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2008年7月 3日 (木)

「花が咲く頃いた君と」 豊島ミホ

花が咲く頃いた君と 花が咲く頃いた君と

著者:豊島 ミホ
販売元:双葉社
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最近豊島さんの本読んでもガッカリするばかりだったので、
今回の本はなかなか楽しめた方だと思いました。
いい感じの、願わくば春頃に読みたかった本でした。ところで、
そろそろ中高校生を抜け出してもいいんじゃないかと。まぁ大学生もあるが。

『椿の葉に雪の積もる音がする』
私の家は両親と弟、それからおじいちゃんの五人家族だ。
他の家の子と比べたら、家計は潤っているし、夫婦仲も円満。
けれど最近堅い事を言うおじいちゃんは一人、馴染めなくて寂しそうだ。
これは秘密だけど、私は眠れない夜おじいちゃんの部屋へ行く。
そっと布団に潜り込ませてもらって、おじいちゃんの言う
「椿の葉に雪の積もる音」を探すうち、いつの間にか眠っている。
おじいちゃんは幼い頃から一緒に見ていた椿全集をくれると言ったけど、
私は何も考えずに断ってしまった。そんな渋い本、私には似合わない。
次の日の朝、おじいちゃんは倒れていて、私は事の重大さを知った。

よかったにはよかったんだけど、ちょっとネタ切れ感の漂う短編集。
前回の『リリイの籠』何かよりは数倍いいのだが、
それでも残しておいた最後の手段……というような雰囲気がしてならない。
いや、もちろん勝手な私の想像なので、違っていたら申し訳ないのだが。
この本は中学生の主人公たちの、青春な物語を描いている。
中でも私は一番好きだったのは『椿の葉に雪の積もる音がする』である。
まず、おじいちゃんと孫、という設定に弱いのだけど、
(父と息子もしかり)その微妙に世代の違う蟠りというのを、
上手く描いていたように思う。おじいちゃんに話しかけたいが、
共通の話題が見つからない。おじいちゃんのくれるものは、
嫌いじゃないけれど自分には合わない気がする。
そういった中、失くして気付く大切な存在は、
決してあせる事無く主人公の中に大きな花として形を残す。
「椿の葉に雪の積もる音がする」その一言に詰まる、
不安な夜の、また不安の夜に得た安らぎの、祖父という微妙な存在の、
大きさと広さと、深さと温かさが、耳に残るようである。
その他の作品、『コスモスと逃亡者』なんかは、
何故こんな設定?という思いもなくはないが、
安心し、最後までどっしりと腰をすえて読める短編集であった。
まぁ、『椿の葉~』以外は、そんなにテーマも深くないので、
そこが残念といっちゃ残念かも知れないのですけども。

★★★★☆*85

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コメント

私もようやく読んだけど、これは久々に良かったよね(笑)
最近本当にぐだぐだ感があって、どうしたんだ豊島さん・・と思っていたから、「椿の葉に~」は読んでいて目頭が熱くなってしまったよ。
おじいちゃんと孫っていう構図がたまらなく泣けてくるね。

でも、最新刊の「カウントダウンノベルス」も読んで思ったけど、色々な年齢層の主人公の話を書いてみて欲しいね。
今後に期待しよう。

投稿: すきま風 | 2008年7月 5日 (土) 18:37

>すーちゃん

よかったはよかったんだけども、
何だか「檸檬のころ」の感動はない…とか堅いことを言ってみる。
あの時は、連続短編集だったからかもしれないけど、
キャラクターがしっかりたっていた気もするし、
涙なしで読めない話もあった気がする。
でもこの本にはそれがない。

「椿の葉に~」はよかったね。これは設定勝ちだな。
あとこの言葉のセンスも、田舎を知っている人間って感じがしたね(笑)

「カウントダウン~」は音楽の話なんだっけ?
そうだねぇ、もう二十台も後半?になりますからね、
ちょっと大人なキャラクターを書いてほしい今日この頃です。
本当、今後に期待、と言うことで!

投稿: るい | 2008年7月 9日 (水) 11:15

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» 花が咲く頃いた君と [No-music.No-life]
ひまわりで遊び、コスモスに恋をし、椿に涙して、桜の微笑みに頬笑む。目を閉じ、耳を澄ませば、可憐な花の囁きが聞こえる。静かに。だけど力強く生きる。そんな決意が聞こえる珠玉の短編集。 −−− 豊島ミホさんの本です。 結局サイン本ないから買っていなく、図書館で借りて・・今更ながらに読みました。 = やるじゃんか!豊島さん! = と思わず豊島さんが近くにいたら、バーンと肩を叩いてしまいたくなるような、いや、久しぶりに豊島さんの本で熱くなりました。 ここ最近・..... [続きを読む]

受信: 2008年7月 5日 (土) 18:34

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