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2008年2月19日 (火)

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」 島本理生

大きな熊が来る前に、おやすみ。 大きな熊が来る前に、おやすみ。

著者:島本 理生
販売元:新潮社
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久しぶりにハッピーエンドの恋愛小説で心が和んだ気がした。
ちなみに私は、実は昔ハッピーエンドの恋愛小説が好きだった。
まだ漫画をたくさん読んでいた頃、「ふしぎ遊戯」や「悪魔で候」
など、茨を駆け抜けた恋が、好きだった。だけど、今はね。笑

「猫と君のとなり」
「僕、ずっと志麻先輩のことが好きだったんです」
そう荻原君が言ったのは、飲み会が終わり家に帰ってきた時だった。
中学生の時の部活の顧問が亡くなったので、
参加した葬儀に荻原君はいて、酔いつぶれた彼を、
一番家の近い私のうちで介抱してあげていたのだ。
別にやましいことは何もない。……はずだったのに、
彼の一言で私は酷く悩むことになった。獣医を目指している
と言う彼を見ながら、彼ならば大丈夫だろうか、と思った。
猫をなでる彼を見るたびに、ふと暴力を振るわれた記憶が蘇る。

私がこの話を好きになれる理由として、
物語の根底に、とてもどす黒いものが沈んでいるからだ。
そして同じ過ちをもう一度繰り返し「今度こそ大丈夫かもしれない」
という淡い希望を持つところが、好きだ。
人間、ポジティブじゃないといけない。
と私が言うと嫌味にしか聞こえないかもしれないが、
とにかく気持ちを切り替えることが大切で、
けれどそれはそんなに簡単なことじゃない。
だから、妊娠してしまった子供だったり、猫だったり、
を媒介にして、「~だから」と条件をつけるひ弱さが、
とても上手に描かれていると思う。
それと、主人公の女性が、とてもモテないところがいい。
だたそれだけではなくて、キラキラと輝いているものや、
キラキラと輝いている男の子が、眩しすぎて、
自分にはちょっと……と逃げ腰なところが。
でも、その「面食い」的な感情は捨てられずにいるところも。
物語は「作り物」だから、最後はハッピーエンドに限る、
と思っていた頃の感情が、とても自然に思い出せた気がした。
しかし、けれど「作り物」と分かるリアリティの薄さ、
がちょっと残念ですけど。最近の若い人の本はみんなそうだと思う。
感情だけ描いても、もしもその本が百年後の読まれたとしたら、
きっと読者はついていけないと思うから。
さて、私も若者の本でも読みますかね。
意図的に避けてるふしがあるんで。笑

★★★★☆*86

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