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2008年3月

2008年3月31日 (月)

■雑談:2008年3月に読んだ本

■2008年3月に読んだ本(8冊)

3.03 ★★☆☆☆*78 「太陽の塔」 森見登美彦
3.05 ★★★☆☆*85 「真相」 横山秀夫
3.07 ★★★☆☆*85 「ナラタージュ」 島本理生
3.10 ★★★☆☆*80 「絆のはなし」 伊坂幸太郎,斉藤和義
3.11 ★★★★★*95 「SP」 金城一紀
3.15 ★★★☆☆*83 「NHKにようこそ!」 滝本竜彦
3.19 ★★☆☆☆*72 「ALONE TOGETHER」 本多孝好
3.20 ★★☆☆☆*65 「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」 伊藤たかみ

■2008年3月に観た映画(3本)

3.04 ★★★☆☆*80 「Sweet Rain 死神の精度
3.09 ★★★★☆*88 「接吻
3.26 ★★★☆☆*87 「潜水服は蝶の夢を見る

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2008年3月26日 (水)

【映画】潜水服は蝶の夢を見る

080327
非常に判断に悩む映画だった。果たしてどこまでが原作で、
どこまでが監督(というか脚本家)の脚色なのか、
かなり判断が曖昧なのである。もしも、この話全てが、
原作なのだとしたら、拍手喝さいを送っていいところなのだが。

「ELLE」の雑誌編集者だったドミニクは、
突然の脳梗塞で全身が付随になった。
動かすことが出来るのは左目の瞼のみしかなく、
話すことはおろか、意思を伝えることさえ出来ない。
一時は死を望んだドミニクだったが、自分には、瞬きと、
それから記憶と想像力が残されていることに気づき、
自ら本を出版することを決意した。
瞬きを読み取ると言う病理士の根気強い作業の末、
彼は潜水服を着、蝶に出会った夢を描いた。

これの凄いところは、実話である、という点である。
映像は評価がよいように確かに綺麗だった。
映画はほとんどがドミニク自身の視点で進んでゆく。
残された左目だけで捉える映像と言うのは、
視野が狭くとても見づらい。
しかしここから見える景色・風景・人などの全ては、
なぜかとても心に響くのである。
まるで一つをも逃さぬよう追いかけるように捕らえるその映像は、
情緒的で、けれど現実を克明に伝えてくるのだった。
そういう点で、この映画はとても素晴らしかった。
だが、一つ気になったのは、この映画のどこまでが、
ドミニクが書いた「潜水服は蝶の夢を見る」なのだろうか、という事。
映画の中に、その本を紡ぎ出すシーンが出てくるのだが、
それ以外の部分は、もしや監督(もしくは脚本家)の脚色なのだろうか
と思え、何だか少し残念な気がしたのだった。
この映画はドミニクだけではなく、客観的な視線が混ざっている。
まぁそれは私が瞬きで書いたと言うドミニクのその本を、
純粋に読んでみたいという願望の方が強かった、
というだけかもしれないのだが。
でもやっぱり原作と同じ「潜水服は蝶の夢を見る」というタイトルで、
映像化するのなら、文章をそのまま映像化して欲しいな。
と、言いつつ、原作を読んでいないので、読んでみようと思います。

★★★☆☆*87

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2008年3月20日 (木)

「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」 伊藤たかみ

助手席にて、グルグル・ダンスを踊って (河出文庫) 助手席にて、グルグル・ダンスを踊って (河出文庫)

著者:伊藤 たかみ
販売元:河出書房新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


うーん最近あまりいいものを読んでいない。おっと、失敬。
でもこの本もとてもじゃないが「面白い」とは言えない本だった。
うーん…これで賞が取れてしまうのかぁ。
時の流れなのか、それとも私と感性が違うのか。

僕の住む東区とその隣の西区では、
言っては何だが貧富の差というものがある。
僕が付き合い始めたのはそのみすぼらしい西区の
ミオという女の子だった。ミオは雑誌で表紙を飾ったこともある、
可愛い女の子で、けれど西区と言うだけで、少しの陰を持っている。
しかしそんなものは跳ね除けて、僕たちは赤いコンバーチブルに
乗って、青春を駆け抜ける。最高に熱い夏の話。

伊藤さんのデビュー作である。
何もなさ過ぎるのが、ある意味凄い小説だった。
いや、真面目な話、本当何もないのだ。
主人公はミオという可愛い女の子と付き合っていたり、
それから仲間とわいわいと騒いだり、
父親の愛人との改めて見ると奇妙な生活をしたり、
青春の夏のそんな日常が、何の変哲もなく書かれている。
何の変哲もなさ過ぎるから、面白いのかどうかさえも危ぶまれる。
ただ友達がああ言ってこうなった、
こうなるんじゃないだろうか、でもああなった…
みたいな主人公視点の状況説明が続くばかりで、
驚くべき事件もなく終結する。問題は主人公があまりにも
感傷に浸らないところにあるだろう。
その痛みをわざと隠すことによって、味を…
と考えられているのだろうか?それにしては隠されすぎていて、
むしろ楽観的な主人公に苛立ってくるという悪循環。
あぁ、伊藤さんも好きなんですけど、と言い訳をしておく。
地の文章だと言うのに「と言うんで」という話口調になっているのが
個人的にとても読みづらかった。「ので」は「ので」です。
「んで」ってなんですか、許せません。笑 と、そんなところで。

★★☆☆☆*65

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2008年3月19日 (水)

「ALONE TOGETHER」 本多孝好

ALONE TOGETHER (双葉文庫) ALONE TOGETHER (双葉文庫)

著者:本多 孝好
販売元:双葉社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


はっきり言って、どんな状況なのかよくわかりません。
かなり残念なパラレル小説。もったいないもったいない。
なんで本多さん書いてるときに気づかなかったんだろう…。
不思議でしょうがないくらい、描写が欠けています。

僕は父に母を殺された。
そんな事実を僕は誰にも打ち明けることなど出来ず、
心の闇と共に大事に守ってきた。
父は先祖代々繋がる「呪い」によって母を殺したが、
その「呪い」は当然のごとく自分にも備わっている。
相手が無防備な感情を見せた瞬間、僕はその相手と同調する。
心の澱を吐き出し、詰まった思いを緩和する。
しかし自身の思いはつのるばかりで、決して軽くなることはない。
他人の悲しみを詰め込み満たされてゆく僕は、
果たして誰かと本当に触れ合うことが出来るのだろうか。

冒頭にも書いたのだが、「状況」が全然描かれていない小説である。
この主人公・柳瀬は、特殊能力により、
他人の心に同調することが出来、また気持ちを導くことが出来る。
しかし、その能力を発揮するとき、どのような状況になっているのか、
まったくもって、よくわからないのだ。ところどころ、「箱のような」
みたいな説明があるのだが、描写が少なすぎて箱って一体なんだよ、
みたいな感じ。まぁ、私の想像能力が乏しいのかもしれないが、
それにしても「人は誰しもバリアーを持っているのだが、
それは箱状のものであり、僕がそこをすり抜けると…」
くらいの説明はつけてほしいと思う。その能力が発動すると、
背景はなくなってしまうのか、周りの人間にはどのように見えるのか、
書くことはたくさんあるはずで、たとえ毎度それを書かないにしても、
非日常を書くときは初回のときの描写は気をつけるべきでは?と感じた。
内容は…というのも、主人公が相手を諭すと言う状態が、
これまた曖昧すぎてよく理解できない。一瞬、相談室で相談に
のっていて、柳瀬の力により有無を言わせないというような状況
なのか…?と思うのだが、どうやら違うようで、柳瀬は鏡と化すことで、
相手は相手自身を見つめて話している、ということらしい。
そう分かるのがラストのあたりなので、正直「おいおいおい」という
呆れた感じだった。うーんこれは最初にあるべきでは?
まぁ、うんえーと。本多さんは好きですよ。毎度言いますが。笑

★★☆☆☆*72

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2008年3月15日 (土)

「NHKにようこそ!」 滝本竜彦

NHKにようこそ! (角川文庫) NHKにようこそ! (角川文庫)

著者:滝本 竜彦
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


とある方にお薦めされたので、読んでみました。笑
うん、まぁとても凄いのは分かるのだが、
この小説を「好き」と言った時点で、あらゆる偏見が付き纏うのは、
ちょっと考えものですね…とお茶を濁しておく。笑

何を隠そう、俺はプロフェッショナルなひきこもりである。
大学を中退し、ひきこもること四年…
全ての人間との関わりを遮断し、人に合うのは、
週に一度コンビニに飯とタバコを買いに行くのみ。
そんな俺は、とんでもないことを発見してしまった。
それはふとつけていたテレビ番組、NHKチャンネル。
しかしよく見て欲しい、「NHK」とは何の略語なんだ?
普通に読めば「日本放送協会」しかしそんな世の中は単純ではない。
そう、これは、これは「日本ひきこもり協会」の略だったのだ。

あー超のつくオタク小説です。笑 
「涼宮ハルヒ」などという甘ちゃんを軽く飛び越えた、
男性から見れば、神がかり的な小説でしょう。
「あぁ、よくこんな話公表する勇気あるな、すげー」みたいな、
そんな雰囲気らしいですよ、と伝聞しておく。
はじめに言っておくと、オタクに免疫のない女性は、
絶対に読むべきではない。というと、私がまるで免疫があるように
聞こえてしまうのが、この小説の恐ろしいところである。
この小説で二つテーマを挙げるとすると、
「エロ」と「ひきこもり」である。えぇ「エロ」と「ひきこもり」
最悪のマッチング。いや、最高のコンビネーションである。
今やオタクといえば「=エロゲー」みたいな方程式が立つ(多分)。
この二つの連鎖は表裏一体となっているため、
「この小説好き」といってしまうと、「エロ」と「ひきこもり」が
好きだということになってしまうんです、困ったことに。
しかし、この小説を冷静に見てみると、「ひきこもり」という
この主人公の行動、心理描写はとても惹かれるものがある。
ひきこもり、抜け出そうと思いつつ抜け出せない。
分かりきっているのに、怖気づき、底辺でもがく彼の心理は、
とてもちぐはぐで、はちゃめちゃで。けれどそんな中で
生み出す決断は、時折、胸を打つのである。失敗するけど。笑
が、こうして「ひきこもり」を褒めてしまうと、大変なことに、
「エロ」も肯定してしまうんですね、大変です。
「エロ」を習得することによって、主人公は更なる「ひきこもり」術
を習得して大変なことになるんですよ。で、間違って欲しくないのが
私はこんな男臭いエロが好きなわけではありません、というところで。
そのへんを十分に気をつけてお読みいただきたい感じであります。
何か語り口が怪しいですが、この本を読めば、大体こんな感想ですよ。
うん、本当。「馬鹿が哲学にはまると凄い」、よく分かりました。

★★★☆☆*83

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2008年3月11日 (火)

「SP」 金城一紀

SP SP

著者:金城 一紀
販売元:扶桑社
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500ページ強あるというのに、徹夜で読み終わらせました。
あ、ちなみに昨日買いました。いやぁめっちゃ楽しかったです。
ドラマ「SP」に夢中だった方、是非読むべき。
しかし一つ注意点は、これはシナリオ集です。小説ではありません。

現総理大臣が、その昔選挙の際画策した出来事により、
幼い頃、駅前の路上で両親を殺害された井上は、
目の前の惨劇のショックから、特殊な能力を手に入れる事となった。
意識を集中させ、辺りを見回すシンクロ……それだけで、
どんな些細なことも見逃さず、記憶することが出来る。
SP(Security Police)いわゆる要人護衛職を志望し養成所に入ったが
そのずば抜けた能力を買われ、尾形によって即座に起用された。
要人を守り神経を尖らせるたび、井上の頭には、
幼い頃見た惨劇が思い出される。それは日に日に強くなり、井上自身が
苦しみ始めた頃、やって来た仕事は皮肉にも総理大臣の護衛だった。

しかも、サイン本である。何が「しかも」なのか自分でも分からないが、
こんな楽しい本にサインがしてあると言うだけで、私は幸せだ。笑
正月特番で深夜やっていたドラマSPに母とはまり、
朝5時までやると言うのに、二人で真剣に見てしまった。
その後も、続けてみていたのだが、何とまぁ、さすが私と言う感じで、
最終回だけバイトのために見逃してしまっていた。
見損なってから、私は自分をアホだと責め続けていたが、
この本を読んで、ようやく自分を許すことが出来た……。
ところで、冗談はさておき(いや、九割本当だが)、
この本はシナリオ本としては、最高級の位置にあると思う。
金城さんがあらすじを書き、監督やプロデューサーの指摘などを
手を加えられ、ドラマに即したものになっている。
何と言っても舌を巻いたのは、金城さんの無駄のない的確な文章。
多いわけでもなく、少ないわけでもなく、絶妙な情報量で、
配役の行動が書かれているため、たとえ映像を見たことがなくても、
手に取るようにそれを想像することが出来る。
おまけに演じる役者にとっても、それはかなり親切設計だ。
無理な描写はなく、キャラクターを描く輪郭だけが、
スマートに描かれているから、そこに自分のアドリブ的なものを入れ、
演じることが出来るようになっている。
もちろん、金城さんは、配役が誰だか知っていて書いているので、
その俳優・女優にかなりマッチした動き、セリフなどで、
どれをとっても完璧であった。
それと、シナリオの下段に、金城さんの呟きが書かれている。
これがまた面白いのだった。あそこは実はあぁしたかった、とか、
あのギャグいけてない、とか、諸般の事情でこうなりました、とか、
実はあの映画のあのシーンをイメージして描きました、とか、
舞台の裏話が、こっそりと呟かれているのである。
ここに面白さを感じられるのは、金城さんが撮影現場に何度も足を
運んだんだろうな、と分かる真剣さや、追求するものの品位が、
とても高いためだろうと思う。この本の感じ、というか、
物語のラストを見てみても、SPはまだ続きそうである。
とても楽しみ。そして今度こそ見逃さないようにする。笑

★★★★★*95

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2008年3月10日 (月)

「絆のはなし」 伊坂幸太郎,斉藤和義

伊坂幸太郎×斉藤和義 絆のはなし 伊坂幸太郎×斉藤和義 絆のはなし

著者:伊坂 幸太郎,斉藤 和義
販売元:講談社
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個人的にエッセイは好きではないのですが、
と、もう何十回も言った言葉を前置きしておきますが、
それは例え伊坂さんであろうとも、変わらないわけで。基本的に
他人に興味がないのがダメなのか?いや、そこまでじゃないけど。

伊坂幸太郎は三十一歳のときに、斉藤和義の「幸福な朝食」を聞き、
会社を辞める決意をしたらしい。
その後、伊坂さんは作家として本領を発揮し始め、
ついに先日斉藤和義とのコラボレーション小説に参加。
自分を小説一筋の、今の生活に導いてくれた恩師、
斉藤和義との対談である。

とっても個人的なことですが、斉藤和義の出身を見て絶句しました。
私の実家知ってる方、黙っててくださいよ?笑
あまりにも近いんで、思わずそれだけで親近感が沸きました。
この本読むまでよく知らない人だったんですが、
結構有名なんですね?そうなんだ、って感じでした。すみません。
でも「ウェディング(なんとか)」は聞いたことがありました。
その他、小説と音楽とのコラボレーション、ということで、
とてもまったりした感じで対談が続いています。
私的に一番よかった点は、伊坂さんの年表のところでしたね。
「悪党たちが目にしみる」で佳作をとってから、
実は「オーデュボン」までに苦悩があったことをしれただけでも、
私は読んでよかったと思いました。
大抵のエッセイ本には苦労話が載っていますが、
伊坂さんはごく控えめな感じで、読んでいて嫌になりませんでした。
まぁ、これは読むに限ると言うことで。

★★★☆☆*80

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2008年3月 9日 (日)

【映画】接吻

20080309c
小池栄子すごい、の一言に尽きる映画でした。
彼女を好きな方、是非観たほうがいいです。私は嫌いじゃないかも…
くらいで観たのですが、ぐいぐい引き込まれました。
演技が上手すぎて、気持ち悪いほど狂った彼女を是非ご堪能下さい。

会社勤めをしていたが、いつも、同僚のパシリをさせられた。
用事があるからと言って仕事を全て押し付けられ、
挙句、見えないところでは陰口を叩かれ笑われる。
けれど、そんな事は日常茶飯事だ。何も会社ばかりではない。
それまでだってずっとそんな扱いを受け、
そして独りぼっちだったではないか、と京子は思った。
そんな時、京子は一人の男に出会った。
無差別に一家三人を殴り殺した凶悪な殺人犯。
ブラン管ごしに見た彼の笑顔に、京子は胸を打たれ気が狂うほど虜になった。

「私と結婚してください」
小池栄子こと、遠藤京子が言った時、全身を鳥肌が駆け抜けた。
気持ち悪い、と思った。
この話は、凶悪な殺人犯に惹かれる女を描いていて、
彼女は、それまでに新聞記事をスクラップしたり、裁判を傍聴したり、
手紙を書いてみたり、差し入れをしたり、と数々の所業を行うのだが、
変な言い方をすれば、どれもまだ「ファン」として許される範囲内だった。
しかし、この一言だけは、決定的に違った。
数々続けてきた行為のお陰で、徐々に徐々に狂い始めた針が、
一気に振り切れた瞬間であった。
「私と結婚してください」そう言った後の、
小池栄子の何とも言えない不気味な笑顔を、是非見落とさないでほしい。
その変化に気づいてしまった人は、この笑顔から、
ハッピーバースデーを歌うまでの彼女の行動に、きっと目が離せなくなる。
一つ気になったのは、人に多くを語らせたところの効果が、
ちょっとくどかったように思える点。
小池栄子と仲村トオルが二人でしゃべるシーンは正直少し邪魔だった。
あんなにしゃべらせなくても、きっと小池栄子の演技で、
もっと上手い事もっていけたはずなんだけど、と個人的には思った。
それにしても、この話は、一体何を言いたかったのか。
それについては、観た人にしか分からない感想があると思う。
と言うのも、私は人それぞれ違うのではないかと思うからだ。
狂人は狂人を呼ぶ。そして、その狂人を生み出すのは歪んだ現代であり、
防ぎようもない事実である、と私は考えた。
愛はそれを防げるのか…結果はNOである。
果たして「接吻」というタイトルが、的を得ているのかは分からないが、
きっと愛は敵わない、と囁くには丁度よいとも感じた。

★★★★☆*88

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2008年3月 7日 (金)

「ナラタージュ」 島本理生

ナラタージュ ナラタージュ

著者:島本 理生
販売元:角川書店
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読み終わって、読んでよかったと思った本でした。
もう少しコンパクトに出来たんじゃなかろうか…と思わなくもないですが。
ところで、とってもメガヒットした割には、
そこまで心が揺さぶられなかったのは何故だろう。会話のせいかな。

卒業式の日、去り際に先生は私にキスをした。
二人は決して恋人ではなかったのに、
キスをしてしまった事によって、私たちはこの思いに気づいてしまった。
だれど私は卒業し、その感触を残したまま一年が経った。
忘れてゆくだろうと思っていた思いは、日に日に大きくなり、
私を苦しめる。そんな時、先生は私に電話をかけてきた。
恋人でもなく、友だちでもない、また生徒と先生として、
振り出しに戻った二人は、一年前の自分たちを思い出しながら、
そして、一年大人になった本当の恋に落ちる。

さっきも書いたけど、読んでよかった本だった。
それはとても個人的な理由だと思うけど、「先生」が、
私が以前好きだった人にとても雰囲気が似ていたからだ。
おまけに既婚者…完璧なヒットに、私は食い入るように読むことができた。
恋愛小説で、こんなに正面から読めたのは久しぶりである。
で、まぁ、それはそれで、これはこれ、という感じだったのだが、
気になる点がいくつかあって、素直にお薦めはしがたい感じがした。
一つ目は、会話が棒読みである。棒読みは言い過ぎかもしれないが、
いや、これ絶対実際の会話で話す言い回しではない、とはっきり言える。
それとこれ絶対話題にならないと思う、というようなクサイ会話が、
平気でペラペラと話されるところが、ちょっともったいない気がした。
もう一つは、一人称が「私」でありながら、心理描写が少ないので、
読者置いてきぼり感が漂っている。
私と先生と、小野君の恋模様を、ただ傍観している、という雰囲気だ。
少なくても感情移入し、泣く、ということはない。
最後の柚子が死んでしまうシーンも、手紙が出てきているのに、
ちっとも悲しくならないのは、主人公の心理に同調できないからだろう。
ラストについて、結構残酷な終わり方をしますが、
これについては、私はなかなか好きでした。壊滅的な終わり方、
といえば綿矢りさの「夢を与える」(そう言えば最近新刊出ませんね)
なんかがありますが、それよりは、より含みがあるというか、
納得のゆくラストだったように思える。もしも、数年たった今、
島本さんがこの小説を改稿し、一から書き直してくれるなら、
きっと私にとってとても好きな仕上がりになると思う。
けれど、この文は、初々しかったあの頃でしかかけないわけで、
その発展途上具合をまた評価すべきなんだろうか、と思えてくる。

★★★☆☆*85

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2008年3月 5日 (水)

「真相」 横山秀夫

真相 (双葉文庫) 真相 (双葉文庫)

著者:横山 秀夫
販売元:双葉社
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横山さんを久しぶりに読んでました。個人的に重い長編を読みたいな
と思って読み始めたので、短編集だと気づいた時には、
かなりのショックでした。笑 短編であっても、
一つがこんなに濃厚なのは、なかなか凄いことである気がしますね。

「真相」
息子を殺した犯人が捕まった。篠田は、体が戦慄くのがわかった。
十年間待ち続けた瞬間が、今ようやく訪れたのだ。
この吉報を、篠田は妻に、娘に、知らせたくてたまらず、
またその嬉しさや喜びを分かち合いたかった。
しかし、警察が新聞記者を携え家に訪れたときに、聞かされたのは、
息子が「万引きをした」と言う犯人の供述だった。
佳彦は殺されたんだぞ? それでも尚罪を被らせるつもりか…!
篠田は激昂し、記者や妻たちを攻め始めた。佳彦はそんな子ではない。
だが、娘が語り始めた息子は、篠田の思うような優等生ではなかった。

つい隠蔽して、なかった事のようにし、
ただよい部分だけを思い出や記憶として取っておく。
そうした脳内の処理は、きっと人間が知らず知らずのうちに
行ってしまっているものだろう。殺された息子が、
まるで優等生で穢れのない子どもだったと、錯覚してしまうように、
綺麗な記憶とだけ残してしまうのは、とても頷ける。
そして、実は違ったのだ、と知らされ、
「そう言えば、あいつは俺を嫌ってたじゃないか」とか、
そう隠していた記憶が蘇るときの切なさが、
とてもよく描かれていたように思う。
個人的に「真相」が一番よく、その他は微妙だったように思う。
「花輪の海」などは、なんだか死のこじ付けが激しく、
その後自殺してしまった友人の、妻の様子がとても現実味がない。
とても現実的とは思えない雰囲気が、残念ながら、
他の全ての作品から感じ取ることが取れた。
ちょっと深く描くために、説明が多すぎたのかも?
そういうところからも一番「真相」がシンプルで、
「真相」という、物事の裏側に隠してしまっていた事実、
を描けていたように思う。これは「死者の美化」でしたが、
「殺人の正当化」も書いて欲しかったな、と一言。
せっかく「真相」なのに、さほど「真相」じゃないのが玉に傷。

★★★☆☆*85

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2008年3月 4日 (火)

【映画】Sweet Rain 死神の精度

08030601
なんとまぁ、試写会があたったので観てきました。
去年も「サウスバウンド」が当たったし、応募すれば、
意外に当たるものですね。願わくば、今度は舞台挨拶付きの
試写会を当ててみたいなぁと、贅沢に思ってみたり。

不慮の事故で命を失うものについて、その人の人生が、
死に値するものかどうかを判断する。それが死神の仕事だ。
死神はその人間に対し、感情や感慨はまったくといって持たない。
だから大抵の場合は「実行」、すなわち死を決行する判断を下す。
死神・千葉の今回の判定対象者は27歳・OL。
電気会社のクレーム対応係である彼女は、地味で冴えない。
親族に先立たれ、愛する恋人さえも失った。
それに会社では、あるクレーマーから必用につきまとわれている。
「自分は死んだ方がいい」彼女は自分の死を常に考えてきた。
「今回も実行か?」相棒が千葉に囁いた。「まあな」

「死神」という未知のものになりきることにおいて、
金城さんはかなりいい線を突いていた。
雰囲気が無国籍な感じで、捉えどころのない
死神のタイプとして、いい人選だったように思う。
しかし、その人選において、一つ問題だったように感じたのは、
小西さんと富司さんの雰囲気が全然違うことだった。
二人は同一人物を演じたわけだが、例え五十年余りの時を越えても、
そうそう、しゃべり方が変わったりしないだろう。
小西さんは小西さんでクレーム対応係の陰気な女性を好演していたし、
富司さんは美容院を営む活発な老婆を好演していた。
それぞれの演技に文句はないのだが、二人のイメージ?
と言うか、人間のタイプ?というか、どこか根本的なところが違って、
おまけに演技をどちらかに似せているわけではないから、最後
「二人は同一人物だったんですよ」という原作的な感動が薄かった。
せっかく三つの物語りは一つになり、
実は人生と言うものはこうして成り立っている……
となるところなのに、そのおかげで全体が中途半端にバラバラだった。
それと、原作にはなかった、「犬」が登場するのだけど、
これはまぁ、「説明」としてナレーションを入れるよりは、
全然よかった気がする。しゃべらないと言うのも、
確かにイメージを壊さないと言う点でよかったと思う。
最後に一つ、個人的に気にかかったのは、
「君は、死ぬことについてどう思う?」と金城さんが聞くときの事。
金城さんは、ちょっと改まった感じで、対象者に問いかける。
その微妙な間、というか雰囲気が好きではなかった。
死神は人が死ぬことについてどうも思わない。
だから、もっと軽々しいというか、さり気なくというか、
あるいは失礼なくらい軽率に、聞いた方がよかったのではないか
とちょっと思ったりした。金城さんのこの問い方だと、
重々しすぎて、人間を気遣っているようにも見えなくもない。
陽気で、しかし感情のない死神を演じるのは、
やはり難しいでしょうね。まぁこの役の金城さんは好きでしたが。

★★★☆☆*80

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2008年3月 3日 (月)

「太陽の塔」 森見登美彦

太陽の塔 (新潮文庫) 太陽の塔 (新潮文庫)

著者:森見 登美彦
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


あぁ、何で私は森見さんを好きになれないんでしょう…
何てゆうか、「肌に合わない化粧品を使うのをやめましょう」
という感じです。いや、うん、才能は認めますし、
持て囃される要素もわからなくもないけど、私には合わない。

彼女に振られた私は、だから「水尾研究」と題し、
彼女をストーキングすることにした。何、心配することはない、
何と言っても「研究」なのだから、決してストーカーではないのだ。
その頃、京都の町は、キリスト教のクリスマスイルミネーションに、
侵食され始めていた。いかがわしい。
こんな風習は女のいない男を侮辱しているだけではないか。
こうなったらクリスマス討伐を徴集し、打倒するしかない。
私は愛車の「マナミ号」に跨り、今日も京都の街中を駆け抜ける。

第一に私は話しに引き込まれない。とても残念である。
そもそもの原因は、この話が一人称「私」で
書かれていることに始まると思う。
勿論「私」は男だが、私にはそれが森見さん自身のような気がして、
どうにも好意的に読むことが出来ないのだ。
何せ、主人公はいつも京大生、落ちこぼれ、女なし。
まるで自分の身辺に起きたことに、ちょっとユーモアを加え、
書いているのではないか、と思えてしまい、
いつも同じ主人公(森見さん)のように思えてくる。
「メロス」だってそうだったし「夜は短し」もそうだった。
そしてもう一つ森見作品の問題として、
一般的に挙がっているのが、学歴の問題である。
私は別に京大に入りたかったわけでは毛頭ないのだが、
ここまで卑屈に語られると、「入れなかった人間の身になれ」
と言っている読者の気持ちもわからなくもない。
だって考えて欲しい、何年も頑張って京大に受験している人や、
京大に入りたくても入れなかった人が、
果たしてこの本を読んで楽しめるのか、というところである。
それに、私は京都に修学旅行ででしか行った事がない。
だから、作品中に散りばめられている、京大ならではの面白み、
という部分でさっぱり笑うことが出来ないのだ。
例えば一箇所、森見さんが京大の大学名を伏せ「某大学」とか、
見え見えだけど、隠してる…みたいにしてくれたり、
あるいは「私」の人格を自分から切り離して書いてくれるのなら、
きっともっと私を含め、読者が増えるんじゃないでしょうか、
と恐れながら考えてみた。天下の森見さんをずたぼろに言って、
私はファンに怒鳴られそうですが、まぁ読者の中には、
素直に頷けない人もいるということを、少し分かって欲しいですね。
その点に関しては万城目さんの方が、異次元で許せるかも?

★★☆☆☆*78

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