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2008年2月 5日 (火)

「国境の南、太陽の西」 村上春樹

国境の南、太陽の西 (講談社文庫) 国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

著者:村上 春樹
販売元:講談社
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結局は不倫小説。というとハルキファンに怒られそうですが、
きっと何の感慨もなく読む方は、ただの不倫小説に見えるでしょう。
けれど感じる人には感じる、愛や恋とは別に惹かれあってしまう、
というどうしようもない衝動が描かれています。

僕は島本さんという足の悪い少女に出会った。
それは十二歳という幼い時の事で、けれどそれは
目に見えない強い吸引力のようなもので、惹かれあっていた。
二人はお互い一人っ子だった。だからだろうか、話は合ったし、
それ以上の興味が彼女にはあるような気がした。
しかし、島本さんが転校してから、二人はバラバラになった。
僕は現在の妻と結婚し、二人の娘だって作った。
けれどその生活のどこかで、僕は島本さんを求め続けていた。
今は幸せだ、だけどそれとは別に彼女は僕に必要なのだ。

最初にも書いたけれど、結局は不倫小説である。
幸せなのに、初恋の少女の登場で、三十七歳の僕は不倫に走る。
それだけを聞くとどこにでもありそうな、ありふれた話だ。
だけれども、春樹さんの小説はそんな陳腐なものではない。
そもそも人間は一夫一婦制なのは、どうしてなのか。
愛と恋は別物ではないか。いくら今が幸せであっても、
でも必ず物足りないものはあるはずではないか。
などと深いところまで考えたくなるような不思議な魅力がある。
どうせ不倫でしょう、という見放した判断ではなく、
こんな状況に遭ったら、きっと「僕」でなくても、
みな島本さんの元へ行くだろうと思えるのだ。
もちろん有紀子に文句があるわけではない。
少しの刺激と、昔感じた劣等感を慰めあった心地よい空間が愛しく、
ふと、不倫という線を越えてみたくなるのである。
原因は少しのこと、しかし感情は有か無か、
どちからに振り切れる事しかできない。
結局駆け落ちに成功しない二人は、
だけどこれが一番よい結果に見えるのは私だけだろうか。
よく「結婚するのは、二番目に好きな人」という言葉を思いだした。
単調で、あまり印象のない話なので、私はつい内容を忘れるのですが
読むうちに、文章を追ううちにすっかり思い出す不思議な本です。
四回目くらいか?も。一番最初に読んだ時より、「僕」に
好感を持てるのは、偏った思考が修正されたからかもしれません。

★★★★☆*88

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