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2008年4月15日 (火)

「慟哭」 貫井徳郎

慟哭 (創元推理文庫) 慟哭 (創元推理文庫)

著者:貫井 徳郎
販売元:東京創元社
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初、貫井さんでした。非常に読みにくい。
なぜなら400Pちょっとの話だというのに、場面が69あるのだ。
くるくると場面が入れ替わるので、疲れる、と言うのが一言目。
もう一言目は、犯人が半ばで分かってしまうのが難点。

幼い少女ばかりを狙った痛ましい連続殺人事件が発生した。
捜査本部が設置され、その指揮として就いたのは佐伯だった。
若くして捜査一課長に就任した佐伯であったが、
署内ではキャリア組みの成り上がりだと批判を受けており、
評判は芳しいものではなかった。おまけに妻との仲も悪く、
愛人との逢瀬を繰り返す日々を繰り返していた。
捜査は難航し、被害者は増えるばかり…ついには犯人から
手紙が届くという新たな展開を見せたが、しかし解決には到らなかった。
そうこうしているうち、狙われたのは佐伯の娘恵理子であった。

一体何に比重をおきたい小説なのかよく分からなかった。
娘を殺される事によって、狂ってしまった優秀な男。
その描写と、それから新興宗教に溺れてゆく様子は、
とても力を入れているのは分かるのだが、そもそもの背景描写が希薄である。
例えば、なぜ佐伯は結婚前に妻が上司の娘だと気付かなかったのか。
同僚から持ちかけられた話であったなら、
きっと噂になるはずである。それさえもないのは、
余程鈍感なのか、それとも結婚詐欺かのどちらかだろう。
絵美を愛していたのは確かである、とされているので、
前者になるのだろうか?よくわからない。
よって佐伯が娘をどのように愛しているのかがさらによくわからない。
父親は多分に漏れず娘を愛す、という偏見は間違いであるように思う。
それから、捜査の展開がかなり杜撰である。本来こんなもんなのか?
本当を知らないので偉そうな事は言えないが、
奥の手として取ってあるはずのビニール袋がさっぱり出てこない。
それに冷静沈着だったはずの佐伯が「犯人を挑発してみよう」
となるのも何だかおかしな感じもしないでもなかった。
そもそも事件が三ヶ月にも長引いているのに、
ずっとマスコミが騒ぎ尽くしているのもおかしなもので。
この事件の合間にも、絶対に違う事件が起き、存在が薄れるはずである。
それから、これは仕方のないことかもしれないのだが、と断っておくが、
新興宗教の描写がとても陳腐である。いや、でもこれは、
実際の活動がそうなのだと思うので、結果そうなるのは否めない。
けれども、黒魔術にはまる大人たちの描写は何だか想像しがたく、
一歩引いて読んでしまった感がある。それに多分、貫井さん自身も、
たぶん宗教にそれほど関わっているわけではなく、
本を読んで書いた感が漂っているのが残念である。
昨日読んだ「イニシエーション・ラブ」同じく、
最後に「実はこの人だったんですよ」的なラストだったので、
少々読み飽きた感が…とこれは個人的な感想ですが。
デビュー作とのことで、これだけ書けたらそりゃ賞を貰えるでしょう。
しかし、万人に対し面白いかどうかは別ですけどね。
同じ雰囲気でいくと雫井さんの「犯人に告ぐ」の方がスリリングで○。

★★★☆☆*78

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