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2008年2月18日 (月)

「きよしこ」 重松清

きよしこ (新潮文庫) きよしこ (新潮文庫)

著者:重松 清
販売元:新潮社
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よく人には波長の合わない人がいると言うけれど、
私にとって重松さんの本は、そんな波長の合わない一つだ。
もちろん、文章も素敵だし、物語だって読めば泣ける。
しかし、どうにも読みたくならないのは、やはり波長が合わないから。

少年は幼い頃から吃音に悩んでいた。
「か」行や「た」行の言葉がうまく言えず、
「か、かかか、か、帰ろう」など、酷くどもってしまうのだ。
その原因は、妹を出産するとき、両親に置いてきぼりにされた事
かもしれないし、父親の仕事のせいで、転勤を繰り返しているから、
かもしれなかった。本当の原因など誰にも分からない。
どもってしまうことで馬鹿にされ、悔しくもどかしい思いを何度もした。
そんな少年の物語を、とある吃音に悩む少年に捧げよう。

この話は大部分が実話であるらしい。
重松さんは「か」行の言葉で躓いてしまう人らしい。
冒頭を読んでいるうちから、薄々感づきはしたが、
吃音についてこんなにも悩む人がいるなんて、少し驚いた。
私が小学生の時、海外から転校して来た子も、酷くどもっていた。
彼は頭もよく、明るく、クラスの中で一躍人気者。
そして何の縁かは知らないが、私は中学三年までの間で、
一番一緒の期間が多い子でもあった。だが、言われない限り、
そういえば彼が吃音だったと思い出さない。
この本を読んだ後に、しかしそんな彼のことを、唐突に思い出した。
彼はそれを悩んでいたのだろうか、と思った。
いつも明るく、結構投げやりに人生を送っているようで、
「別にいいんじゃん?」が口癖である彼は、まだ吃音が治らない。
ストレスで太ってしまうこのように、素直に出てこなくなる言葉。
自分ではどうしようもないその現象について、
格闘し、悩み、悔やむ、そんな一人の子供を、
この本を真っ直ぐに描いている。
きっと誰にもこの本に文句をつけることは出来ない。
ひた向きで、しかし前を見据える少年を見ていると、
決してそんな事を思いつかなくなるからだろう。

★★★★☆*89

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