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2008年8月30日 (土)

「ナ・バ・テア」 森博嗣

ナ・バ・テア ナ・バ・テア

著者:森 博嗣
販売元:中央公論新社
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「スカイ・クロラ」がなかなか面白かったので、
続きを読みたくて久しぶりに連作に手を出していた。
漫画は終わりが惜しいのに、小説は何故か途中でくじける時がある。
それを克服したいな、と思いつつこの本を手に取った。

僕は空を飛ぶことが好きだ。それは飛ぶことが好きというよりも、
飛んでいるときにこそ生を感じられるような不思議な感じだ。
僕たちは空でしか死ぬことができないと言うのに。
僕たちに課せられた命令は、やはり極秘任務だった。
戦闘機に乗り空を飛び、相手が現れたら場合によっては打ち落とす。
落ちてゆく彼らが見せる、一筋の紫色の煙を見ると、
きっと彼らは喜んでいるだろうと僕は思うのだった。
僕は落ちてゆく一人の男の顔を見たことがある。
子どもでない彼は僕を見て笑った。そこが僕たちとの違いだった。

この本を読んでいると、大人とか、子どもとか、男とか、女、
ということがどうでも良く感じてくる。一体それらを区別している
ものは何なのだろうか。小説のように主人公が「僕」と言えば、
読者はそれを男だと思い錯覚するように、それは酷く不確かだ。
この主人公は自分を「僕」と名乗り、けれど草薙水素という女である。
大人になれない子どもがいるように、女が僕と名乗ろうが、
何も問題はないのである。だからそんな世界に住む僕は
「恋」のような感情に、戸惑いを見せてしまうのだ。
男と女とはなにか、妊娠すると言うのは、どういうことなのか。
そこには例えば愛がなかったとしても、生まれる何かがあるのである。
飛ぶ、というだけの駒として生きる子どもたちの、
もがきと、それでも何も変わらない周囲の環境。
しかし、彼らが子孫を残し、新たな、また何かが変わった世界を、
と求めてしまうのは、間違いなのだろうか?
人間は罪を背負わなければならない。
このような世界しか残しえなかったという現実に、
これから来るであろう何も変われない新たな日々に、
懺悔しなくてはならないのだから。…と、難しいことを書いたが、
「スカイ・クロラ」よりも面白い。謎解きではないが、
この森さんの世界に少しずつ踏み込んでゆく感触が楽しくなってくる。
空を飛ぶのが楽しいと思う。例え今日今ここで、
死ななくてはいけないとしても、汚れた地面に足を着くくらいなら、
雲の上をゆきたい。読み終る頃には、いつしかそんな事を考えている。

★★★★☆*88

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コメント

スカイクロラより、こっちの方が好きかも。
軽くて冷たい感じが、いっそう強く感じた。

女の子は、特殊な大人を求め
男の子は、普通の大人を求める?

やっぱり、新たな生命に対する姿勢が違うってことなのかな。


投稿: しぐ | 2009年5月 2日 (土) 16:16

>しぐさん

長らくお待たせしてすみませんでした;;
ようやく復活できそうです。
本当に遅くなってしまってすみませんが、
ぼちぼちコメント返させていただきますね。

私も軽くて冷たい感じがして、こちらの方が好きでした。
なんていうか、最後に読むとしっくり来るように、
やっぱり「スカイクロラ」は書かれていると思います。

私もやはり特殊な大人を求めているのかもしれませんね。
自分は何者になれるのか、っていつも思います。
まぁ背負うものの重さが、男と女では違うのかもしれませんが……。

投稿: るい | 2009年9月17日 (木) 17:59

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