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2008年6月29日 (日)

「ロック母」 角田光代

ロック母 ロック母

著者:角田 光代
販売元:講談社
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この本は全ての短編を読んでこそ意味がある。
それ一つずつでは伝わらない何かが、この本には棲んでいるのだ。
デビュー当時から、先日の角田さんまで…紆余曲折をしながら、
今に至る経緯が、強烈に伝わってくるのだった。

『ロック母』
あんなに嫌悪していた島を抜け出して余年……
突き出した腹を抱え、私は再びその地を踏みしめた。
父親になるはずの男には、早々に堕胎を勧められ、
けれど私はそうしないままだらりとするうち、ここにやって来ていた。
久しぶりに会う母に、この状況をどう説明しようか。
悩みながらの再会で、私は母の異変に気づいた。
引き篭もっている――父がそう説明したのとは異なり、
ロックバンドの音楽を防護壁のように大音量に鳴らし続ける母がいた。

始めに言っておくと、どの小説も月並みだと思う。
勿論月並みと言うのは、角田作品の中で、という意味だけど、
どの話もどこかで読んだことのあるようで、
失礼ながら言わせて貰うと突き抜けた良作はないと思う。
けれど、書かれた年代の違うそれぞれの物語が、
一つの本として纏められたとき、こんなにも「差」というか、
「異」を見られるものなのだ、というところに驚きを覚えた。
私も結構な量の角田さんの本を読んできたけれど、
こんなにも変化を感じた本は初めてだった。
と、まぁあとがきでもご本人が「初めてこんなに年代が違う話を
一緒に収録した」と言っているので、当たり前なのだが。
そう言った意味で、この本はとても角田光代という人の遍歴を
知る上でよいと思う。ただし、内容に期待はしてはいけないけれど。
今回の本は多分未収録作品を片っ端から詰め込んだ?
と思われるため、コンセプトが統一されていなくて、
放火の話であったりとか、孤島でさらに殻に閉じこもってしまった
母の話であったりとか、色々なバリエーションを楽しめる。
あとがきには賞を受賞したときの話も載っており
(というかあとがきが一番楽しいのだが…)
なるほどこのような作品がね、と頷くことができる。

★★★☆☆*85

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