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2008年3月 7日 (金)

「ナラタージュ」 島本理生

ナラタージュ ナラタージュ

著者:島本 理生
販売元:角川書店
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読み終わって、読んでよかったと思った本でした。
もう少しコンパクトに出来たんじゃなかろうか…と思わなくもないですが。
ところで、とってもメガヒットした割には、
そこまで心が揺さぶられなかったのは何故だろう。会話のせいかな。

卒業式の日、去り際に先生は私にキスをした。
二人は決して恋人ではなかったのに、
キスをしてしまった事によって、私たちはこの思いに気づいてしまった。
だれど私は卒業し、その感触を残したまま一年が経った。
忘れてゆくだろうと思っていた思いは、日に日に大きくなり、
私を苦しめる。そんな時、先生は私に電話をかけてきた。
恋人でもなく、友だちでもない、また生徒と先生として、
振り出しに戻った二人は、一年前の自分たちを思い出しながら、
そして、一年大人になった本当の恋に落ちる。

さっきも書いたけど、読んでよかった本だった。
それはとても個人的な理由だと思うけど、「先生」が、
私が以前好きだった人にとても雰囲気が似ていたからだ。
おまけに既婚者…完璧なヒットに、私は食い入るように読むことができた。
恋愛小説で、こんなに正面から読めたのは久しぶりである。
で、まぁ、それはそれで、これはこれ、という感じだったのだが、
気になる点がいくつかあって、素直にお薦めはしがたい感じがした。
一つ目は、会話が棒読みである。棒読みは言い過ぎかもしれないが、
いや、これ絶対実際の会話で話す言い回しではない、とはっきり言える。
それとこれ絶対話題にならないと思う、というようなクサイ会話が、
平気でペラペラと話されるところが、ちょっともったいない気がした。
もう一つは、一人称が「私」でありながら、心理描写が少ないので、
読者置いてきぼり感が漂っている。
私と先生と、小野君の恋模様を、ただ傍観している、という雰囲気だ。
少なくても感情移入し、泣く、ということはない。
最後の柚子が死んでしまうシーンも、手紙が出てきているのに、
ちっとも悲しくならないのは、主人公の心理に同調できないからだろう。
ラストについて、結構残酷な終わり方をしますが、
これについては、私はなかなか好きでした。壊滅的な終わり方、
といえば綿矢りさの「夢を与える」(そう言えば最近新刊出ませんね)
なんかがありますが、それよりは、より含みがあるというか、
納得のゆくラストだったように思える。もしも、数年たった今、
島本さんがこの小説を改稿し、一から書き直してくれるなら、
きっと私にとってとても好きな仕上がりになると思う。
けれど、この文は、初々しかったあの頃でしかかけないわけで、
その発展途上具合をまた評価すべきなんだろうか、と思えてくる。

★★★☆☆*85

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コメント

はじめまして。
私もつい最近この本を読んだので、TBさせていただきました。

ちなみに、やはりそこまで心を揺さぶられませんでしたcoldsweats01
会話のことは、同じように感じましたよ。
「こういう言い方は、まずしないだろうに・・・gawk」と。
それでも「読んで損はなかった」と思えるところが不思議ですね。

たくさん本を読んでおられるのですね。
いくつか知っている作品のレビューを読ませていただきましたnote
また時々、おじゃまさせてくださいね。

投稿: aopu | 2008年3月13日 (木) 09:32

はじめまして。
私も「ナラタージュ」と「夢を与える」、両方読みました。
個人的には、ナラタージュの方が読後感が良かったです。
ナラタージュも切ない展開ではありましたが、夢を与えるはほんとに壊滅的な最後だったので、ちょっと後味が悪かったです。
島本理正さんも綿矢りささんも大好きなので、どんどん新しい本を書いていって欲しいなと思います☆

投稿: 読書日和 | 2008年3月13日 (木) 21:07

>aopuさん

こんにちわ~はじめまして^^*
TB&コメントどうもありがとうございます!
レスが遅くなってしまってすみません;

aopuさんもお読みになられたそうで!
そうなんですよね、いいなぁとは思いつつ、
私も心を揺さぶられませんでした。
やっぱり会話でしょうか…笑
うーん、私も個人的に一番気になったのは会話だったんですけど。
この本はまだ全体的に「若いなぁ」って感じがしたので、
これからの島本さんのこういう濃厚な長編に期待したいですね!

でも、読んで損はなかった!

毎度毒舌ですみませんが(苦笑)、
是非また遊びにいらしてくださいませ^^*
私も後ほど遊びに伺いますね。

投稿: るい | 2008年3月17日 (月) 14:34

>読書日和さん

こんにちわ~はじめまして^^*
コメントどうもありがとうございます~。
レスが遅くなってしまってすみません;

両方読まれたそうで、引き合いに出した甲斐がありました。笑
「ナラタージュ」の方が余韻がありましたよね。
本当「夢を与える」は破滅的過ぎて、
読んだあとちょっと後悔しました。苦笑
(いや、気分が落ち込んでしまって…^^;)

私も島本さん、最近好きになりました。
初めて読んだのが「大きな熊~」だったのですが、とても好みで。
まだまだ読んでいない本がたくさんあるので、
楽しみにしています。綿矢さんは全部読みましたが、
最近新刊が出ないので、どうしたのやら…と心配しております。

どちらにしても、お二方の新作楽しみですね。
後ほど読書日和さんのところにもお邪魔させていただきますね。

投稿: るい | 2008年3月17日 (月) 14:38

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