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2008年2月 7日 (木)

【映画】善き人のためのソナタ

20080207
★★★★★
最高でした。わざわざ映画館で観た甲斐がありました。
久しぶりに感情の奥深くからホロホロと流れる涙を、
味わうことができたような気がします。
気になる方は、ぜひ劇場で観て置いてくださいね。

優秀な拷問士であるヴィースラーは、
ある時ドライマンという芸術家を完全監視する事になった。
時はまだ東と西で対立するドイツ。そんな東ドイツでは、
職業禁止令のために、芸術家たちが自殺する事件が相次いでいた。
彼らの中ではだんだんに反政府意識が強まっている。
だから、盗聴監視し、少しでもそのような素振りを見せたら、
即刻処刑し、東の権力を維持することにしていた。
ある日、ドライマンの友人である芸術家が自殺した。ドライマンは
彼に譲られた”善き人のためのソナタ”を弾き、悲しみに耐える。
そしてヴィースラーもまた盗聴器からその美しい調べを聴き心奪われた。
それを聞いた人は、決して悪いことができないと言われる、その曲を。

恐ろしく悲しい話である。悲しい運命に涙も流れず、
ただその光景を目に焼き付けることしかできない。
”善き人のためのソナタ”を聞き、またドライマンの誠実さを知った
ヴィースラーは、禁忌を犯してしまう。
くしくも対立するドイツの中で、もしや西側に不利益な噂が流れたら、
たまったものではない。四苦八苦する官僚たちと、それに静かに
抵抗するヴィースラーの姿が、痛々しく、そして美しかった。
一見すると、とても冷徹な人間である拷問士・ヴィースラー。
しかし、まるで氷が解けるようにドライマンを思い、見守り、
けれど沈黙を守る彼の存在・演技がとてもいい。
ばれたら、首どころではない下働きが待っているだろう、
分かっているはずなのに、動いてしまったのは
ソナタを聴いてしまったからなのか、
それとも彼自身の優しさなのだろうか。
悲しみを割るような美しい曲により生まれる
「情」の描き方が素晴らしく、とても切なかった。
壁が崩壊した。自分を救った人間がいる。
そう知ったドライマンの驚きと胸に迫る思いは、
ぜひ実際に観て確かめて欲しいと思う。
人生をかけ、自分を助けた人に捧げる”善き人のためのソナタ”
ヴィースラーに贈られたその物語は、
彼にとって世界で一番温かいものであることに違いはない。

*95

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