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2008年4月22日 (火)

「私の男」 桜庭一樹

私の男 私の男

著者:桜庭 一樹
販売元:文藝春秋
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うわぁ…気持ち悪…。と多分正常な神経の人は中盤思うでしょう。
まぁよかったはよかったんですけど、個人的に。
あの「赤朽葉」よりは数倍よかったですよ、はい。でもしかし、
これで直木賞かーみたいな。三浦さんの時もそうだったけど。

私は、淳悟から離れることが出来ない。
彼は「お父さん」で「私の男」で、いつも湿った雨の匂いがした。
震災で両親と兄弟を失い、一人ぼっちになった私を、
淳悟はまるで犬を飼うのかのように育ててくれた。
私は彼から何か言いようのない安心感と、少しの恐怖心、
それから嫌悪感と、親愛の情を得た。
私は今日美郎と結婚する。ようやく淳悟と離れる時がくる。
そうしなければならない時がやってきたのに、
しかし私は淳悟を求めている。
淳悟…それは秘密を共有した「私の男」の名である。

桜庭さん、まだまだ成長するように思うんですけどね、
そう思いませんか?とか偉そうなことを言ってみたりして。
うん、でもまぁ三浦さんの時よりは、個人的には
納得してる気がするんですが、それでも「うーん?」という
疑問符が消えないところである。以下ネタばれご注意。
比較すると「赤朽葉」より数倍素晴らしいと思いますので、
いや、本当去年それで受賞してたら、私は卓袱台返しますよ、本当。
で、内容はと言うと、過去に逆行する形式となっており、
最後の章にたどり着くことで、ようやく「私の男」が
一体どんな男なのかを知ることが出来る。
最初のシーンでは「私の男」は義父であり、
もしや恋愛関係にあるのか?という所から始まる。
そして最後は、愛情の欠損した男が、実の娘を姦淫している、
というとても異様な真実を見せつけられ、終わる。
愛しそうに支えあう二人が、実はそんな関係であると、
徐々に書き表されてゆく様子は、何だか寒気が走った。
寒気が走ったと言うことは、きっと桜庭さんの狙い通りであろう。
ただ二つほど私が残念に思ったことがある。
一つ目は情景描写。後半の舞台の殆どは、北海道なのだが、
ただ単に「流氷が」とか固有名詞が書いてあるだけで、
雰囲気が全然寒そうじゃない点。寒いところに住んだことの
ある人なら、きっともう少しリアルに書けたと思う。
二つ目は主人公・花が大人になり始め、淳悟から離れたい、
と少しでも思い始めるその描写が欲しかった。
この本を後ろの章から読んでゆけば分かるが、
他の感情はしっかり描かれているのに、この離れたいと
思い始めたきっかけみたいなものがさっぱり描かれていない。
「親子だから離れる時が来る」みたいな曖昧な感じで。
でも、別にここまで狂った親子なら、一生一緒にいても
いいんじゃないの?とか一方で思ってしまうので、
やっぱりこの描写は必要だと思うんですよね、個人的に。
と、以上です。気持ち悪いけど読み終わって「あぁ」と、
深いため息をつける小説です。実はサイン本だったりして、
宝物です。直木賞だし、初版だし。笑

★★★★☆*89

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