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2008年2月21日 (木)

「夜消える」 藤沢周平

夜消える (文春文庫) 夜消える (文春文庫)

著者:藤沢 周平
販売元:文藝春秋
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藤沢さんだと思って読むと、とても上質なものに見えるのだけど、
それを考えずに読むと、そうでもないような、
そんな感じの本だった。でも凄いよな、書くもの全てが、
自然とお江戸の世界に見える。なぜみんな江戸に惹かれるのかな。

「踊る手」
夜逃げした家族が置いていったのは、年老いたばあさんだった。
家の中には家財道具は一切なく、残っているのは老婆のみ。
その状況を想像し笑ってしまった周りの住人たちだったが、
しだいに老婆の身を心配するようになった。
老婆は飯に一口も口をつけようとしなかったからだ。
もしかして、置き去りにされたことが答え、自害をするのでは…
不安が高まる頃、信次は街中でとある女に会った。

短編集。内容はと言うと、感動、というものはないように思う。
どちらかと言えば、江戸で日常に起きていたのではないか、
という何でもない出来事が、この本では忠実に再現されている。
「踊る手」では借金に首が回らなくなり夜逃げした家族が、
借金取りの手が薄れた頃に、老婆を迎えに来る、という話だ。
特になんでもない話だが、置いてゆかなければならないもの、
というのが老婆、という少し滑稽で、
けれど少し心に響く設定になっている。
こんな情景はきっと江戸でしかありえない。
そして最後に喜びのあまり手で踊り始めるばあさんの姿が、
妙に頭に焼き付いて、離れないのである。
他の話はと言うと、男女のもつれ話が多い。
飲んだくれ親父のために結婚できない娘が、
父親がいなければいいのに、と言う。それを聞いてしまった父親は、
酔いの回った頭でありながら、その家から姿を消してしまう。
これもそれだけの話だが、呆気なく読み終わり、
ふと思い返したとき、不思議と細部まで覚えているのが、
味と面白さの証拠なのかもしれない。

★★★☆☆*80

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