば、少し前まで新しいと思っていたことも、
一瞬で過去の産物になってしまうという恐ろしい側面があるのだ。
だから今最先端だと思って書いたとしても、
数年たったら当たり前のことになっているだろうし、
そもそもそんな話むず痒くて読みたくならないだろう。
しかし、この本はその盲点を鋭く突いている。
16進法の65536が限界値だという話についても、
EXCEL2007になるまでは、解消されなかった難問であったし、
今でもそのジレンマに煩わされているシステムはたくさんある
はずなのだ。それを十年も前から見越して書かれたこの小説は、
今もって新鮮な課題として読むことが出来るだろう。
ただし、現在は改良が加えられたシステムになっているから、
強固なシステムになっている場合1分のずれすらも起きないだろうし、
監視カメラなどは、直接衛星から時間を拾うので、
コンマ単位で修正されてしまい、このトリックは成立しないだろう。
でも、面白いのだ。システムがさっぱりの人が読んだら「?」
と言う感じなのかもしれないが、そういう仕事をしている人間から
すると、確かにそんなことも出来てしまうかもしれない、
と舌を巻くのである。キャラクターは犀川のイメージがちょっと
掴みにくい気もしなくもない。けれども、これだけ人数が出てきて
いるのに、読み間違えないのは書き分けが上手いのかもしれない。
そうそう、あと死体を見てもみんなあまり驚かない。ミステリィ。笑
殺人の動機もよくわからない。全ては謎解きための小説である。
ただ一つ気に食わないのは、名前が皆難しい「ミステリィ」にありがち。
そのうちイニシャル殺人とかで使われるのでは……?と
嫌なお節介を焼いてしまい、ちょっと憂鬱である。続きが読みたい。

★★★☆☆*86

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