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2008年5月 8日 (木)

「名もなき毒」 宮部みゆき

名もなき毒 名もなき毒

著者:宮部 みゆき
販売元:幻冬舎
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この本、去年の夏ごろに予約したんだけど、ようやく回ってきた。
凄いなぁ…宮部さん。いつもながらその筆力に乾杯です。
今回はたぶん「誰か」の続編?みたいなのだが、気付くのが遅く
その「誰か」はまだ回ってきていないので、先に読んでしまった。残念。

今多コンツェルンの広報部で働くわたしのところでは、
現在一人の女性をめぐって問題が起きていた。
アルバイトで雇っていた原田いずみという女性が、
どうも履歴や学歴を詐称して採用されていたと分かったのだ。
たとえ詐称していたとしても、使いものになるならまだいい、
しかし原田いずみはいつまで経っても要領が悪く、
ついには注意されることに逆切れをする始末。
困り果てたわたしが辿り着いたのは、以前同じく詐欺被害にあった
会社の社長だった。いい人を紹介するよ、といい教えてもらった男、
私立探偵の元で、わたしは一人の女の子と出合った。
数年前、コンビニなどの飲料に青酸カリなどの毒物が
混入される事件が続発した、その遺族であった。

今回も安心して読むことが出来た。さすが宮部さんである。
しかし、続編、となるとある程度設定が決まっているからか、
筆が軽快すぎるような部分があって、そこがあまり私は好きではない。
逆にそこがいいのだ、という人のほうが多い気がするので、
強い事は言えないのだが、私は堅苦しい宮部さんの文章を愛している。
特に「理由」なんかの堅苦しさは本当、大好きなのだ。
と、そのへんにしておき、今回は現代社会に蔓延る様々な「毒」を
テーマに話が構成されている。シックハウス症候群であったり、
いじめであったり、土壌汚染であったり、貧乏ゆえに歪む心であったり。
その様々な毒物が世の中の見えない「名もなき毒」であると。
その関係性が、読んでゆくとなるほどね、と思うことばかりで、
あととち狂った女の登場が、いい感じに話を乱してくれて、
「あぁこいつここで出てくるか!」とイラッとするタイミングを、
見事に再現していたように思う。確かにいそうな気もする、あんな女。
一つ残念に思ったのは、主人公が、会社の一社員で、
しかも広報…という、あんまり権力がないような部署にいる
というところだろうか。確かに入り婿ということで、
地位は高いのだが、低い…という微妙なバランスの男、
という魅力もあるのだが、事件に首を突っ込む辺りで、
「こんなことに首を突っ込むのはやめようと思いつつも…」
みたいな言い訳の文章が何回か出てくるので、
こんな事を書かなくて済む位の人間設定にしたらどうだろうか、と思った。
まぁ、突っ込みたくないのに、性分で突っ込んでしまう、
という情けない男は見事に描けているんだけど、好きになれなかった。
そうそう、語りが一人称であることにも関係があるかもしれない。
全ては好みなんですけどね。宮部さんなので、面白くないわけはない。
私は三人称で、尚且つ堅苦しい宮部さんものが好きです。

★★★★☆*86

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