« 「静かな爆弾」 吉田修一 | トップページ | 「落花流水」 山本文緒 »

2008年2月25日 (月)

「トリップ」 角田光代

トリップ (光文社文庫) トリップ (光文社文庫)

著者:角田 光代
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


こりゃまた微妙な…いや、悪くはないのですが、「トリップ」の意味が、
なんともいただけない感じで、一体何をこの短編で貫きたかったのか、
とても曖昧になっていた。これはある意味人を繋げない方がいいのでは…
面白いところもあるんですけれどもね、繋がりが。

「秋のひまわり」
ぼくはいじめられている。なんていうか、ださいと思う。
十二歳にもなって、こういうの。ぼくは「ばかとぎょろりのだめじま」
と書かれた体操着を見た。そもそもぼくがいじめに遭う理由は、
この「だめじま」こと「いいじま」という、ぼくの父親がいけない。
そのだめじまは悪い噂がすこぶる多い男で、そのうえ、
お母さんとの間にぼくが生まれた数ヶ月後、他に女を作って逃げた。
だからぼくは、マナベさんが早くうちに来てくれないか、と思う。
そうすれば僕の父親はマナベさんになり、だめじまとさよならできる。
そんな縋る思いでマナベさんを見始めた頃、マナベさんは姿を消した。

「似合わないのに、そこにいなくちゃいけないってことあるよ」
という言葉が、「秋のひまわり」にはあるのだが、
他の短編をさて置き、この本を読んで良かったと思った。
この話の主人公、テンちゃんはとても大人である。
小学六年でありながら、達観しているというか、心得ているところがある。
けれどやはりいじめられるのは辛くて、早く終わって欲しいと思っている。
それがようやく母親の手によって叶えられると思ったのに、
母親はまた同じ事でそれを逃してしまう。
そんな様子を見ているテンちゃんは、大人びた心で思う、
「似合わないのに、そこにいなくちゃいけないってことあるよ」
だから、そんなに頑張らなくてもいいのだと。
他の短編はというと、それぞれ何かから抜け出せない人々を描いている。
話はとても小さな街を舞台に描かれていて、
そこの中の、その通りを、さっきの短編の主人公が通り過ぎる。
そんな光景が目に浮かぶようだった。
一つ難点なのは、一つ前の主人公をストーカーし、
それを又ストーカーし、と何だかネタ切れですか?というような繋がりがあり、
総合して描きたかったものは何だったのか?とよく分からなかった。
「トリップ」とは「トリップ」したいのに、
しきれていない人々、ということなのだろうか。

★★★☆☆*83

|

« 「静かな爆弾」 吉田修一 | トップページ | 「落花流水」 山本文緒 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/10802523

この記事へのトラックバック一覧です: 「トリップ」 角田光代:

« 「静かな爆弾」 吉田修一 | トップページ | 「落花流水」 山本文緒 »