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2008年2月10日 (日)

「ブラック・ティー」 山本文緒

ブラック・ティー (角川文庫) ブラック・ティー (角川文庫)

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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長編かと思ったのですが、短編集でした。
短編集もなかなか面白いです。微妙なところで括られるのは、
ちょっと江國香織に似ているかもしれません。
私はバリエーションがある分、山本さんの方が好きですが…。

「ブラック・ティー」
私は毎日山手線に乗る。他の人と違うのは、
山手線が一周するまでの間に電車から降りないことだ。
大抵の人間は目的があり、その円のどこかで降りてゆく。
けれど私はそのまま二周乗り続け、他人が忘れていったバッグを盗る。
いわゆる泥棒というやつだ。普通のOLをしていたこともあったが、
いつしか恋愛の微妙な駆け引きに嫌気が差すと、戻る事が出来なくなった。
今日私の頭上の網棚には、高価な薔薇「ブラック・ティー」が載っている。
勿論私の物ではない。私はかつて自分も貰ったその薔薇を手に取った。

とても絶妙な位置で切ってくれる短編集である。
個人的にはやはり表題作「ブラック・ティー」が一番良かった。
その他の作品であっても、実は主人公はちょっと猟奇的だ。
泥棒であったり、ストーカーまがいであったり、猫殺し犯であったり…
しかしこれを読むと、決して彼らを怒る事が出来ない。
そんな感情になってしまう現象が、手に取るように分かり、
そう言えば自分にもそんな事があった気がする、と思えてくるのである。
黙々と山手線に乗り、狩を続ける彼女は、
いつしかぐるぐる回る円の上で、感情が麻痺していた。
そして、思いがけなく自分の手に回ってきたその薔薇は、
いつしかの華やかだった時の自分を思い起こさせ、
今までの自分を悲しむような胸に刺さる思いがやってくる。
やけになっていたとは違うような、諦める前の頑張っていた自分が、
少し輝いて見えるような、落ちた自分を後悔するような、
不思議な気持ちになるのである。
心に元気があるときに読むと、尚良さそうな本でした。笑

★★★★☆*88

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